内気な僕は悪役令息に恋をする

asagi

文字の大きさ
上 下
256 / 277

256.初夜④

しおりを挟む
 グチュグチュと大きな水音が響く。ノアの中を暴く指は、いつの間にか三本に増えていた。内壁を擦り、前側を指圧するような動きに、ノアはビクビクと反応する。
 声を抑える意思さえ失い、のけぞり喘ぐノアの唇に、サミュエルが噛みつくように口づけた。

「ぁ、んぅ……ふ、ゃあっ」
「随分と柔らかくなったね。よくがんばったよ」

 潤み歪む視界で、サミュエルの笑みを捉える。唇を舌で舐める仕草に、男らしい色気を感じて胸が高鳴った。頭が熱に浮かされてぼんやりとして、何を言われているのかすら理解できない。でも優しい声をかけられて、嬉しくなる。
 ぼんやりとした眼差しで、口元に淡い笑みを浮かべるノアを見下ろし、サミュエルが目を細めた。

「――そろそろ大丈夫そうだね」
「んっ……」

 後孔からズルズルと指が這い出ていく。長く埋められていたものがなくなる空虚感に、ノアは眉を潜めて甘く呻いた。
 きゅうきゅうと空気を食む後孔を見下ろし、サミュエルが笑みを浮かべる。

「すぐ、私のをあげるよ」
「ん……ください……」
「ふっ……何を言っているか、もう分かってないね?」

 クツクツと笑うサミュエルに、ノアは目を細めた。サミュエルが楽しそうで、ノアも嬉しい。
 身体を震わせながら、ゆっくりと瞬きを繰り返すノアの、シーツに投げ出していた手が掴まれる。手を引っ張られ押し当てられたのは、サミュエルの中心だった。
 硬く熱い感触に、指がビクッと跳ねる。少しずつ戻ってきた思考でそれを理解して、ノアは目を見開いて動きを止めた。

「これがほしいんだね?」
「え、ぁ……いゃ、ちがっ……!」

 口がハクハクと動く。顔が熱くて、どうしようもない。直前の自分の言葉まで思い出してしまって、ノアは今すぐ逃げ出したい気分だった。

「ん……今、あげるよ」

 サミュエルがノアの手ごと中心を握り、軽く擦る。掠れた甘い声が、ノアの耳まで犯すように響いた。
 ノアはサミュエルのうっとりと感じ入った表情に魅入り、無意識で指先に力を込める。ビクビクと動くそれはまるで別の生き物のようで、不思議な気がした。浮き上がる血管を指先で辿り、くびれを爪先で軽くひっかく。

 サミュエルの眉が寄せられ、低く「っ、ふ……」と息がもれた。
 ノアの拙い仕草でサミュエルが感じているのが嬉しくて、動きは次第に大胆になっていく。先走りを零す先端を指先で擦り、全体を包み込んで撫でる。ピクピクと跳ねる動きが愛おしい。

「ノア――」

 サミュエルを愛でるのに夢中になっていたノアは、呼びかけられてハッと息を呑んだ。恐る恐る上げた視線が、サミュエルの瞳にぶつかる。
 甘く細められた目が、獰猛な光を宿してノアを貫いた。

「ぁっ……」
「悪い子だね。そんなに煽られたら、優しくできないよ?」
「ち、がっ……」
「それとも、激しくされるのが好み?」

 うっとりと微笑むサミュエルの顔から目が離せない。力が抜けた手に、サミュエルの手が重なり、ぎゅっと握りしめられる。手のひらに押し当てられたものの熱をまざまざと感じて、ノアはカッと身体が熱くなった。

「――これで、たくさん満たして、突いてほしいんだね?」
「っ……」

 言葉にされるとあまりに生々しくて、ノアは返す言葉を失う。頭の中に浮かんだ想像を、振り払うことができない。
 じわりとお腹の奥の方が潤んだような感覚があった。それは少しずつノアの熱を煽り、焦れったい気分になる。

「サミュエルさま……」

 無意識で腰が揺れた。サミュエルの中心を掴んだままの手に軽く力を籠めて、腰を擦りつける。

「ふっ……可愛い」
「ん……」

 微笑んだサミュエルに口付けられて、ノアは手の力が緩んだ。抜け出したものを追うこともせず、甘いキスに浸る。

「ん、ぁ……んっ!?」

 不意に後孔の表面を硬いものが擦った。何度も擦りつける動きに、内壁が歓迎するように蠢く。今か今かと、満たされるのを待ちわびていた。
 キスをするように、先端が僅かに後孔に押し当てられる。きゅうきゅうと食み、中に飲み込もうとする動きに逆らうように離れていくと、切なさが胸に溢れた。

「あぁ……やぁ……」
「ほしい?」
「ん、……ほしぃ、です」

 サミュエルの肩に縋りつく。額を擦りつけてねだると、サミュエルが低い笑い声をこぼした。

「素直でいいね」
「ふぁ……」

 頭を撫でられて、ノアは目尻を下げる。甘やかされるのは嬉しい。でも、切なさがたまらなくて、少し不満。
 そんなノアの感情も逃さず読み取ったように、サミュエルがノアの耳にキスを落として宥める。それと同時に、グッと寄せられた腰に、ノアは身体をビクビクと震わせた。

「ああっ!」

 入ってくる。質量のある熱いものが、ノアの柔らかいところを押し広げ、グッと容赦なく突き上げる。
 のけぞり喘ぐノアの鎖骨あたりに、サミュエルが額を擦りつけて「くっ……」と押し殺した声をもらした。

 腰を掴む指先の力が強い。快感を逃す動きさえ禁じられて、ノアは敏感な内壁を擦られて甘い声を上げた。
 トン、と奥の方を突かれた瞬間の満足感は、筆舌に尽くしがたい。頭が真っ白になるような衝撃と、湧き上がる幸福感、そしてサミュエルへの愛おしさが胸を占める。

「ぁあっ、……ん、ぁ……サミュエル、さま……」
「ん……なんだい」

 呼びかけると、サミュエルが顔を上げる。
 その額には汗が滲み、眉がきつく寄せられていた。眼差しは甘く、愛おしそうにノアに向けられる。
 中に馴染むのを待つように、じっと耐えている優しさが、愛おしくて切ない。激しくするなんて言っておきながら、サミュエルはノアを傷つけるつもりなんて微塵もないのだ。

「……サミュエルさま」
「うん」

 頷いてノアの言葉を待つサミュエルを、ノアはじっと見つめて微笑む。

「……動いて、ください。……もっと、僕を、満たして――っ、ぁあっ!」

 言葉が途切れた。ガツンッと音が聞こえそうな勢いで奥を突かれて、ノアは抑えきれない嬌声を上げる。
 気遣いなんて忘れ去ったように腰を動かすサミュエルの顔を、ノアは必死に見つめた。
 伏せられた目。滴る汗。潜められた眉。薄く開いた口からは、時折低い声がもれる。全てが色っぽくて煽情的で、こんな表情をサミュエルにさせているのが自分だと思うと、心が歓喜に溢れる。

「ノアは、やっぱり、悪い子だね、っ」
「ぁんっ、ん、ふ、ぁ……なん、で……?」
「私が必死に抑えているものを、容赦なく、解き放ってしまうから」

 荒い呼吸の合間に混ざる声。ノアは快感で蕩けて上手く働かない頭で、なんとか理解しようと努める。でも、内容よりも、与えられる刺激に意識が向いて、どうにも集中できない。

「――煽ったのは、ノアなんだから、たっぷり付き合ってもらうよ?」
「ああっ! ……ひ、ぅ……んぁ」

 腰を掴む手に引き寄せられて、最奥まで貫かれる。ノアはガクガクと身体を震わせて、サミュエルを受け止めた。

しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...