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第二章 俺の幼馴染は御曹司でポンコツで

二十五話

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「兎山~、お前昨日はよくも部長にチクリやがったなあ~?」


 黒須は怒りを堪えているといった表情で、俺を見下している。

 俺は背中に冷たいものが走るのを覚えた。

 ま、まずい、麗音を守らねえと……


「黒須先輩、昨日部長にお話したのは僕です」


 麗音がすっくと立ち上がり、黒須に向かい合った。


「お前……新人の癖に先輩に意見すんのかあ~?」

「昨日、黒須先輩が兎山先輩に押し付けた見積書は兎山先輩が一日かけても終わらないとおっしゃってました。そこで、僭越ながら僕がサポートに入ったんです」

「お前がサポート?おい兎山、お前後輩に手伝ってもらわなきゃできねえのかよ、先輩の面子丸つぶれだなあ~?」


 黒須のその言葉に涙が零れそうになったその時。


「違います。見積書を終わらせたのは、ほかでもない兎山先輩の実力です」


 麗音が氷のような声でそう言った。

 黒須も思わずたじろぐ。


「な、何だよ、お前が兎山を手伝ったんだろ?本来兎山が一人で終わらせなきゃいけない見積書だったはずだろ!」

「いいえ。本来は黒須先輩が終わらせるべき見積書です」


 麗音の正論に、黒須はぐうの音も出ない。


「何を騒いでいるんだね」

「部長……!この新人が……!」


 騒ぎを聞きつけた部長がやってきた。

 黒須が話すより先に、麗音が口を開いた。


「黒須先輩が兎山先輩を責めてるんです!」

 その声は、いつものニコニコとした時のものだった。
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