皇女サリ

冬野ハナヤ

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第14話 大陸統一大戦Ⅰ

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「とうとう明日だな」
我が国の軍が各国に宣戦布告をし、開戦前夜を迎えていた。
俺たちはすぐ隣の国境で野営していた。目の前で焚火がパチパチと音を立てている。
「いまだに、この戦争の理由がよくわからない」
サリはそう俺に言った。
「隣の国との交流関係は問題なくむしろ良好だったと聞く」
サリの瞳には焚火の光がチラチラと宿っていた。
「このまま良好な関係が続くようにと、、20年前、隣の国の皇女が我が王家に嫁いできたんだろう?」
俺は、サリから焚火に目を移す。
「そして、その皇女は、我が国の皇后陛下様だ」
焚火に向かって枝を放る。
「俺たちのしようとしていることは正しいのか?」
サリは小さい体を膝を抱え、より小さく丸めた。
「正しいか正しくないかなんて俺たちの考えることじゃないだろ」
俺は素知らぬ顔で、淡々という。
「・・・そうだな、関係ない民間人に剣先が向く前に」
「俺たちの手で」
「「この戦いを終わらせよう」」
翌日の開幕戦から、破竹の連勝だった。俺たちだけじゃなく、同期の騎士が戦場を駆け回るたびに四方から勝利の雄叫びが上がった。
戦果を挙げるたびに、俺たちの世代は一目置かれる存在になった。
その中でも、サリの強さは異常だった。
「おい、あれが?」「何かの間違いだろ」「あんなチビが?」
そういわれるたびにサリはその強さの頭角を現していった。
2年が過ぎたある日、とうとう俺たちは最後の一国、ルイネット小国を攻めた。小国にもかかわらず謎が多いこの国は、攻め入った部隊が雲隠れする事態になっていた。
動ける部隊も少なく、俺の部隊とサリの部隊、同期の1人の部隊、合わせて1050人ほどで攻め入ることとなった。
「・・・なんか変だ」
急に隣にいたサリが神妙な面持ちで呟く。
「なにがだ?」
サリは立ち止まりあたりを見回す。隊員もサリを真似て辺りを警戒しだす。
遠くを隅々まで眺めた後サリは確信を得られていない風で言った。
「さっきから同じ場所を回っていないか」
「は?」
部隊の全員がサリに顔を向ける。
サリは自らの後頭部を掌でさすりながら、「んー・・・」と呟いた。すると、部隊の後方にいた歩兵が「あの・・・」と手を挙げる。
「自分も気になって木の幹に少し傷をつけながら歩いていたんですが・・・」
と、後方にある木の幹を指さしたが、サリには低くて見えない。皆の表情が一瞬で変わった。
「え?なn」
次の瞬間、木の幹の傷が光り、大きな爆発とともに閃光のように弾けた。
その時、サリは、吹き飛ぶ仲間の隙間から、後方部隊の騎士の口の端が上がったように見えた。

「ルイネット小国は、不滅だ」
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