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第五章 アイドルの企み

百二話

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「……月が、綺麗ですね」

「あら、嬉しいわ。それって『愛してる』って意味でしょう?」

「いえ、そのままの意味ですよ」


 俺は窓ガラスを指さした。

 桃澤は近寄り、やがて絶叫した。


「……おっ、お前、私を騙したなあああアーッ!!?」


-
 バキッという音がして何も聞こえなくなった後、俺は麗音にもらったメモを開いた。


『着替えて、渋谷のスクランブル交差点に行って』


 これだけしか書かれていなかった。

(麗音……どういうことなんだ?)

 訳が分からないまま、俺は着替えてこっそりホテルを出た。

 渋谷までは山手線で向かわなくてはならない。

(無事でいてくれ、麗音……!)

 電車に乗りながら、俺は一人祈った。

-
 渋谷のスクランブル交差点前。

 ざわざわと人のどよめきがいつもより大きい気がする。


「なにこれドッキリ?」

「何かの広告?」


 人々がそう呟くのが聞こえる。


「ていうかあれってさ、くるみ……」


 その時だった。


『……おっ、お前、私を騙したなあああアーッ!!?』


 声のしたほうを振り向くとそこには。


 ホテルのスイートルームで絶叫する桃澤がスクリーンに映っていた。


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