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お茶会にも夜会にも出たことはないルシファーではあったが、貴族の中では有名であった。
『貴族なのに魔力がない令嬢』
『リディア様と正反対な約立たず』
『外に出ることも叶わない醜い令嬢』
噂は多種多様だが、その全てがセシリアを貶めるような内容で、外に出ないセシリアにも聞こえるほど大きく、セシリアに刻み込むものであった。
セシリアは限界だった。
心も、体も限界だった。何かを言われる度にぎゅっと痛くなる心臓に、四肢を動かす度に身を引き裂かれる程の痛みに、セシリアが無理矢理押さえつけていた体が耐えることはもう不可能だった。
ある朝、セシリアは黒バラのような赤黒い血を吐いた。突然の事で何もわからなかったセシリアは呼吸困難に陥った。
セシリアの食事を持ってきたメイドに血を見られて家族を呼ばれた。家族が部屋に来たのは初めてだった。それなのに、初めて家族が来てくれたことが嬉しく思ってしまった。
家に来た医者には「何を今までなされていたのですか?1度でも医者にかかりましたか?」と、死にそうな顔で言われた。
魔力無しの自分が医者などにかかれるはずがない。外に1人で出られるはずがない。今まで溜め込んでいた痛みや心の叫びが嗚咽のような涙として出た。家族や使用人の前で久しぶりに、声を出して泣いた。
自分の体がどれほど酷いか、周りの人間に知られることとなった。それと同時に、侯爵にセシリアは価値がないと再確認をさせた日だった。
18の誕生日、侯爵の書斎に呼ばれ、「アルフォンス公爵家に嫁げ」と言われた。
アルフォンス公爵家はこの王国で3大公爵家とも呼ばれる家の1つである。特に、アルフォンス公爵家は魔法を使い、研究し、戦う魔術師の家柄であった。
セシリアが嫁げと言われた現当主であるブルーノ・アルフォンスも例に劣らず王国魔術師団の団長を務めている。2人の結婚はすぐに社交界に広まり、それは止まることを知らなかった。絹のように綺麗な銀の長髪で、紫苑のような紫色の瞳を持つ見目麗しいブルーノはいい意味で噂をされ、人気を博している。
それに対して濡鴉のような黒髪に濁ったような灰色の瞳のセシリアは、ブルーノに熱を上げていた令嬢たちの格好の的となった。
これがセシリアの更なる地獄の始まりだったのだろう。
『貴族なのに魔力がない令嬢』
『リディア様と正反対な約立たず』
『外に出ることも叶わない醜い令嬢』
噂は多種多様だが、その全てがセシリアを貶めるような内容で、外に出ないセシリアにも聞こえるほど大きく、セシリアに刻み込むものであった。
セシリアは限界だった。
心も、体も限界だった。何かを言われる度にぎゅっと痛くなる心臓に、四肢を動かす度に身を引き裂かれる程の痛みに、セシリアが無理矢理押さえつけていた体が耐えることはもう不可能だった。
ある朝、セシリアは黒バラのような赤黒い血を吐いた。突然の事で何もわからなかったセシリアは呼吸困難に陥った。
セシリアの食事を持ってきたメイドに血を見られて家族を呼ばれた。家族が部屋に来たのは初めてだった。それなのに、初めて家族が来てくれたことが嬉しく思ってしまった。
家に来た医者には「何を今までなされていたのですか?1度でも医者にかかりましたか?」と、死にそうな顔で言われた。
魔力無しの自分が医者などにかかれるはずがない。外に1人で出られるはずがない。今まで溜め込んでいた痛みや心の叫びが嗚咽のような涙として出た。家族や使用人の前で久しぶりに、声を出して泣いた。
自分の体がどれほど酷いか、周りの人間に知られることとなった。それと同時に、侯爵にセシリアは価値がないと再確認をさせた日だった。
18の誕生日、侯爵の書斎に呼ばれ、「アルフォンス公爵家に嫁げ」と言われた。
アルフォンス公爵家はこの王国で3大公爵家とも呼ばれる家の1つである。特に、アルフォンス公爵家は魔法を使い、研究し、戦う魔術師の家柄であった。
セシリアが嫁げと言われた現当主であるブルーノ・アルフォンスも例に劣らず王国魔術師団の団長を務めている。2人の結婚はすぐに社交界に広まり、それは止まることを知らなかった。絹のように綺麗な銀の長髪で、紫苑のような紫色の瞳を持つ見目麗しいブルーノはいい意味で噂をされ、人気を博している。
それに対して濡鴉のような黒髪に濁ったような灰色の瞳のセシリアは、ブルーノに熱を上げていた令嬢たちの格好の的となった。
これがセシリアの更なる地獄の始まりだったのだろう。
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