上 下
50 / 95
第三章 同居開始で溺愛されてます

五十話

しおりを挟む
「しゅん兄ちゃん、言いたくなかったら言わなくていいんだけど、何か俺に隠してるでしょ」


 全身から冷や汗が吹き出す。

 腹が痛い。

 苦しい。

 このまま黙っているのも、麗音に話すのも。

 俺はどうすればいいんだ。


「……っ、ごめんね、ご飯中に聞いちゃって!ご飯は美味しく食べないとね!忘れて!」

「……ああ、悪いな」


 お互いにそう告げると、食事を再開した。



 風呂に浸かりながら、先ほどの話を振り返る。

(何か俺に隠してるでしょ)

 昔から時々、麗音はカンが鋭い時があった。

 おやつを二人で分けた時、俺がこっそりと自分の方を多くしたら「ずるい!」と怒ったり。

 俺が麗音のおもちゃをうっかり壊した時に「しゅん兄ちゃん、あのおもちゃどこ?」と聞いたり。

 今回は誤魔化せないか。

 俺は体を拭きながら、麗音にどう切り出そうか考えた。


「おかえりー!はいこれ、今日はアイスにしよ!」


 ソファでくつろぐ麗音がテーブルの上のアイスと俺を交互に見た。


「……おう、ありがとう」


 麗音の隣に座り、アイスをスプーンですくって口に運ぶ。

 ふと視線を感じたので振り向くと、麗音が俺の方を見つめていた。


「……どうした?」

「……っ、なんでもない!」


 そう返すと麗音はアイスに向き直った。


「麗音、あのな、聞きたいことがあるんだ」


 麗音はぱっと顔を上げた。


「……お前の大切な人って、誰なんだ?」



しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

推しの兄を助けたら、なぜかヤンデレ執着化しました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42,171pt お気に入り:1,339

間違いだらけのファンタジー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

【完結】【BL】完璧な同居人【ショート】

BL / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:27

この秘密を花の名前で呼んだなら

BL / 連載中 24h.ポイント:448pt お気に入り:1

海の体温、君の温度

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:14

処理中です...