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第二章 俺の幼馴染は御曹司でポンコツで

十五話

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「れ……有栖川!」


 俺は麗音の肩を掴んだ。


「有栖川さん、どういうことですか?」


 部長がじろりと麗音を見下す。


「お昼前ですかね、兎山先輩と研修終わって戻ってきたら、丸顔の背の高い先輩が打ち合わせだからやっといてって言って先輩にこの見積書を渡したんです」


 麗音の顔を見ると、先程までの笑顔はどこにもなく、氷のような視線で部長を見上げていた。


「なるほど……他に何か言ってましたか?」

「そうですね、シラサギホールディングスと打ち合わせで直帰するかもって言ってました」


 あの一瞬の会話を覚えていたのか。


「シラサギホールディングス……?あの打ち合わせは15時にはここに戻ってこられるはずだが?」


 部長の言葉にはっとする。

 黒須、あいつもしかして……


「もしかしたら、どこかで時間を潰されてたかもしれませんね」


 麗音がそう返す。

 表情は、とても冷ややかだった。


「……そうか、分かった、ありがとうございます、有栖川さん。兎山、それは明日でいい」


 部長は苦しそうにそう言うと、自分のデスクに戻った。


「……じゃあ今日のお仕事は終わりですね!帰りましょう先輩!」


 麗音は再び笑顔に戻り、急いで自分のカバンを取ってきた。

 彼の勢いにつられて、俺も帰り支度をした。


「お先に失礼します」

「お疲れ様です!」


 同時に挨拶する。

 俺は約3ヶ月ぶりに、定時に退社することができたのであった。
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