内気な僕は悪役令息に恋をする

asagi

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257.初夜⑤

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「ふ、あっ……ぁ、んっ!」

 奥を突かれる度に、押し出されるように声がこぼれ落ちていく。意味なんてないただの快感の発露が、お互いの欲をより高めていくように感じられた。

「ん、ぁ……」
「気持ちよさそうだね」

 グッと凝りを抉るように圧されて、ノアは眉を寄せながら口元を緩めた。頭の中はもう蕩けてしまっていて、思考力なんて存在しない。与えられる快感を受け止めて、サミュエルへの愛おしさが募るばかりだ。

「きも、ちぃ……あっ、ぁ、ん」
「ふ……素直で可愛いよ」

 ぼんやりとした視界に映るサミュエルの姿を見つめ、ノアは背中に回した指先に力を込める。しっとりと汗で湿り、揺すられる度に滑り落ちそうになるから、必死にしがみついていないといけない。離れてしまうのは寂しいから。

「ん、もっと……」
「もっと? 強くしてほしいのかい?」

 サミュエルが目を細める。赤く上気した顔で、口元に淫蕩な笑みを浮かべているのが、なんとも色っぽくて視覚の暴力だ。
 きゅっと胸が締め付けられるような甘い感情に、ノアは小さく微笑む。それを見たサミュエルが「ふ~ん?」と声をもらした。

「――じゃあ、遠慮なく」
「えっ……ぁあっ!」

 ガツッと最奥まで貫かれて、ノアはのけぞり、悲鳴のような声を上げた。強すぎる刺激に頭が真っ白になる。

「――あ……ん、ああっ……やぁ」
「これが、ほしかったんだよね?」

 身体全体を揺さぶれるほどに強く突かれて、トロトロに蕩けた内壁を硬いものが容赦なく擦る。限界まで広げられた後孔が、きゅうきゅうと締め付けた。内壁もサミュエルのものを歓迎するようにうねる。

 サミュエルがクッと小さく呻く声が間近で聞こえた。ノアの両脚を肩に掛けた状態で、抱きしめてくるから、正直結構苦しい。でも、それ以上に、サミュエルの体温をしっかりと感じられることが嬉しくてたまらなかった。

「んんっ……ふ、ぁ、あっ……もっと、ちか、く……っ」
「ぅ……ん……? 近く?」

 伏せられていた目がノアを捉える。翠の瞳が熱っぽい潤いで光を放っているのが美しくて、ノアは見惚れながら小さく頷いた。必死にしがみつき、唇を寄せる。

 ノアの望みを余さず受け取ったサミュエルが、グッと腰を押し付けて、唇に噛みついた。溢れる嬌声さえも飲み込んで、舌が絡み合う。
 サミュエルを受け入れて、もたらされる快感もいいけれど、こうして口づけで愛を交わすのも気持ちいい。溢れた唾液が顔を汚し、みっともないはずなのに、それさえ気にならない。

「ふぁ……ん、ん……サミュ――っ」
「ノア――」
「あ、ぁあっ!」

 唇が離れた瞬間、これまで以上に深くまで貫かれた。最奥から痺れるほどの快感が全身に広がり、ノアは壊れたように身体を震わせる。
 手足の力が失われる一方で、後孔はサミュエルを離すまいとするように、ぎゅうっと締めつけた。その動きで、さらに強く埋められているものの存在感を感じ取ることになり、ノアは次々に襲い来る快感の波に、身も世もなく泣きじゃくった。
 前からはダラダラと白濁がこぼれ落ち、イッた快感があまりに長すぎて、神経が焼ききれてしまいそうだ。

「……クッ――」

 サミュエルの押し殺したような声の後に、最奥に打ち付けられるものを感じる。ビクッと中で跳ねるものを、ノアは無意識で搾り取るように締めつけた。快感の余韻を味わうように、腰がゆったりと揺れる。――腹の奥が温かいもので満たされて、気持ちがいい。

 その満足感で蕩けた頭を叩き起こすように、埋められた楔がさらに奥に塗り広げるように動いた。イッたばかりで敏感な身体が、いとも容易く煽られてしまう。

「んっ……やっ、ぁ」

 微かに頭を振って、力が入らない手でなんとかサミュエルの肩を叩いてみる。これ以上の快感に耐えられる気がしなかった。もう意識が落ちそうなくらい、限界である。

「……ノア、最高に、気持ちよかったよ」
「っ、ぅ……」

 耳元に息がかかる。甘く掠れた声に、じわっと快感が走った。どこもかしこも敏感で、もう刺激してほしくないのに、離れてしまうのも嫌だ。
 重い瞼を上げて、サミュエルを見つめると、微笑みが返ってくる。優しげな表情なのに、その瞳に宿る欲が、ノアに警戒心を抱かせた。

 サミュエルはノアを見下ろし、うっとりと目を細める。そして、滴る汗を手の甲で拭い、ノアの唇に軽いキスを落とした。

「まだ、夜は長い。たくさん、楽しもうね」
「ゃ、です……。もぅ、むり……」
「大丈夫。明日は休みだから」

 そういう問題ではない。ノアは真剣にそう言いたかったし、なんとかサミュエルを止めようとしたけれど、くったりと力が抜けた身体では、ろくな抵抗もできなかった。

 中に埋められたものが硬度を増していることに気づいて、思わず天井を見上げる。遠い目をしている自覚があった。どうして、サミュエルはこんなに元気なのかと、心底不思議に思う。ノア以上に体力を使っているはずなのに……。

「――ノア、私を見て。寂しくなるだろう?」
「あっ! ふ、ぁあっ」

 少し引いた腰が、ガツッと打ち付けられて、ノアの思考は一瞬で停止する。蕩けた中は痛みもなくサミュエルを受け入れ、歓迎するように蠢いていた。意思に反した動きを抑えることができない。
 その意思を伴わない動きをノアに知らしめるように、サミュエルが腰を回してグチュグチュとかき混ぜた。

「ここは健気に締めつけてきて、可愛いよ。もっと可愛がってあげるからね――」
「や、ぁあっ!」

 緩やかだった動きが、次第に激しさを増していく。熱く硬いものが、ノアの内側の敏感なところを擦り抉り、容赦なく責め立てるのだ。
 荒波に翻弄される小舟のように、ノアは押し寄せてくる快感になすすべもなく呑み込まれるしかなかった。

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