十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

第五章 アイドルの企み

九十一話

　麗音は俺を抱きしめ、優しく俺を撫でる。

　そして耳元で柔らかい声で告げた。


「分かった、じゃあしゅん兄ちゃんにも伝えるよ」


　麗音は一度立ち上がり、自室からノートを持ち出してきた。


「まず、俺は明日の夜、桃澤久留美に逢う」

「……！」

「場所はここ」


　そう言うと麗音はノートを指差した。

　そこに書いてあったのは、都内でも有名なホテルのスイートルームだった。


「麗音……！」

「大丈夫、話をしに行くだけだから」


　なだめるように麗音が俺の額にキスをする。


「俺の目的は、桃澤久留美がしゅん兄ちゃんから熊井を奪ったことに関する証拠を引き出すこと。それを小型の録音機で録音して、週刊誌にリークする」

「それってまさか……」

「告発だよ」


　俺は雄介の時の報道を思い出した。


「麗音、まさか雄介も……」


　麗音はにっこりと笑った。

　俺は自分の中から噴き上がる高揚感を抑えられなかった。


「やっぱり！あいつはああいう運命がお似合いなんだ！」

「しゅん兄ちゃん、声、声大きい！」

「ああ、すまねえ！」

「この部屋には盗聴器が仕掛けられてる可能性がある」


　麗音が耳元でそう告げた。