皇女サリ

冬野ハナヤ

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第11話 軍事訓練Ⅱ

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「はあ・・・見惚れるとはこのことなんでしょうか」
エリザベスはうっとりした目で私を見ている。
「エリザベスも似合ってる」
軍事訓練の見学にあたり、私たちは王家専用の軍服にそでを通していた。
それに似合うように髪型もセットし、一足先に身支度を整え終えたエリザベスがソワソワしながら私の身支度を覗きに来たのだ。
お行儀が悪いがそれを咎めることができる人物が今は一人もいない。
「身支度が整え終えました」
国軍専属のメイドが一礼し去っていった。それと入れ替わるように、シェーンがノックをし入ってくる。
「準備は整いましたか?」
エリザベスが何度も頷いている。
その様子を見ながら私も頷いた。
「今済んだところだ」
シェーンに向き直すと、シェーンも小さく頷き、王家専用の観覧席に私たちを誘導した。
今の時間は剣技の模擬戦のようだった。
訓練に励む騎士たちの手には真剣ではなく、木刀が握られている。
大戦を終えている騎士たち。だが誰一人としてそんな気の抜けた稽古をしている者はいなかった。木刀でも、その剣先を向けるのが仲間でも容赦なく本気で挑んでいるのが分かった。
さっきまで、落ち着きがなかったエリザベスもその異様なほどの熱意に真剣にその様子を見つめていた。
「皇女様方が到着されたことを伝えて参ります」
そういったシェーンの外套を掴みとめる。
「挨拶は訓練が終わってからでいい」
騎士たちの今の集中力を止めたくない。
訓練から目を離さない私たちを見て、シェーンは一歩後退しその様子を見守っていた。
「シェーン」
「はい」
「この国が短期間で大陸統一を成しえた事実を今やっと納得できた気がする」
私は振り返り、シェーンを見る。
「ありがとう、騎士様」
シェーンはグッと口を強く硬く閉じた。私が訓練に目を戻すと、大きく深呼吸する音が聞こえる。
「青の騎士は、私の同期でした」
エリザベスは「え?」と、振り返りシェーンを見る。私は目を伏せる。

遠い目をしたシェーンはそして、語り出した。
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