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4,水仙の君
4-3
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「厄介な事になってきた」
エスターが俺の自転車を漕ぎながら、そう言った。
俺は奥名瀬フリーウエイを学校に向かって走らせる自転車の後ろに座っている。水没バイクがまだオーバーホールから戻ってこないため、俺の自転車で学校に向かうことになったのだが、俺が前に乗ろうとしたのをエスターが頑なに拒否したためである。
男に自転車を漕がせて、自分が後ろに乗ることは、女のプライドが許さないそうである。
俺のマウンテンバイクはリアにサスペンションが無い、ハードテイルという種類である。おかげで容易に荷台を取り付ける事が出来たのだが、骨太の荷台を、ゴムの緩衝材を噛まして、がっちりと取り付けたため、そこそこの重さがある。その分を意識したギアの調整をしたのだが、それでも重いことには代わりが無く、エスターに漕げるか心配したのだが。その心配をよそにエスターは俺を後ろに乗せて、軽く自転車を漕いでいた。
俺はエスターの腰を掴み風になびくエスターの髪を見ていた。
夜の奥名瀬フリーウエイはオレンジ色の照明が灯されて、かなりの明るさである。
「厄介なこと?」
「ああ、イグリー殿が直々に介入してきた」
「えーーーーと・・・・」
「ペイゼルの母で、ノーラステインの女王だ、お前の祖母にあたるお方だろう」
呆れ声のエスターである。
「会ったことないし」
「ないのか?」
「多分、親父は実家と縁を切ったと言っていたが?」
「ああ、そうか、そうだな、エルタ殿の縁切りは当時世間を揺るがした程有名な話だ」
「へぇー」
「縁を切って、サンダーバーズを立ち上げた、王族の特権を全て返上してな」
「ほほー」
「気のない返事だな」
「実感ないからな」
「それはそうだな・・・」
「で?」
「例の件に関してイグリー殿が、先程私に直接話がしたいと言ってきた。流石に奴の携帯では話せる内容ではないから、トラミナの所に行く必要がある」
「なるほど・・・・なんで俺まで?」
「当事者の顔を見せろと言ってきた。イグリー殿はお前の出自が気になるようだった」
「ふーん」
「気のない返事だな」
「実感ないからな」
「そうか」
やがて校門前へと続く心臓破りの坂に俺達は着いた。エスターがそのまま坂を上り始める。ここまでが約十分、だいたい俺の通学時間と同じである。
「この自転車、軽くて良いな・・・・」
「そうか?俺、重くないか?なんなら降りてもいいが?」
「男が自分のことを重いとか言うものではない・・・」
軽いと言いながらもエスターは腰を浮かせて、ペダルを漕ぐ。当然前屈みになり思いっきりペダルを踏みしめるわけで、俺の位置から制服のスカートの中がちらちらと見えそうで見えない状態になっている。
ここで視線を下げるのは、紳士を自負する俺には出来ない芸当である。だから俺は心持ち上に視線を向けた。それでも視界の隅に写る光景は、仕方がない。見ようとして見たのではなく、見えてしまったのだ。あくまでも事故のようなものである・・・・・ってエスターさん、越中がTバック状態になっていますが・・・・・
・・・・・・・・・・・
うん、認めましょう、俺はお尻属性だ。
って、駄目じゃん、思いっきり見てるじゃん、俺ってば・・・・・
慌てて頭を振った為、自転車の重心がぶれたのを訝しみ、振り向いたエスターに俺は笑って誤魔化した。
エスターは坂道を登り切っていた。そのまま、校舎を迂回して購買部へと自転車を走らせる。
第一校舎には、灯りが煌々と点き、校庭や廊下に生徒の影が沢山見て取れた。あちこちで馬鹿騒ぎが起きている。
「上級生に取っては、十八時以降が本番というところだな」
エスターが購買部の前に自転車を繋ぎながら、たむろしている生徒に視線を向けずに呟いた。
「楽しそうだな、異様だけど」
購買部前の生徒が全員俺達に注目している。
うんこ座りでこっちを指ささないでください、それと、見えてます・・・・・・
俺達は購買部の店舗に足を踏み入れて、近くの購買部員にとら姉さんに会いに来たことを告げる。
バックヤードに報告に行った先輩が戻るまでの間に、エスターがスカートのポケットに手を入れて確認をしていた。
「今日は大丈夫だ、財布は持ってきている」
「じゃあ、プラモデル買って」
「却下だ」
「えー」
「子供かお前は」
「男の子はいつまでも子供なんです」
「それは女だろ」
「男だろ・・・」
「女だ・・・・」
俺たちは互いに、あーなるほどそうなのかと納得しあっていると、先輩が戻ってきてこちらにどうぞと案内してくれた。
バックヤードに入り、その奥に案内されると、とら姉さんが待っていた。
「既に繋がっていますが」
とら姉さんが机の上に置かれた据え置き型パソコンに似たものを指した。
「友弥はとりあえずはいい、私が呼んだ場合にリンクしてくれ」
分かりましたと答えたとら姉さんが椅子を指さしたので俺は座った。
「リンクします」
エスターは立ったまま微かに頷いた。
背筋が伸びて、軽く顎を引いたエスターはただ立ちつくしているようにしか見えなかった。
とら姉さんがコーヒーのカップを差し出してきたので俺は礼を言いながら、受け取った。
「エスターって俺達の言葉、聞こえてるの?」
「ん?何か言ったか?」
机に座り、書類整理を始めたとら姉さんが顔を上げた。
いや、なんでもと答えて、俺はコーヒーに口をつけた。ドリップしたばかりのコーヒーだ。かなり美味しい。
俺は、微動だにせず立ちつくすエスターに視線を向けた。
そのままコーヒーを飲みながら、エスターを見ていた。
バックヤードは完全防音なので、校内のざわめきは一切聞こえない。
静寂の中、エスターが立ち尽くしていた。
「何、見とれてるんだお前は」
いきなり、とら姉さんが声を掛けてきた。
「え?あ、いや、そうじゃなくって・・・・いや、そうなのか?」
俺は腕組みをして唸った。時計を見上げると既に二十分以上エスターを見ていた事になる。
「エスターって美人だよなぁ」
「まぁ、二枚目だな」
「幻覚だと思っていた最大の理由が、こんな娘、現実にはいないって思ってたからなんだよなぁ」
「ほほー、トモ坊にも春が来たか?アジスが泣くぞ?いや喜ぶのか?あいつの場合は」
「本当に驚いたよ、とら姉さんも、いきなり凄い美人が目の前に現れたら、驚かない?」
「いや、あたし達はトモ坊で慣れていたぞ?」
「え?」
「当時から、ぶっちぎりの別嬪だったからな、トモ坊は」
「は?」
「その別嬪で小さなトモ坊が、ぶかぶかな道着を着て、宜しくお願いしますって言って、真剣な顔で構えるから、流石のあたしも手が滑って、顔面にキックを入れてしまった」
今明かされる衝撃のファーストコンタクトの真実、というテロップが流れた気がした。
わっはっはと笑うとら姉さん。この人が言うことは、どこからどこまでが本気か分からないところが味噌である。
「その気持ちは分かりませんか?姫様」
とら姉さんの声に振り向くと、顔を真っ赤にしながらこちらを睨んでいるエスターがいた。
「貴様ら、人が真剣な話をしている間に何を騒いでいる、いくら向こうにはお前達が見えないと言っても、失礼だとは思わないのか」
「あ、あれ?聞こえてた?」
「当たり前だ、パルクでリンクをしているのと、なんら変わりない」
俺は頭を抱えた。うわーーー俺、さっき何を言った?
「友弥を見てみたいと言ってきたぞ、友弥にリンクをかけろ」
ま、まった、ちょっとまったという俺の言葉はすっかりと無視された。
とら姉さんが手元のキーボードのエンターキーを一発叩くと、実際の視覚に混ざり、リンクした先の天井の高い、如何にも謁見の間と言えるような部屋の光景が見えるようになった。
「そちが、あれの息子か」
高飛車な口調で、目前の荘厳な椅子に腰掛けている五十程度の女性が俺に声を掛けてきた。ペイゼルとはあまり似ていないが、態度だけはペイゼルに似たものがある。ただし、漂ってくる威厳は桁外れである。
「あ、」
「ふむ、確かに、あれに似てはおるな、しかし、そなたは既に妾とは、縁もゆかりも無い庶民である、今回の件に関しては、妾に力を貸せる事を誇りに思うがよい」
そう言いきると、興味を無くしたように手を振った。もういいぞと言う仕草である。
俺は深々とお辞儀をした。
「失礼します、それと、いつぞやは、ありがとうございました」
俺はリンク解除しようとしたが、女王がそれを手を上げて阻止した。
「・・・・・なんと言った?」
エスターは無表情でそのまま立ちつくしている。こちらを振り向きもせず、感情の無い目で女王に視線を向けていた。俺達の会話には全く興味もないという態度である。
「謝った方が勝ち。確かあの時、そう言った気がします」
「覚えている・・・と、言うのか?」
恩を与えた者のことは忘れても良い、恩を受けた者のことは覚えていろ、というのが祖父の教えである。
「俺が小学生の時、近くの池でおぼれかけた時に助けてくれたのが、まさか女王様だとは思いませんでした」
そう、俺はこの人を覚えている。
ずぶ濡れのまま、この人は俺にぽつりぽつりと話をしてきた。
意地の張り合いで家を出た息子に会いに来たけれど、やっぱり意地が邪魔をして会うことができないと悩んでいた。その時に俺が答えたのがその言葉であった。確かアミアミ姉ちゃんとテレビを見ながら、同じ様な内容のアニメかなにかの話をしていて、アミアミお姉ちゃんが言った言葉である。
謝った方が勝ちだと思うけど?と俺はこの人に言った、
「・・・・・・・・・・」
「今ならもう一つ、アドバイス出来ます。ご存じかも知れませんが、父は人を驚かせるのは好きですが、自分が驚かされると、ものすごく悔しがる質です。謝るのではなく、驚かせる方に方針変更してみるのも手だと思います」
女王の頬が緩んだ。それはとても優しい微笑みであった。
「小賢しい事を言う男だ、流石にあれの息子だけある。デクル姫よ、良い手駒を揃えたな」
「お言葉ながら、私が、ではありません。この者が我らを揃えたのです」
エスターの言葉の裏には、貴方もですという言葉も隠されているのが分かった。
女王が薄く笑った。
「さすがだね、デクル姫、うちの馬鹿にもそなたの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ、運を味方につけたかい」
そして、また女王が手を振ってきた。
俺は礼をしてリンク解除した。
「どうだった、お前の祖母は」
戻った俺にとら姉さんが聞いて来た。
「ほら、いつか俺が池に落ちた時に、助けてくれた女の人がいたって話したの覚えてる?」
「ああ、師匠が礼をしようと探したが見つからなかった・・・・・・・・って、おい」
「その時の人だった」
とら姉さんが目を見開き、額に手を当てた。そのまま椅子にどっかりと腰を下ろす。
「あの女王が子供を助ける為に、池に飛び込んだっていうのか?」
実際は、何とか持ち直し、逆に飛び込んできた女の人が溺れそうになったのを俺が助けたのだが、助けてくれようとしたその行為は尊いものである。
だから俺は恩を受けたと感じて、今まで覚えていたのだ。
「おいおい、すごいスキャンダルだぞ・・・・・・」
「スキャンダル?」
「ああ、そうだ、周りに他の人はいなかったって言ってたよな。それを考えると、地球までお忍びでやってきた上に、お前を助けに池に飛び込んだという行為そのものが大スキャンダルだ」
とら姉さんが言うには、女王の資質として、他者の命より、自分の命を最優先することが求められるという。女王に何かあった場合、国が傾く可能性があるからだ。だから、女王は例え跡継ぎが危機に陥っても、自ら窮地に飛び込むことはしないということだった。
つまり、このことがステイン星系に知られた場合、考えられるのは二つ。
一つは、事実そのものを隠蔽する。
もう一つが、女王の資質なしとして、女王の退任であるととら姉さんが言った。
「今でもばれていないから、問題ないんじゃない?」
「それは、そうだが・・・・」
「俺かとら姉さんか、エスターしか知らない事だし・・・」
「お前、あたしに他国の国家機密背負わせる気か、ってそれは、脅しか?脅しだな」
俺は小首を傾げた。
「なんで脅し?」
「お前今、ばれたら三人のうちの誰かが言ったことになるっていっただろうが」
「だから、話さなければ良いだけじゃない?」
とら姉さんは頭をかきむしった。
「だーーー、もう、お前の天然は、磨きが掛かっているな」
「ほ、誉めてないでしょ」
「当たり前だ」
そう言ってとら姉さんがカップを俺に突きだしてきた。
「コーヒー」
はいはいと答えて、教えられた倉庫内に据え付けられているシンクに向かった。
シンクは倉庫の裏口近くに設置されていた。第一保健室のシンクとほぼ同じ形のシンクである。
シンクの横には、大きめの食器棚が横に設置されている。
ガラス張りの食器棚の中には色とりどりのマグカップが置いてある。多分、購買部員の個人所有のカップなのだろう。その数は決して半端な数ではない。
コーヒーサーバーやドリッパーはシンク手前の台の乾燥棚に置かれていた。
フィルターと豆は、食器棚の中にあるととら姉さんが言っていたので、戸棚を開けてみる。
ガラスの容器の中に乾燥剤と一緒に入れられた駅前のコーヒー店である渡来屋の豆らしきパッケージを見つけたので、ガラス容器から出してみると、中身は空であった。ガラス容器の中からは、豆の香りがしていたので間違ってはいないはずだが、どうやら先ほど使い切ったようである。そのパッケージを取り出し、ゴミ箱に捨てた。
新たな豆を探して棚の奥を見ると、大小の真空パッケージが二つあった。二つとも取り出して見ると、大きい方はマンデリンと書かれており、小さい方はコピ・ルアックと書かれていた。
あ、凄い豆がある。飲んで良いのかな?
置いてあると言うことは、飲んでも良いと言うことだと判断して小さい方を開封する。
ヤカンにお湯を注ぎ、沸騰させると、三人分の豆を電動ミルに放り込んで細かくなりすぎないように挽く。三人分を俺の好みの濃さで豆を入れたら、全て無くなってしまった。五十グラム程度しか入っていないから、こんなものかと俺は、パッケージを畳んで、ゴミ箱に捨てた。
カップとサーバーにお湯を注ぎ暖めると、サーバーのお湯は捨てる。
ドリッパーにコーヒーフィルターをセットして、ミルから豆をフィルターの中に入れて、縁を軽く叩く。凄く良い香りが辺りに漂う。
サーバーの上にドリッパーをセットし、お湯がフィルターに掛からないように、三回に分けて、円を描くように注いでいく。一般的かどうかは分からないが、一回目は少量のお湯を注いだ後、少々時間を置き蒸らす。
二回目で豆の状態を見ながら、ゆっくりとお湯を注いでいく、これでだいたい七割程度のコーヒーがサーバーに抽出される分量を注ぐ。
三回目は二回目のお湯が落ちきらないうちに、残りの三割分を注いだ。
できあがったコーヒーを暖めていたカップのお湯を捨てて、水分を拭き取り、注いでいく。
俺は三人分をトレイに乗せて、とら姉さんの元に戻った。
エスターが俺の自転車を漕ぎながら、そう言った。
俺は奥名瀬フリーウエイを学校に向かって走らせる自転車の後ろに座っている。水没バイクがまだオーバーホールから戻ってこないため、俺の自転車で学校に向かうことになったのだが、俺が前に乗ろうとしたのをエスターが頑なに拒否したためである。
男に自転車を漕がせて、自分が後ろに乗ることは、女のプライドが許さないそうである。
俺のマウンテンバイクはリアにサスペンションが無い、ハードテイルという種類である。おかげで容易に荷台を取り付ける事が出来たのだが、骨太の荷台を、ゴムの緩衝材を噛まして、がっちりと取り付けたため、そこそこの重さがある。その分を意識したギアの調整をしたのだが、それでも重いことには代わりが無く、エスターに漕げるか心配したのだが。その心配をよそにエスターは俺を後ろに乗せて、軽く自転車を漕いでいた。
俺はエスターの腰を掴み風になびくエスターの髪を見ていた。
夜の奥名瀬フリーウエイはオレンジ色の照明が灯されて、かなりの明るさである。
「厄介なこと?」
「ああ、イグリー殿が直々に介入してきた」
「えーーーーと・・・・」
「ペイゼルの母で、ノーラステインの女王だ、お前の祖母にあたるお方だろう」
呆れ声のエスターである。
「会ったことないし」
「ないのか?」
「多分、親父は実家と縁を切ったと言っていたが?」
「ああ、そうか、そうだな、エルタ殿の縁切りは当時世間を揺るがした程有名な話だ」
「へぇー」
「縁を切って、サンダーバーズを立ち上げた、王族の特権を全て返上してな」
「ほほー」
「気のない返事だな」
「実感ないからな」
「それはそうだな・・・」
「で?」
「例の件に関してイグリー殿が、先程私に直接話がしたいと言ってきた。流石に奴の携帯では話せる内容ではないから、トラミナの所に行く必要がある」
「なるほど・・・・なんで俺まで?」
「当事者の顔を見せろと言ってきた。イグリー殿はお前の出自が気になるようだった」
「ふーん」
「気のない返事だな」
「実感ないからな」
「そうか」
やがて校門前へと続く心臓破りの坂に俺達は着いた。エスターがそのまま坂を上り始める。ここまでが約十分、だいたい俺の通学時間と同じである。
「この自転車、軽くて良いな・・・・」
「そうか?俺、重くないか?なんなら降りてもいいが?」
「男が自分のことを重いとか言うものではない・・・」
軽いと言いながらもエスターは腰を浮かせて、ペダルを漕ぐ。当然前屈みになり思いっきりペダルを踏みしめるわけで、俺の位置から制服のスカートの中がちらちらと見えそうで見えない状態になっている。
ここで視線を下げるのは、紳士を自負する俺には出来ない芸当である。だから俺は心持ち上に視線を向けた。それでも視界の隅に写る光景は、仕方がない。見ようとして見たのではなく、見えてしまったのだ。あくまでも事故のようなものである・・・・・ってエスターさん、越中がTバック状態になっていますが・・・・・
・・・・・・・・・・・
うん、認めましょう、俺はお尻属性だ。
って、駄目じゃん、思いっきり見てるじゃん、俺ってば・・・・・
慌てて頭を振った為、自転車の重心がぶれたのを訝しみ、振り向いたエスターに俺は笑って誤魔化した。
エスターは坂道を登り切っていた。そのまま、校舎を迂回して購買部へと自転車を走らせる。
第一校舎には、灯りが煌々と点き、校庭や廊下に生徒の影が沢山見て取れた。あちこちで馬鹿騒ぎが起きている。
「上級生に取っては、十八時以降が本番というところだな」
エスターが購買部の前に自転車を繋ぎながら、たむろしている生徒に視線を向けずに呟いた。
「楽しそうだな、異様だけど」
購買部前の生徒が全員俺達に注目している。
うんこ座りでこっちを指ささないでください、それと、見えてます・・・・・・
俺達は購買部の店舗に足を踏み入れて、近くの購買部員にとら姉さんに会いに来たことを告げる。
バックヤードに報告に行った先輩が戻るまでの間に、エスターがスカートのポケットに手を入れて確認をしていた。
「今日は大丈夫だ、財布は持ってきている」
「じゃあ、プラモデル買って」
「却下だ」
「えー」
「子供かお前は」
「男の子はいつまでも子供なんです」
「それは女だろ」
「男だろ・・・」
「女だ・・・・」
俺たちは互いに、あーなるほどそうなのかと納得しあっていると、先輩が戻ってきてこちらにどうぞと案内してくれた。
バックヤードに入り、その奥に案内されると、とら姉さんが待っていた。
「既に繋がっていますが」
とら姉さんが机の上に置かれた据え置き型パソコンに似たものを指した。
「友弥はとりあえずはいい、私が呼んだ場合にリンクしてくれ」
分かりましたと答えたとら姉さんが椅子を指さしたので俺は座った。
「リンクします」
エスターは立ったまま微かに頷いた。
背筋が伸びて、軽く顎を引いたエスターはただ立ちつくしているようにしか見えなかった。
とら姉さんがコーヒーのカップを差し出してきたので俺は礼を言いながら、受け取った。
「エスターって俺達の言葉、聞こえてるの?」
「ん?何か言ったか?」
机に座り、書類整理を始めたとら姉さんが顔を上げた。
いや、なんでもと答えて、俺はコーヒーに口をつけた。ドリップしたばかりのコーヒーだ。かなり美味しい。
俺は、微動だにせず立ちつくすエスターに視線を向けた。
そのままコーヒーを飲みながら、エスターを見ていた。
バックヤードは完全防音なので、校内のざわめきは一切聞こえない。
静寂の中、エスターが立ち尽くしていた。
「何、見とれてるんだお前は」
いきなり、とら姉さんが声を掛けてきた。
「え?あ、いや、そうじゃなくって・・・・いや、そうなのか?」
俺は腕組みをして唸った。時計を見上げると既に二十分以上エスターを見ていた事になる。
「エスターって美人だよなぁ」
「まぁ、二枚目だな」
「幻覚だと思っていた最大の理由が、こんな娘、現実にはいないって思ってたからなんだよなぁ」
「ほほー、トモ坊にも春が来たか?アジスが泣くぞ?いや喜ぶのか?あいつの場合は」
「本当に驚いたよ、とら姉さんも、いきなり凄い美人が目の前に現れたら、驚かない?」
「いや、あたし達はトモ坊で慣れていたぞ?」
「え?」
「当時から、ぶっちぎりの別嬪だったからな、トモ坊は」
「は?」
「その別嬪で小さなトモ坊が、ぶかぶかな道着を着て、宜しくお願いしますって言って、真剣な顔で構えるから、流石のあたしも手が滑って、顔面にキックを入れてしまった」
今明かされる衝撃のファーストコンタクトの真実、というテロップが流れた気がした。
わっはっはと笑うとら姉さん。この人が言うことは、どこからどこまでが本気か分からないところが味噌である。
「その気持ちは分かりませんか?姫様」
とら姉さんの声に振り向くと、顔を真っ赤にしながらこちらを睨んでいるエスターがいた。
「貴様ら、人が真剣な話をしている間に何を騒いでいる、いくら向こうにはお前達が見えないと言っても、失礼だとは思わないのか」
「あ、あれ?聞こえてた?」
「当たり前だ、パルクでリンクをしているのと、なんら変わりない」
俺は頭を抱えた。うわーーー俺、さっき何を言った?
「友弥を見てみたいと言ってきたぞ、友弥にリンクをかけろ」
ま、まった、ちょっとまったという俺の言葉はすっかりと無視された。
とら姉さんが手元のキーボードのエンターキーを一発叩くと、実際の視覚に混ざり、リンクした先の天井の高い、如何にも謁見の間と言えるような部屋の光景が見えるようになった。
「そちが、あれの息子か」
高飛車な口調で、目前の荘厳な椅子に腰掛けている五十程度の女性が俺に声を掛けてきた。ペイゼルとはあまり似ていないが、態度だけはペイゼルに似たものがある。ただし、漂ってくる威厳は桁外れである。
「あ、」
「ふむ、確かに、あれに似てはおるな、しかし、そなたは既に妾とは、縁もゆかりも無い庶民である、今回の件に関しては、妾に力を貸せる事を誇りに思うがよい」
そう言いきると、興味を無くしたように手を振った。もういいぞと言う仕草である。
俺は深々とお辞儀をした。
「失礼します、それと、いつぞやは、ありがとうございました」
俺はリンク解除しようとしたが、女王がそれを手を上げて阻止した。
「・・・・・なんと言った?」
エスターは無表情でそのまま立ちつくしている。こちらを振り向きもせず、感情の無い目で女王に視線を向けていた。俺達の会話には全く興味もないという態度である。
「謝った方が勝ち。確かあの時、そう言った気がします」
「覚えている・・・と、言うのか?」
恩を与えた者のことは忘れても良い、恩を受けた者のことは覚えていろ、というのが祖父の教えである。
「俺が小学生の時、近くの池でおぼれかけた時に助けてくれたのが、まさか女王様だとは思いませんでした」
そう、俺はこの人を覚えている。
ずぶ濡れのまま、この人は俺にぽつりぽつりと話をしてきた。
意地の張り合いで家を出た息子に会いに来たけれど、やっぱり意地が邪魔をして会うことができないと悩んでいた。その時に俺が答えたのがその言葉であった。確かアミアミ姉ちゃんとテレビを見ながら、同じ様な内容のアニメかなにかの話をしていて、アミアミお姉ちゃんが言った言葉である。
謝った方が勝ちだと思うけど?と俺はこの人に言った、
「・・・・・・・・・・」
「今ならもう一つ、アドバイス出来ます。ご存じかも知れませんが、父は人を驚かせるのは好きですが、自分が驚かされると、ものすごく悔しがる質です。謝るのではなく、驚かせる方に方針変更してみるのも手だと思います」
女王の頬が緩んだ。それはとても優しい微笑みであった。
「小賢しい事を言う男だ、流石にあれの息子だけある。デクル姫よ、良い手駒を揃えたな」
「お言葉ながら、私が、ではありません。この者が我らを揃えたのです」
エスターの言葉の裏には、貴方もですという言葉も隠されているのが分かった。
女王が薄く笑った。
「さすがだね、デクル姫、うちの馬鹿にもそなたの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいわ、運を味方につけたかい」
そして、また女王が手を振ってきた。
俺は礼をしてリンク解除した。
「どうだった、お前の祖母は」
戻った俺にとら姉さんが聞いて来た。
「ほら、いつか俺が池に落ちた時に、助けてくれた女の人がいたって話したの覚えてる?」
「ああ、師匠が礼をしようと探したが見つからなかった・・・・・・・・って、おい」
「その時の人だった」
とら姉さんが目を見開き、額に手を当てた。そのまま椅子にどっかりと腰を下ろす。
「あの女王が子供を助ける為に、池に飛び込んだっていうのか?」
実際は、何とか持ち直し、逆に飛び込んできた女の人が溺れそうになったのを俺が助けたのだが、助けてくれようとしたその行為は尊いものである。
だから俺は恩を受けたと感じて、今まで覚えていたのだ。
「おいおい、すごいスキャンダルだぞ・・・・・・」
「スキャンダル?」
「ああ、そうだ、周りに他の人はいなかったって言ってたよな。それを考えると、地球までお忍びでやってきた上に、お前を助けに池に飛び込んだという行為そのものが大スキャンダルだ」
とら姉さんが言うには、女王の資質として、他者の命より、自分の命を最優先することが求められるという。女王に何かあった場合、国が傾く可能性があるからだ。だから、女王は例え跡継ぎが危機に陥っても、自ら窮地に飛び込むことはしないということだった。
つまり、このことがステイン星系に知られた場合、考えられるのは二つ。
一つは、事実そのものを隠蔽する。
もう一つが、女王の資質なしとして、女王の退任であるととら姉さんが言った。
「今でもばれていないから、問題ないんじゃない?」
「それは、そうだが・・・・」
「俺かとら姉さんか、エスターしか知らない事だし・・・」
「お前、あたしに他国の国家機密背負わせる気か、ってそれは、脅しか?脅しだな」
俺は小首を傾げた。
「なんで脅し?」
「お前今、ばれたら三人のうちの誰かが言ったことになるっていっただろうが」
「だから、話さなければ良いだけじゃない?」
とら姉さんは頭をかきむしった。
「だーーー、もう、お前の天然は、磨きが掛かっているな」
「ほ、誉めてないでしょ」
「当たり前だ」
そう言ってとら姉さんがカップを俺に突きだしてきた。
「コーヒー」
はいはいと答えて、教えられた倉庫内に据え付けられているシンクに向かった。
シンクは倉庫の裏口近くに設置されていた。第一保健室のシンクとほぼ同じ形のシンクである。
シンクの横には、大きめの食器棚が横に設置されている。
ガラス張りの食器棚の中には色とりどりのマグカップが置いてある。多分、購買部員の個人所有のカップなのだろう。その数は決して半端な数ではない。
コーヒーサーバーやドリッパーはシンク手前の台の乾燥棚に置かれていた。
フィルターと豆は、食器棚の中にあるととら姉さんが言っていたので、戸棚を開けてみる。
ガラスの容器の中に乾燥剤と一緒に入れられた駅前のコーヒー店である渡来屋の豆らしきパッケージを見つけたので、ガラス容器から出してみると、中身は空であった。ガラス容器の中からは、豆の香りがしていたので間違ってはいないはずだが、どうやら先ほど使い切ったようである。そのパッケージを取り出し、ゴミ箱に捨てた。
新たな豆を探して棚の奥を見ると、大小の真空パッケージが二つあった。二つとも取り出して見ると、大きい方はマンデリンと書かれており、小さい方はコピ・ルアックと書かれていた。
あ、凄い豆がある。飲んで良いのかな?
置いてあると言うことは、飲んでも良いと言うことだと判断して小さい方を開封する。
ヤカンにお湯を注ぎ、沸騰させると、三人分の豆を電動ミルに放り込んで細かくなりすぎないように挽く。三人分を俺の好みの濃さで豆を入れたら、全て無くなってしまった。五十グラム程度しか入っていないから、こんなものかと俺は、パッケージを畳んで、ゴミ箱に捨てた。
カップとサーバーにお湯を注ぎ暖めると、サーバーのお湯は捨てる。
ドリッパーにコーヒーフィルターをセットして、ミルから豆をフィルターの中に入れて、縁を軽く叩く。凄く良い香りが辺りに漂う。
サーバーの上にドリッパーをセットし、お湯がフィルターに掛からないように、三回に分けて、円を描くように注いでいく。一般的かどうかは分からないが、一回目は少量のお湯を注いだ後、少々時間を置き蒸らす。
二回目で豆の状態を見ながら、ゆっくりとお湯を注いでいく、これでだいたい七割程度のコーヒーがサーバーに抽出される分量を注ぐ。
三回目は二回目のお湯が落ちきらないうちに、残りの三割分を注いだ。
できあがったコーヒーを暖めていたカップのお湯を捨てて、水分を拭き取り、注いでいく。
俺は三人分をトレイに乗せて、とら姉さんの元に戻った。
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成実ミナルるみな
SF
四鹿(よつしか)跡永賀(あとえか)には、古家(ふるや)実夏(みか)という初恋の人がいた。出会いは幼稚園時代である。家が近所なのもあり、会ってから仲良くなるのにそう時間はかからなかった。実夏の家庭環境は劣悪を極めており、それでも彼女は文句の一つもなく理不尽な両親を尊敬していたが、ある日、実夏の両親は娘には何も言わずに蒸発してしまう。取り残され、茫然自失となっている実夏をどうにかしようと、跡永賀は自分の家へ連れて行くのだった。
それからというもの、跡永賀は実夏と共同生活を送ることになり、彼女は大切な家族の一員となった。
時は流れ、跡永賀と実夏は高校生になっていた。高校生活が始まってすぐの頃、跡永賀には赤山(あかやま)あかりという彼女ができる。
あかりを実夏に紹介した跡永賀は愕然とした。実夏の対応は冷淡で、あろうことかあかりに『跡永賀と別れて』とまで言う始末。祝福はしないまでも、受け入れてくれるとばかり考えていた跡永賀は驚くしか術がなかった。
後に理由を尋ねると、実夏は幼稚園児の頃にした結婚の約束がまだ有効だと思っていたという。当時の彼女の夢である〝すてきなおよめさん〟。それが同級生に両親に捨てられたことを理由に無理だといわれ、それに泣いた彼女を慰めるべく、何の非もない彼女を救うべく、跡永賀は自分が実夏を〝すてきなおよめさん〟にすると約束したのだ。しかし家族になったのを機に、初恋の情は家族愛に染まり、取って代わった。そしていつからか、家族となった少女に恋慕することさえよからぬことと考えていた。
跡永賀がそういった事情を話しても、実夏は諦めなかった。また、あかりも実夏からなんと言われようと、跡永賀と別れようとはしなかった。
そんなとき、跡永賀のもとにあるゲームの情報が入ってきて……!?
ファイナルアンサー、Mrガリレオ?
ちみあくた
SF
1582年4月、ピサ大学の学生としてミサに参加している若きガリレオ・ガリレイは、挑戦的に議論をふっかけてくるサグレドという奇妙な学生と出会った。
魔法に似た不思議な力で、いきなりピサの聖堂から連れ出されるガリレオ。
16世紀の科学レベルをはるかに超えるサグレドの知識に圧倒されつつ、時代も場所も特定できない奇妙な空間を旅する羽目に追い込まれるのだが……
最後まで傍観してはいられなかった。
サグレドの望みは、極めて深刻なある「質問」を、後に科学の父と呼ばれるガリレオへ投げかける事にあったのだ。
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
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