あと少しの生命なら

sawa

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そこからどんなに痛くても辛くても隠すようになった。
誰も世話をしてくれなくても、持ってきた食事が腐っていたとしても、ストレス発散の為に暴力を振るわれようとも、何をされても何も言わず、なんの反応もすることもなく、ただ歯を食いしばり痛みに耐える日々を送っていた。


そんな生活を続けて早17年。
王都にいるルシファー侯爵からの手紙が届いた。

簡単に言えば『王都に来い。』とのことだった。
馬車に乗って1週間。
着いたルシファー邸にいたのは家令1人のみであった。
応接室に案内をされて居たのは3人。
父であるルシファー侯爵とルシファー侯爵夫人、そしていつの間にか産まれ、美少女に育っていた15歳の妹のリディア・ルシファーであった。
この妹、王族に匹敵するほどの魔力の持ち主らしい。そうメイドたちが話しているのを聞いた。

ルシファー邸にいるものはみな揃ってリディア様はこんなに素晴らしいのにセシリア様は……と、口々に何処でも言う。たとえセシリアが目の前にいても居ないかのように扱うのである。
生活はルシファー領にいた頃よりかはマシであったがそれでも侯爵令嬢のとる生活とはあまりにも言い難かった。





自分が美少女であると自覚し、それが他人にも通じると分かっているリディアは実に狡猾だった。
自ら姉の部屋に自分のものを置いて、無くなったと騒ぎ、姉の部屋から見つかったと知れば、慈愛に満ちた顔で「きっとこれは妖精さんの仕業だわ!お姉様はこんなことをする方ではないもの!」と口に出す。その度に「リディア様お優しい!」「セシリア様とは大違い」と言われるのである。

セシリアはもちろん何もとってはいない。
なぜならセシリアは部屋から全く出ないからである。ベッドから部屋のソファに移動するのにも声が出せないほどの激痛が全身に走るのだ。1階のセシリアの部屋から2階のリディアの部屋に行くまでの階段を上るなんて夢のまた夢であった。
行こうと思っても行けるはずがない状態のセシリアには不可能なのである。

そんなセシリアの状態を知らないルシファー邸の人達は盗人、泥棒、恥知らず、早くいなくなれ、生きている価値もないと罵声を浴びせ、鞭やほうきで叩いたり、殴る、蹴るなどという暴行を毎日毎日繰り返した。





セシリアの体はもう既に限界だった。
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