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第1章 こんにちは異世界!

始めの1歩?

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「あの…どうかしましたか?」

突然のシュテル様遭遇フラグに舞い上がってしまった私は、せっかく差し出してくれていた
シュテル様の手も取らずに素敵なお声にすら反応出来ずに固まってしまっていた

固まった私の顔を、シュテル様が心配そうに覗き込む
身長189cmと長身のシュテル様に対して
身長159cmの私…身長差もあって、
シュテル様の顔が更に近付いてきた事に
気付き、慌ててオデコに当てた手を下ろし頭を下げて謝った

「あ、…も、申し訳ありません!考え事をしながら歩いており、気付きませんでした。」

いかにも慌てて居たという雰囲気を出しつつも
日本人らしく口元は微笑みつつ45度の接客お辞儀を優雅(というかアラサーの条件反射だけどね…)にすれば
シュテル様は安心した様に微笑んで下さった!

め、めちゃくちゃかっこいい!
本命は生で見たらイメージ違ったりするかも
とか妄想していた私は(内心)ひとり盛り上がり状態だ

最近のゲームは人気があれば舞台化される事があるが、
日本人が髪の毛や目の色を変えただけでは出せない本物独特のオーラ?がそこにはあった!
しかも声は、私の大好きな声優さんの
爽やかなボイスだから、もう堪らない!!と、(内心)興奮気味の私を余所に、
後ろから追いかけてきてくれたエスターさんがシュテル様に気付き頭を下げつつも、
すかさず私の手を掴んでいた

「シュテル様、ご機嫌よう…この子を足止めしてくれて助かりました。」

「こんにちは、エスター。おや、何かありましたか?」

シュテル様は現状を理解していない為、
頭にクエスチョンマークを浮かべたまま首を傾げて訪ねていた
くそぅ、流石に本物は何やってもかっこいい!!私はエスターさんに手を掴まれたまま、
シュテル様の声を堪能していたがエスターさんの声で現実に戻され慌てる

「えぇ、シュテル様。この子はどうやら3人目の神子候補のようですの。」

あーーー!!エスターさん言っちゃったよ~…
どうしよう…
出来れば最初の出会いは神子候補ではなく、ただのユウとして会いたかったのに…
「…3人目の神子候補が?」

シュテル様は驚きながら私を見つめる

私は気まずい表情でエスターさんとシュテル様を交互に見つめ、意を決した様に胸の前で拳を握る

よし!女は度胸!!

気まずい表情を崩さずにシュテル様の方を向き目を見つめる

「あの…どうやら、そのようです。申し遅れました、ユウと申します。私は先程、地球という惑星からこちらに参りました。」

改めて自己紹介をすればエスターさんが不思議そうに首を傾げる

「ちきゅう…?この世界にはちきゅうという惑星は無いわ…」

デスヨネ…知ってます…
だって此処は私が知ってる乙女ゲームの世界なんだものっ!
エスターさんが知らないとなると、やはり帰れる方法もこれで限りなくゼロになった訳で、私は少し落ち込みながら頷く

「はい。多分…いえ、恐らくこの世界には私の居た地球という惑星はありません。」

私がキッパリと言い切ると2人共驚いたように目を見開く

「では、貴方は…この世界では無い所から来られたと?」

シュテル様は驚きが隠せないという表情で私を見つめる

「はい。私はつい先程まで、地球という惑星の日本という国で普通に働いておりました。電話が鳴ったので出ようとしたら、突然この世界の銅像前のベンチに居たんです」

自分にあった出来事を素直に話すと、エスターさんが私の肩に手を置いて気遣ってくれる

「やっぱりそうだったのね…その見慣れない服装はこの世界では見たこと無いもの。お仕事用の制服かしら?」

お洒落好きなエスターさんはやはり服に興味があるようだ…
私が着ている制服ってよくあるOLさんの事務服だからね…地味なのに動きやすそうな服はこの世界ではさぞ珍しいだろう

「はい、これは事務仕事用の制服です。私の国には仕事によって決められた服装をする事によって、清潔感と統一感(だったかな?)を得られるんです」

エスターさんは納得した様に頷くもシュテル様の様子がおかしい
さっきから全く動かず私を見ている

「…あの?何かありましたか?」

私はシュテル様の視線に耐えられずに問いかける
するとシュテル様は少し難しい顔で私の両肩に手を置く

「えっ!?…あ、あぁぁぁの何か!?」

好み(大本命)の顔と声が近い状況に私は焦る

「……く………したね…」

え?予想外の接近に焦ってしまい聞き取れず、思わず聞き返してしまう

すると更に麗しい顔を近付けてくるシュテル様

「その歳で、よく……頑張って働いていたのですね…」
「へ?」
私は意味が判らず、エスターさんに助けを求めるが、エスターさんもうんうんと頷いているではないか

「ユウ、貴方まだ若いのにその歳で労働していたなんて…元の世界では苦労していたのね?」

ん?何かがおかしいぞ……
そう感じた私は日本人は外国に行くと若く見られるという説を思いだし、慌てて訂正した

「あの?私の国の人間は若くみられがちですが…私、これでも3●才ですよ?」

うぅ、正直な年齢を口に出すと結構ダメージが…
思わず胃を押さえる私にシュテル様は今にも泣きそうな顔で首を振る

「もう偽りの年齢等言う事は無いのです…
この世界には貴方の年齢で辛い労働を強いる事はありません…どうか安心して下さい。」

ニッコリと微笑まれ、エスターさんも深く頷く姿を見た私は戸惑った…
あれ?何か話が食い違ってる?首を傾げつつ、ハッとした

この世界は乙女ゲームの世界…
そして私は3人目の神子候補…ゲームの2人の神子はすべて10代…という事は!?

「あ、あの!ちょっとすみません!」

私はシュテル様の(ずっと置かれていた)手を肩からはずして近くの噴水を覗き込んで驚いた

え!?
若返ってる!!!

しかも、恐らく三割増しで綺麗?になってる!

つまり現在の私は、冬のゲレンデ効果的な?マジックで、
恐らく主人公達と同じ17才辺りの10代のプルプルの肌とサラサラの髪を手に入れていた!

チャララッチャチャッチャチャーン!
ユウはレベルアップした!

じゃなくて、若返ってるー!!!

感動と興奮を抑えきれずに噴水に映った自分を眺めていると水面に影が入り、
シュテル様が再び近付いて来たのに気付く



そこで私は…


A案:ここは若返り諸々を素直に受け入れるべきか?


B案:それとも正直に全て話して相談するべきか?



…悩んだ末に決めた答えは


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