十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇

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第六章 突然の別れ

百十九話

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 新郎控え室。


「馬子にも衣装、と言ったところだな。なかなか見られるじゃないか、麗音」


 俺は父親の前でタキシード姿を披露させられていた。


「さて、入場まであと10分といったところか……あの兎山とかいう奴は間に合うかな?」


 クックック、と父親は気味悪く笑った。


「……来るよ、絶対に、しゅん兄ちゃんはすごいから」

「強がりは辞めるんだな麗音、最後まで私の思い通りにならない息子……まあ、結婚に応じただけでも許してやろう、これからは一生、私の生ける駒だからな」


 カチャ、と父親は懐中時計を開いた。

「あと7分……あと7分で、全てが私の思い通りになる……桐子、私の人生を狂わせやがって……!麗音は私のもの、私のものになるのだ……!」

「……母さんを」


 俺は拳に力を込めた。


「……何だ、その目は」

「母さんを、悪く、言うなっ……」


 俺は拳を振り上げたが、そのまま振り下ろす事はなかった。


「ほう、実の父親、社長である私に暴力を振るおうというのかね。傷害罪で逮捕だ、面白い、さあ殴ってみるがいいさ」

「……!」


 俺は力なく拳を下ろした。

 駄目だ。

 俺はこいつの手のひらの上で、踊らされてるんだ……


「さあ、時間だ。式場に向かうぞ」


 父親は、虎居一重は、冷酷にそう告げた。
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