十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇

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第三章 同居開始で溺愛されてます

四十七話

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 なんとか午前中の仕事を終え、昼食に向かう。

 社員が増えた分、より混雑もする。


「兎山先輩、俺まだまだ一人前じゃないんですね……」


 しょんぼりしながら唐揚げを口に持っていく麗音をなだめる。


「まあまだ入って2ヶ月だろ、そんなもんだよ、まあ俺もちょっと期待し過ぎた所あるけどな」

「大丈夫……ですかね?よし!午後も頑張ります!」


 麗音はガッツポーズをした後、勢いよく食事を続けた。

 元気だなあ、と思っていた俺の耳に、食堂で点いているテレビの音声が聞こえた。


「いやぁ~桃澤さん?初登場やね、今人気なんやろ?」

「もぉ~そんなことないですよぉ~」


 国民的司会者の帯番組。

 この食堂ではいつもこの番組をしている。

 今までは気にしていなかったが、こんな日があるだなんて。


「しゅん兄ちゃん、顔怖いよ、どうしたの?」


 麗音の声に我に返る。


「……いや、午後の仕事量多いなって考えてただけだ!」


 そう誤魔化して味噌汁をすする。

 テレビの音声は聞こえない振りをした。


「有栖川さんってかっこいいですよねー」

「そうね、いつも兎山さんに叱られてるけど」


 新年度が始まってしばらく経ったある日の午後、給湯室を通りかかると、そんな声が聞こえた。

 おそらく新入社員の女の子と、同じ部署の女性社員。

 盗み聞きをする趣味は断じて無いが、俺と麗音の名前を聞いてしまっては気になるのも仕方がない。

 俺はコーヒーを入れる振りをして給湯室に入った。

 女子達が隅に移動し、ヒソヒソ話す。


「噂で聞いたんですけど、有栖川さんって社長の息子さんなんですよね?玉の輿とかワンチャン……」

「えーどうだろ、もう婚約者とかいるんじゃない?」


 婚約者、という言葉にズキッとする。

 麗音と社長の関係はよく分かってないけど、跡取りとして入社したなら婚約者くらいいても不思議ではない。

 それなのに俺は麗音の何気ない言動にときめいたりして、馬鹿じゃないか……


「お疲れ様です、入っていいですか?」


 そんなことを考えていると、麗音が入ってきた。
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