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第三章 同居開始で溺愛されてます

三十七話

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「俊太郎の作るカレーってさ、なんかパッとしないんだよね」


 昨年末、雄介が家に泊まりに来た時にカレーを食べて言った言葉。


「味が美味しくないとかじゃなくて……なんだろう、個性がないっていうか、どこにでもある普通のカレーっていうのかな、なんかつまんないんだよね」

「もっとこう、スパイスを炒めて作るカレーとか、そういう個性が欲しいんだよな」


 俺は料理にあまり自信がない。

 でも、雄介の為を思って今までたくさん作ったカレーをそんなふうに言われるのは初めてで、どうすればいいか分からなかった。


「そ……そっか、ごめんな、満足できなくて」

「……謝らなくていいよ、俺も言い過ぎた」


 そう言って雄介は俺を抱き締めた後、キスをした。


「……兄ちゃん、しゅん兄ちゃん!」


 はっと気がつくと、俺はカレールーの棚の前に立っていた。


「どうしたのぼーっとして、もしかして眠かった!?」

「……いや!悪い、ちょっと引っ越しの疲れがでたのかもな」


 俺は焦りを悟られないよう、レジへと向かった。

 帰り道、麗音と手を繋ぎながらも、俺の心は行きよりも陰っていた。
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