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第一章 最悪の別れと衝撃の出会い

二話

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(しゅん兄ちゃん、いつかきっと、絶対また会おうね)


「しゅん兄ちゃん!?久しぶり!」
 

 人の輪の中から青年が駆け出てこちらにやってくる。

 俺は思わず縮こまった。


「ち、ちょっと有栖川さん!」


 部長の呼び止める声が聞こえる。

 その名を聞いて脳内に火花が走った。


「……れ、おん?麗音なのか?」

「やっぱりしゅん兄ちゃんだ!会いたかった!」


 青年は俺の手を取り固く握った。

 オフィスに緊張が走るのが背中で分かる。


「……ちょっと、有栖川さん、挨拶の途中なのですが」


 部長が咳払いをしてから言うと、青年は申し訳無さそうに会釈し、輪の中心に戻った。


「えー、では、遅刻ギリギリの兎山も来たことだし、有栖川さん、改めて自己紹介お願いできますか」

「はい、本日からこちらでお世話になります、有栖川 麗音(ありすがわ れおん)と申します、よろしくお願いいたします!」


 そういうと麗音はぺこりとお辞儀をした。
 
 周りの同僚に合わせて俺も拍手をする。


「えー、有栖川さんの教育係ですが……」


 部長が言いかけたのを遮り、麗音はビシッと手を上げた。


「はい!しゅん兄ちゃんでお願いします!!!」


 時が止まった。

 いや確実に。


「え、え゙え~!?」


 その場にいた全員が叫んだ。
 
 俺も含めて。


「いやいや有栖川さん!教育係はこちらの前川だと事前にお伝えしたじゃありませんか!」

「それは、その時はしゅん兄ちゃんがいるなんて知らなかったからですよ。しゅん兄ちゃんと一緒に仕事できないと、俺辞めますよ」


 ぞく、と異様な空気が漂った。

 子供の頃に出会った彼からは考えられない、冷徹さ。

 俺と別れた後に、何かがあったのを感じた。


「……分かりました、では有栖川さんの教育係は、兎山、お前だ」


 部長が俺を指差す。

 社内の目が一斉に俺を向く。
 
 背筋が寒くなる。


「……はい、分かりました」

「やったぁ!しゅん兄ちゃんと一緒だあ!」


凍りついた空気の中で、麗音だけが楽しそうに笑っていた。
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