上 下
56 / 95
第四章 最悪の再会と衝撃の宣言

五十六話

しおりを挟む
 吐きそうだった。

 桃澤が、憎いあの女が、平然と生きている事がたまらなく悔しかった。

 見たっていい事なんて無いはずなのに、俺の目はテレビに釘付けだった。


「いや~くるみん!びっくりしましたで!まさか恋人がいるとは!昨日の今日でこんなこと聞いて堪忍やで!」

「いえいえ、大丈夫です!何でも聞いちゃってくださぁい!」

「ええのん!?じゃあまず、どこで知り合うたん?」

「えっとぉ、私達のライブの後がカレのライブで!たまたま残って聞いてたらもう一目惚れしちゃって!」

「はあ~一目惚れかあ!じゃあ告白はくるみんから?」

「そうなんですよ~!カレもすぐOKしてくれて!」

 
 心臓が痛い。

 目の前がぼやける。

 何とかトレイを手にして席に着こうとしたとき、信じられない言葉が飛び込んできた。


「実はぁ、付き合ってもう一年なんですよ~」

「ほんまかいな!もうチューとかしたん?」

「もぉ~、そういうのは結婚してからって二人で決めてるんですよぉ~」


 嘘だ。

 俺が雄介から別れを切り出されたのが今年のバレンタイン。

 今は四月だから二ヶ月しか経ってないのに、一年って。


「まさか……」


 二股。
 
 目の前にまざまざと、その言葉が浮かんできた。

 突然、全身が沸騰したように熱くなり、俺はその場に倒れた。

 カシャーン!

 周囲のどよめきを遠くに聞きながら、俺の頭は一つの意識だけを残して暗闇に沈んでいった。

(許せない……!!)

 熊井雄介。

 桃澤久留美。

 二人共、絶対に、殺してやる。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

推しの兄を助けたら、なぜかヤンデレ執着化しました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:41,465pt お気に入り:1,334

間違いだらけのファンタジー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

【完結】【BL】完璧な同居人【ショート】

BL / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:27

この秘密を花の名前で呼んだなら

BL / 連載中 24h.ポイント:455pt お気に入り:1

海の体温、君の温度

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:14

処理中です...