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Ⅱ-ⅲ.あなたに満たされる
2−31.アルファの自省(ジルヴァント視点)
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熱い。
ふと脳裏に浮かんだ言葉にゆっくりと瞬きをしながら、頬に滴る汗を拭った。……どこもかしこも濡れそぼっていて、あまり意味のない行為だったが。
「あ、ぅ……」
眼下で、フランが甘い息をこぼした。
フランの白い頬は薄紅色に染まり、唇は俺が吸いすぎたせいか痛々しいほどに真っ赤になっている。華奢な身体の白い肌を埋め尽くすように赤い跡が散っていた。
ところどころ噛み跡らしきものもある気がする。俺はいったい何をしたのか。
フランの香りに頭をやられ、まともな思考なんて吹っ飛んでしまっていた。
なんとなく、白く張りのある肌が美味しそうだと思って、噛みついたような……?
記憶を辿ると同時に、俺に攻め立てられてひたすら翻弄されながらも、嬉しそうに嬌声を上げるフランの姿が脳裏に思い浮かんだ。
途端に熱く昂ぶる自身の熱に、心底呆れてしまう。
先ほど心行くまで番を堪能して欲望を吐き出したばかりだというのに、さすがに回復が早すぎる。まるで理性のない獣のようではないか。
「フラン?」
くったりと敷布に身を横たえるフランの頬を指先で撫でる。
フランはピクッと身体を震わせて「ぁ、ん……」と甘えるような声をこぼすも、伏せた目蓋を上げることはなかった。
その疲れ切った表情に憐れみを感じる。そうさせたのが俺だということは分かっているから、怒りをぶつける先がない。
目尻が赤くなっている。どれほど涙を流したのだろう。
そっと指先で癒やすように撫でながら、思わず眉を寄せた。
どれだけ記憶を探っても、フランから「いやだ」「やめて」と言われてはいなかった。
そのことに、ひとまず安心する。発情期明けに、愛する番から「嫌い!」と詰られて絶望する可能性は低そうだ。
だが、俺がしたことが良いことだとはとても思えない。
発情期で思考力を低下させるオメガをいたわり、つらさを感じないよう世話をするのは、アルファとして当然の行いなのだ。それができていないのは、反省すべき点である。
「――まずはしっかり休ませないとな」
呟きつつ、さすがに重い身体を動かし、水差しを手に取る。
置かれた時とまったく変わっていない量に眉を顰めつつ、コップに注いだ。
「ふ……ここにこもって、どれくらい経った?」
水を飲むと、身体中に染み渡っていくような心地がする。脱水状態に近かったようだ。
今の正確な時間が分からず、視線を彷徨かせながら、フランに手を伸ばした。
「ん、ぅ……」
フランの身体を抱き起こし、軽く揺さぶっても目覚める気配がない。疲れ切って、気絶しているような状態だ。
だが、脱水状態のまま寝かせるわけにはいかない。本来はこうなる前に世話をしてやるべきなのだが……つくづく、番の魅力に負けて熱に溺れた己が情けない。
ため息をつきながらもフランを胸に寄りかからせるように片腕で支え、再び水を口に含んだ。
そして、僅かに上向かせたフランに口付ける。噎せないよう、滑り込ませた舌を使って、少しずつ水を注ぎ込んだ。
「……良い子だ」
コップ一杯分を飲ませて、頬にキスをする。
フランが目覚める気配はない。よほど疲労しているのだろう。
元々、俺とフランは体力の差が大きいのだ。俺でさえ疲労感を覚えているのだから、それに付き合わされたフランが今どういう状態かは、考える必要もないほど明白だ。
それでも、喉の渇きが癒されたからか、フランの寝顔は先程よりも穏やかに見えた。
「さて、どうするか……」
天蓋をめくると、窓際のカーテンの隙間から細く日差しが差し込んでいるのが見えた。
俺がフランのもとに慌てて戻ってきたのは午前中のこと。それから数時間しか経っていないにしては、喉の渇き具合がひどすぎた。
「――一日、経っていると考えるべきか」
ため息混じりに言葉を吐き出す。
愛する番を世話してやれるのは俺しかいないのに、熱に浮かされて貪り食らった醜態が、いっそ憎々しい。
額を叩いて反省しながら、眠るフランの顔を見下ろした。
いつ目覚めるか分からないが、起きたらまず食事をさせなければならない。
今は発情期の症状が落ち着いているようだが、それがいつまで続くだろうか。できれば、しっかりとご飯を食べさせ、湯浴みさせる余裕があればいいのだが。
依然として甘く香って誘ってくるフェロモンから必死で意識を逸らし、ふぅ、と息を吐く。
いろいろと悩むことも反省することもあるが、それがとても幸せに感じるのは、フランを愛しているからこそなのだろう。
ふと脳裏に浮かんだ言葉にゆっくりと瞬きをしながら、頬に滴る汗を拭った。……どこもかしこも濡れそぼっていて、あまり意味のない行為だったが。
「あ、ぅ……」
眼下で、フランが甘い息をこぼした。
フランの白い頬は薄紅色に染まり、唇は俺が吸いすぎたせいか痛々しいほどに真っ赤になっている。華奢な身体の白い肌を埋め尽くすように赤い跡が散っていた。
ところどころ噛み跡らしきものもある気がする。俺はいったい何をしたのか。
フランの香りに頭をやられ、まともな思考なんて吹っ飛んでしまっていた。
なんとなく、白く張りのある肌が美味しそうだと思って、噛みついたような……?
記憶を辿ると同時に、俺に攻め立てられてひたすら翻弄されながらも、嬉しそうに嬌声を上げるフランの姿が脳裏に思い浮かんだ。
途端に熱く昂ぶる自身の熱に、心底呆れてしまう。
先ほど心行くまで番を堪能して欲望を吐き出したばかりだというのに、さすがに回復が早すぎる。まるで理性のない獣のようではないか。
「フラン?」
くったりと敷布に身を横たえるフランの頬を指先で撫でる。
フランはピクッと身体を震わせて「ぁ、ん……」と甘えるような声をこぼすも、伏せた目蓋を上げることはなかった。
その疲れ切った表情に憐れみを感じる。そうさせたのが俺だということは分かっているから、怒りをぶつける先がない。
目尻が赤くなっている。どれほど涙を流したのだろう。
そっと指先で癒やすように撫でながら、思わず眉を寄せた。
どれだけ記憶を探っても、フランから「いやだ」「やめて」と言われてはいなかった。
そのことに、ひとまず安心する。発情期明けに、愛する番から「嫌い!」と詰られて絶望する可能性は低そうだ。
だが、俺がしたことが良いことだとはとても思えない。
発情期で思考力を低下させるオメガをいたわり、つらさを感じないよう世話をするのは、アルファとして当然の行いなのだ。それができていないのは、反省すべき点である。
「――まずはしっかり休ませないとな」
呟きつつ、さすがに重い身体を動かし、水差しを手に取る。
置かれた時とまったく変わっていない量に眉を顰めつつ、コップに注いだ。
「ふ……ここにこもって、どれくらい経った?」
水を飲むと、身体中に染み渡っていくような心地がする。脱水状態に近かったようだ。
今の正確な時間が分からず、視線を彷徨かせながら、フランに手を伸ばした。
「ん、ぅ……」
フランの身体を抱き起こし、軽く揺さぶっても目覚める気配がない。疲れ切って、気絶しているような状態だ。
だが、脱水状態のまま寝かせるわけにはいかない。本来はこうなる前に世話をしてやるべきなのだが……つくづく、番の魅力に負けて熱に溺れた己が情けない。
ため息をつきながらもフランを胸に寄りかからせるように片腕で支え、再び水を口に含んだ。
そして、僅かに上向かせたフランに口付ける。噎せないよう、滑り込ませた舌を使って、少しずつ水を注ぎ込んだ。
「……良い子だ」
コップ一杯分を飲ませて、頬にキスをする。
フランが目覚める気配はない。よほど疲労しているのだろう。
元々、俺とフランは体力の差が大きいのだ。俺でさえ疲労感を覚えているのだから、それに付き合わされたフランが今どういう状態かは、考える必要もないほど明白だ。
それでも、喉の渇きが癒されたからか、フランの寝顔は先程よりも穏やかに見えた。
「さて、どうするか……」
天蓋をめくると、窓際のカーテンの隙間から細く日差しが差し込んでいるのが見えた。
俺がフランのもとに慌てて戻ってきたのは午前中のこと。それから数時間しか経っていないにしては、喉の渇き具合がひどすぎた。
「――一日、経っていると考えるべきか」
ため息混じりに言葉を吐き出す。
愛する番を世話してやれるのは俺しかいないのに、熱に浮かされて貪り食らった醜態が、いっそ憎々しい。
額を叩いて反省しながら、眠るフランの顔を見下ろした。
いつ目覚めるか分からないが、起きたらまず食事をさせなければならない。
今は発情期の症状が落ち着いているようだが、それがいつまで続くだろうか。できれば、しっかりとご飯を食べさせ、湯浴みさせる余裕があればいいのだが。
依然として甘く香って誘ってくるフェロモンから必死で意識を逸らし、ふぅ、と息を吐く。
いろいろと悩むことも反省することもあるが、それがとても幸せに感じるのは、フランを愛しているからこそなのだろう。
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