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第三章 同居開始で溺愛されてます

四十七話

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 なんとか午前中の仕事を終え、昼食に向かう。

 社員が増えた分、より混雑もする。


「兎山先輩、俺まだまだ一人前じゃないんですね……」


 しょんぼりしながら唐揚げを口に持っていく麗音をなだめる。


「まあまだ入って2ヶ月だろ、そんなもんだよ、まあ俺もちょっと期待し過ぎた所あるけどな」

「大丈夫……ですかね?よし!午後も頑張ります!」


 麗音はガッツポーズをした後、勢いよく食事を続けた。

 元気だなあ、と思っていた俺の耳に、食堂で点いているテレビの音声が聞こえた。


「いやぁ~桃澤さん?初登場やね、今人気なんやろ?」

「もぉ~そんなことないですよぉ~」


 国民的司会者の帯番組。

 この食堂ではいつもこの番組をしている。

 今までは気にしていなかったが、こんな日があるだなんて。


「しゅん兄ちゃん、顔怖いよ、どうしたの?」


 麗音の声に我に返る。


「……いや、午後の仕事量多いなって考えてただけだ!」


 そう誤魔化して味噌汁をすする。

 テレビの音声は聞こえない振りをした。


「有栖川さんってかっこいいですよねー」

「そうね、いつも兎山さんに叱られてるけど」


 新年度が始まってしばらく経ったある日の午後、給湯室を通りかかると、そんな声が聞こえた。

 おそらく新入社員の女の子と、同じ部署の女性社員。

 盗み聞きをする趣味は断じて無いが、俺と麗音の名前を聞いてしまっては気になるのも仕方がない。

 俺はコーヒーを入れる振りをして給湯室に入った。

 女子達が隅に移動し、ヒソヒソ話す。


「噂で聞いたんですけど、有栖川さんって社長の息子さんなんですよね?玉の輿とかワンチャン……」

「えーどうだろ、もう婚約者とかいるんじゃない?」


 婚約者、という言葉にズキッとする。

 麗音と社長の関係はよく分かってないけど、跡取りとして入社したなら婚約者くらいいても不思議ではない。

 それなのに俺は麗音の何気ない言動にときめいたりして、馬鹿じゃないか……


「お疲れ様です、入っていいですか?」


 そんなことを考えていると、麗音が入ってきた。
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