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第五章 アイドルの企み

九十四話

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「……」


 ガチャ、という扉の音が聞こえる。

 麗音が部屋の中に入ったのだろう。


「……桃澤、久留美さんですね」

「久しぶりですぅ、あのライブ会場依頼ですねぇ有栖川さん、お待ちしてましたぁ」


 桃澤の厭に耳に残るぶりっ子な声が遠くに聞こえる。


「私に何か御用でしょうか。このようなホテルを貸し切るのも、金銭的負担が大きいでしょう」

「大丈夫ですよぉ、お金は全部パパが払ってくれるからぁ」


 パパ活までしてたのかこの女……

 俺はぐっと拳を握り締める。


「立ち話もなんですから座ってくださぁい、私の隣にしますぅ?あ、ルームサービスも呼びますかぁ?」

「結構です。では私はこちらに」


 椅子が軋む音が聞こえた。


「では早速ですが本題に」

「その前に一ついいですかぁ?」


 コツコツという音が近づいてくる。

 その場にはいないはずなのに、俺の心臓は鼓動を早めた。


「盗聴なんて小賢しい真似すんじゃねえよ」


 ドスの効いた声と共に、バキッと何かが割れる音がして、何も聞こえなくなった。


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