38 / 124
第三章 同居開始で溺愛されてます
三十八話
しおりを挟む
「さ!カレー作ろう!」
家に帰り食材をキッチンに並べたあと、麗音は意気込んで言った。
「まずは……そうだ、米炊いてくれ、できるか?」
「分かった!それくらいできるよー」
可愛らしく怒りながら、麗音は米を測りに行った。
俺の方は、じゃがいもやニンジンの下ごしらえ、豚こま肉の下味などを進めていく。
米をセットし終わった麗音が戻って来たので、途中から手伝ってもらう。
具材を炒めながら、麗音がぽつりと言った。
「なんか、こういうの嬉しいね」
「何がだ?」
「しゅん兄ちゃんと一緒にご飯作るの、昔は見てるだけだったからさ」
そうか。
麗音の面倒を見ているときも、俺は時々母親を手伝って料理をしていた。
あの時、一人で絵本を読んでいた麗音が、今は俺と一緒に料理して、暮らしている。
胸の奥が少し温かくなるが、頭を振って誤魔化す。
「しゅん兄ちゃん、そろそろルー入れる?」
「そうだな、箱取ってくれ」
俺は二種類のルーをそれぞれ一パックずつ割り入れ、お玉でかき混ぜて溶かした。
ひと煮立ちさせたら完成だ。
「麗音、ご飯用意してくれ」
「任せて!……あ」
トーンが変わった声に、嫌な予感がする。
「お米……炊けてなかった……」
炊飯器の中には、水を吸って膨らんだ米が鎮座していた。
家に帰り食材をキッチンに並べたあと、麗音は意気込んで言った。
「まずは……そうだ、米炊いてくれ、できるか?」
「分かった!それくらいできるよー」
可愛らしく怒りながら、麗音は米を測りに行った。
俺の方は、じゃがいもやニンジンの下ごしらえ、豚こま肉の下味などを進めていく。
米をセットし終わった麗音が戻って来たので、途中から手伝ってもらう。
具材を炒めながら、麗音がぽつりと言った。
「なんか、こういうの嬉しいね」
「何がだ?」
「しゅん兄ちゃんと一緒にご飯作るの、昔は見てるだけだったからさ」
そうか。
麗音の面倒を見ているときも、俺は時々母親を手伝って料理をしていた。
あの時、一人で絵本を読んでいた麗音が、今は俺と一緒に料理して、暮らしている。
胸の奥が少し温かくなるが、頭を振って誤魔化す。
「しゅん兄ちゃん、そろそろルー入れる?」
「そうだな、箱取ってくれ」
俺は二種類のルーをそれぞれ一パックずつ割り入れ、お玉でかき混ぜて溶かした。
ひと煮立ちさせたら完成だ。
「麗音、ご飯用意してくれ」
「任せて!……あ」
トーンが変わった声に、嫌な予感がする。
「お米……炊けてなかった……」
炊飯器の中には、水を吸って膨らんだ米が鎮座していた。
49
お気に入りに追加
313
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
俺の親友のことが好きだったんじゃなかったのかよ
雨宮里玖
BL
《あらすじ》放課後、三倉は浅宮に呼び出された。浅宮は三倉の親友・有栖のことを訊ねてくる。三倉はまたこのパターンかとすぐに合点がいく。きっと浅宮も有栖のことが好きで、三倉から有栖の情報を聞き出そうとしているんだなと思い、浅宮の恋を応援すべく協力を申し出る。
浅宮は三倉に「協力して欲しい。だからデートの練習に付き合ってくれ」と言い——。
攻め:浅宮(16)
高校二年生。ビジュアル最強男。
どんな口実でもいいから三倉と一緒にいたいと思っている。
受け:三倉(16)
高校二年生。平凡。
自分じゃなくて俺の親友のことが好きなんだと勘違いしている。
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる