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第二章 俺の幼馴染は御曹司でポンコツで

三十話

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「しゅん兄ちゃん、これすごい!サメのぬいぐるみ!」

「麗音!家具見に来たんだろ、後でな!」


 初めてイケ◯に来たという麗音のはしゃぎようは相当だった。

 全部の階を見て回り、気に入った物は一通り手に取るという有り様。

 三十三の俺にはかなり厳しかった。

 それでも、麗音はクッションや本棚などいくつかの商品を購入した。

 ……そのまま持ち帰ろうとしていたのをなんとか宅配にしたのは我ながらファインプレーだったが。


「はー、楽しかったね!欲しいもの色々買えたし!」

「おう、そうだな、しかし麗音、ちょっとどこかで休憩……」

「あ!ごめんね、空いてるカフェとか無いかな……」


 その後、適当なカフェに入り休憩したあと、ヤマ◯デンキで家電を見た。

 まだ夕方だったので少し歩いていると、建物の一角で、チラシ配りをしている人が目に入った。


「しゅん兄ちゃん、あれ何かな」

「ああ、ここはお笑いライブの劇場だから、その呼び込みだろうよ」

「お笑い!?しゅん兄ちゃん、せっかくだから行こうよ!」

「え、いや、俺は」

「ね、お願い!」


 麗音のうるうるした瞳に負けた俺は、ライブチケットを購入した。



「面白かったねー!あの『いやそれステゴザウルスやなくてアンキロサウルスやないか!』ってところすごく良かったよ!」

「おお、そうか、俺はよく分からなかったな」


 ライブ終わり、近くのラーメン屋で食事をする。
 麗音は初めて見たお笑いライブが楽しかったらしく、矢継ぎ早に感想を話してくる。


「でも本当に今日は楽しかったね!しゅん兄ちゃんと一緒だと、俺どこでも幸せだよ!」

「ぶっ!」

 麗音の言葉に思わずむせる。

 でも、それは俺にとってもそうかもしれない。

 麗音といるときは、雄介のことを忘れられる。

(帰ったら、またあの家で一人……)



「今日はありがとう!しゅん兄ちゃんはこっちなの?」

「ああ、麗音も気をつけろよ」


 地下鉄に続く通路の前で言葉を交わす。


「じゃあまた会社でね!」


 麗音が手を振ってくるりと改札方向へ向かう。

 俺はそれを見送る、はずだった。


「……しゅん兄ちゃん?」


 気がつくと、俺は麗音の手を取っていた。
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