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第二章 俺の幼馴染は御曹司でポンコツで

二十九話

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「わあー、すごいたくさんの人!」


 麗音は俺を呼んだは良いもののどこに行けば良いのか分からない、とのことで、とりあえず渋谷に連れて行った。


「あっ!これがスクランブル交差点!?すごい!おっきい!」

「麗音、そんなにはしゃぐなって、人が見てる……」


 麗音を押さえつつ、周囲の様子を伺う。

 スクランブルスクエアのモニターには『キャッチ&ハグ』の広告が流れていて胸が痛くなった。

 人々がモニターに釘付けになり、話題にする。

 こんなの生き地獄じゃねえか……


「ねえねえ、これからどこ行く?」


 麗音が話しかけてきたので、慌てて意識をそちらに向ける。


「ん、んーそうだな、お前家具とか家電壊れたって言ってなかったか?イケ◯がヤ◯ダデンキに行こうか」

「うん!」


 そう頷くと麗音は俺の手を取った。

 心臓が高鳴るが、彼が反対方向に行こうとしたので急いで止める。


「麗音!そっちじゃない!イケ◯はこっち!」


 休日の渋谷は人が多い。

 まあ、都心ならだいたいどこでもそうか。

 麗音は幼い頃からふらふらと興味のあるものの方へ歩いていく癖があるから、手をつなぐのは合理的に正しい選択だ。

 そう心の中で結論を出すが。


(周りから変な目で見られてたら……)


 麗音はいわゆるイケメンに属する顔立ちだし、今日はベージュのトレンチコートにアイボリーのニット、白いスラックスを履いている。

 まるで異国からやってきた王子様だ。

 その点、俺は黒い着古したパーカーに色落ちしたジーンズ。

 顔だって、自分で言うのもあれだがお世辞にもかっこいいなんて柄じゃない。

 お笑いタレントのほうが似ている人を探しやすい顔立ちだ。

 そんな二人が手をつないで歩いているのだ。

 周りからしたら滑稽だろう。

 でも、俺は麗音の手を離したくなかった。

 手放すと、麗音ともう二度と会えないような気がして。


(……ライン交換したくせにな)


 そう心の中で呟くと、麗音の声がした。


「しゅん兄ちゃん、ここがイケ◯ってとこ?綺麗だね!」


 麗音は楽しみが押さえきれないという表情で笑った。

 
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