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第3章 やってみよう!神子候補生活

学習とフラグは必須ですか?その2

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それぞれが練習に励む中、私は1人悩んでいた…

「えーと…「氷刃結晶」は氷の刃で結晶のようなもの…うーん、字のままだな…
どうにもイメージが中二病なモノしか浮かばないよー…」

効果的にも『氷の刃が水晶のように煌めきを放ち邪なるものを払う』だし
必死に乙女チックなイメージを連想するも、
技の名前のせいか、思い浮かぶのはコテコテなRPG系ゲームのダサい感じ
しかもちょっと男性っぽいイメージしか思い浮かばない為、
本を読む振りをしながらイメージに悩む…

そんな私を見かねたのか、イメージに悩む私の頭にシオンが話しかけてくる

≪ねー…悩まないでそのままやってみれば?「発現」するモノなんて
皆、同じじゃないんだし、多少ダサくても成功したもん勝ちだよ?≫

≪いやいや、シオン…確かにイメージは出来たけれど、
実際やってみて、私だけ中二病なダサい形で出てきて、
他の2人が乙女系のキラキラだったら、ちょっと…って思うでしょ?≫

≪まぁ、確かに…明らかに神子候補の2人は、さっきのから見ても、
乙女系というか…いかにもな魔法陣だったしね…≫

≪でしょ?でも私はそこまで綺麗な陣は思い付かないし…あ!≫

≪え?何々?何か思い付いた?≫

≪うん、この本にもある「氷刃結晶」の陣ってどことなくだけど
シオンが言ってるみたいに確かに、私の世界にあるアニメや漫画の世界の陣に
似てるの…この陣はセー●―ムーンみたいに乙女っぽいし、よくよく考えれば、
セーラー●ーンに出てくる有名な水晶、「幻の銀●晶」的なモノを作れば
陣も「形成」もイケると思うの!≫

≪あぁ、確かにセー●ームーンに出てくる水晶っぽい花みたいなのはあったね?
確かに、アレを作るのは良いアイデアかも。アレなら色々とアレンジしても
乙女系だし…ユウは基礎のイメージが出来ている分、
上手く行けば「形成」して「固定」まで出来ちゃうかもよ?≫

そんな悩むフリをして考え込む私を尻目にヴェルが綺麗な陣の展開をしていた
おぉ、ヴェルのドヤ顔…
メアリーを見ると彼女の陣も先程よりハッキリとした形が浮かんできていた…

「…ヴェルリーンは「固定」が長くなったな?そろそろ次に進むか…
メアリーはその陣を「形成」出来たなら、次の陣の火属性に進んでいいぞ…
ユウ、そろそろイメージが固まってきただろう?陣の「形成」を始めてみるといい…」


的確なアドバイスをしてくれるリッキー様にヴェルもメリーも嬉しそうだ…


「よし…私もそろそろやりますか!
我、天に選ばれし者なり。我が力をもって創造をなさん…「氷刃結晶」!」

詠唱をしながら、恐る恐る手を下に翳し目を閉じる
頭の中で綺麗な銀色の水晶の花をイメージする
陣のイメージも本に書いてあるような下弦の月をイメージした

「「まぁ…」」
メリーとヴェルが同時に感嘆の声を上げる

ゆっくりと目を開ける
すると、アニメやマンガでみたようなイメージそのままの
水晶で造られた花が上についた杖?のような物を握っていた
そうか…魔法少女を連想したせいか、水晶の他にもスティックが付属されたのか…
足元にも本に載っていたような綺麗な「氷刃結晶」の陣がハッキリと浮かんでいる

「ほう、ユウの「魔法力」だと「形成」は出来ても「固定」は難しいものだが、
しっかりと「固定」がなされているとは…
お前の「魔法力」は潜在的に凄い可能性を秘めているな?」

魔法力:6⇒8 にUP! というステータス画面と共に
脳内にレベルUPの音が響く

どうやら、リッキー様のお言葉でレベルが上がったようだ


「あはは…ありがとうございます(ちょっとやりすぎた…)」

苦笑いで杖を持ったまま軽く頭を下げると
シオンから再びテレパシーが飛んできた

≪ちょっと、ユウ…ヴェルリーンのライバル度、
今ので結構上がっちゃってるけど大丈夫なのー?しかも…≫

「ユウ…お前のその水晶…少し見せて貰っても良いか?」

シオンが しかも…の続きを言いかけたその時、リッキー様がカットイン…
しかも気付けば、リッキー様のASOが光っている…
ヤバイ!と思った瞬間、杖を持っていた手を支えられ、
リッキー様が水晶を覗き込む…サラサラの髪が私の手に流れて触れる

ハッと気付いた時にはもう遅かった…
私は「いかに乙女な陣が出せるか」を悩むあまり、すっかり忘れていたが、
リッキー様の唯一の趣味は鉱石集めだったのだ…

仲良くなると、リッキー様の鉱石部屋に入れて貰えたり
お気に入りの鉱石を使ってアクセサリーをプレゼントしてくれたりする

そんな彼の前に、見たこともない花の形の水晶なんかを出したばっかりに、
ASOがドンドンUPしていくのを実感している

第一印象が良かっただけに、水晶に夢中で無意識とはいえ
触られている手と頬が熱く感じる

「っ、あ、あの!」

我慢できなくなった私は思わずグッとリッキー様へと
杖を押しつけるような形で渡し、手を離す

私の異変に気付いた彼は自分がしていた行為に気付き
パッと頬を染める

「す、すまない…その、俺は鉱石に目がなくて…」

言い訳の間もASOが濃い色を発しているのを見て
私はヤバイと冷や汗を流していた
確実に好感度がアップして行くのが分かる…

「あの…驚いただけなので、大丈夫です…」

誤魔化すように杖を受け取ると陣を解除させた
陣を消すと同時に杖も消えたので、陣の中限定なのかと思ったが、
近くに居たヴェルは陣が消えても氷の花を手に持っていた為、
術者の気持ち次第ということか…

「ユウ…初めてなのに凄いわ!」 と、
メアリーはニコニコしながら私を見つめる

「ま、初めてにしては良く出来た方じゃない?私にはまだ叶わないけれど」

氷の花を手に持ったまま不敵に微笑むが目があまり笑っていない


≪ヴェルリーンのライバル度があがりました≫

あー…やっぱりね
でもライバル度は上げたくないんだよなー…

≪あーらら、ユウ、やっちゃたね?≫

シオンが楽しそうにテレパシーを飛ばしてくる

≪ちょっと!笑い事じゃないわよ!
これ、意外と切実な問題なんだけど…≫

リッキー様の終了の挨拶が終わると、ヴェルやメリーは足早に帰っていく
私はシオンに近づくとため息交じりに練習前に渡していた
カーディガンを受け取る

「ユウ様、お疲れ様でございました」

シオンの顔は崩さずに、丁寧なお辞儀をくれた

「ありがとう。
さ、次の用意もあるし帰りましょう、シオン…」

預けていたカーディガンを羽織りながら
扉に足を向けるとリッキー様に呼び止められた

「ユウ…少し待ってくれないか?」

ギクリと背中を跳ねさせると営業スマイルで振り向く

「何かありましたか?」

明らかに好感度がアップしたリッキー様が少し照れたように近づく
これはとてもマズイパターンだ…シオンに何とかしてもらおうとするも
その暇を与えない程、矢継ぎ早にリッキー様が話しかけてくる

「先程の銀の水晶だが、実に見事な花の形をしていた…
もし可能ならで構わないんだが…「固定」が持続するようになったら
俺にあの水晶をくれないか?」

鉱石に目が無いだけあって、彼の語りは饒舌になる
落ち着いた雰囲気のあった彼だが、鉱石について語る姿は
目をキラキラとさせて夢を語る幼い少年のようだ…



(彼1人で)話が盛り上がり、ついには


「…そうだ、時間があれば俺の部屋に来るといい…
この世界で採れた鉱石をみせてやろう」 と、
部屋へのお誘いに発展してしまった

≪リッキーとの親密度があがりました 第一段階クリアです≫

ポーンと鳴った電子音に私は自分がリッキー様との
第一段階目のフラグを発生させてしまった事を自覚するのである…



しまったぁーー!


さっき言ってた、
リッキー様の私室である鉱石部屋スチルが発生する、
第一段階にもう行っちゃったー!


シオンが憐れむような目で私を見ているのが、
背後でも分かる…

「あ、ありがとうございます…機会があったら是非伺いますね?
今日はありがとうございました」

なるべく当たり障りの無い言葉を選んで返し
リッキー様へ頭を下げると追撃(の鉱石話)を恐れて
足早に部屋を出る

部屋を出ると溜息が零れる

「ふぅー……あーやっちゃったよー!」

私のとった行動を一部始終見ていたシオンが苦笑いをしながら
吐いた溜息を掴む仕草をする

「こらこら、溜息吐くと幸せが逃げちゃうよ?
……はい、ユウが逃がした幸せ★」
そう言いながら、溜息を掴んだ手を開く
私の吐いた溜息を花に変えて渡してくれた
何処ぞの狩人物語に出てくる変態ピエロかよ!と
ツッコミたくなるくらい、
語尾に星やらハートやらが付いていそうな余裕の口調に
少し腹が立つ…

貰った花は私の十字架と同じ紫の色をした薔薇だった

元の世界では見た事の無いような綺麗な紫色をした薔薇に
思わず感嘆の声が漏れる

「わぁ…凄い…シオンってやっぱり神様だったんだね?」

嬉しそうな声を漏らす私に、シオンはジト目で見てくる

「ちょっと!せっかく素敵な“神”による
“神業”なのに!!その言い方は酷くない!?」

私が感嘆の声を漏らしたものの、
彼の想像よりもはしゃがなかった事が不服のようだ

「いや、嬉しいよ?嬉しいんだけど、
そのお笑い的なノリはやめて…私、本命よりも先に、
第一段階クリアしちゃった人出しちゃったんだから…」

複雑な乙女心を理解しろ!という方が無理かもしれないが、
“神”なのだから、少しは察して欲しい…と思いながら
自室へと向かう

「んーでも、ユウとリッキー様はそんなに相性も悪い方じゃないし、
別にそんなに気を落とす事はないんじゃない?
それに、ときめいてたし?」

ニヤニヤしながら私の腕を指でつついてきたので、
素早く手を払い落す
“神”にも避けられないスピードなのか
彼がワザと避けなかったのかは分からないが
意外と簡単に払い落せた

「ウザい!てか、それはシオンのキャラじゃない!」

少しイライラした口調で彼に言うものの
全然気にしてはいないらしく

「ヒドーイ!俺、結構頑張ってんのにー!」

軽薄な少年のようにブーブーという彼に
曲がり角を曲がろうとしながら
もう一度言おうとすると急に彼が真面目な顔を作り
一歩後ろに下がって歩き出した

「ちょっとシオン、聞いてブッ…」

曲がり角にはシュテル様がいらっしゃって、
見事に彼にぶつかってしまった

てか、昨日から ぶつかり過ぎじゃない!?

「っ、すみません!」

驚きながらも慌てて頭を下げようとすると両肩を掴まれた

あれ?デジャビュ?
確か昨日もこんな事してたよね?

「おっ、と…こんにちは、ユウ。
こんな所で会うとは偶然ですね?
今日もお元気そうでなによりです」

そんな王子様は微笑みを湛え、
まるでどっかのシャンプーのCMのように
淡い銀色の髪をなびかせ
ふわりとASOが光るオプションを付けたまま
シュテル様が私を見つめていたのであった











続く
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