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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-53.愛しい華
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「ルイス、お世話お願いね」
「もちろんです!」
ワンピースやカーディガン、靴などを抱えてルミシャンスを追うルイスを眺めてから、スノウは振り返る。
アークはなぜだか少し肩を落としていて、ブレスラウはじっとルミシャンスが消えた方を凝視していた。
「二人ともどうしたの?」
「……ルミシャンスが人型に変化した喜びを、もっと堪能させてくれても良かったんじゃないか」
「あぁ……でも、ルミシャンス、落ち着いてるの苦手だから」
ちょっと恨めしそうな目でアークに見つめられて、スノウは苦笑する。
落ち着いていたように見えていたけれど、アークはルミシャンスの人型を随分と楽しみにしていたらしい。
ブレスラウに対してそんなことは言ってなかったはずだけれど。この違いは、種族差か、それとも女の子だからか。
どちらにせよ、ルミシャンスが愛されているからこそだから、「後でゆっくり見て褒めてあげてよ」と告げるだけにする。
「——ブレスラウはどうしてそんなに固まってるの?」
もう一人の常とは違う様子を指摘すると、視線がようやくスノウに向いた。
「ルミが大きい……」
「そうだね? 身長はそこまで変わってないと思うけど……人型って大きく感じるよね」
ブレスラウが何を言いたいのかよく分からない。でも、とりあえずスノウの感想もまぜて返事をしてみた。あまり同意は得られていないようだけれど。
「……もっと可愛らしい感じかと思っていた」
「ああ、結構大人っぽかったね」
今度は素直に納得した。
日頃の活発でマイペースな気分屋、お寝坊さんなところを見ていたら、もっと幼い印象をスノウも予想していた。
実際のルミシャンスは、スノウとアークの良いところを組み合わせ、見た目だけなら深窓のお姫様のようにお淑やかな感じだったのだ。振る舞いがその印象を裏切っているけれど、それも可愛くていいと思う。
「綺麗系ですよねぇ」
部屋に戻ってきたルイスが、にこにこと笑いながら口を挟む。
確かに可愛いか綺麗かのどちらかでルミシャンスを表現するなら、誰もが『綺麗』と言うだろう。
ルイスの後ろから、ルミシャンスも戻ってきた。
じっくり人型の姿を確かめられたのか、満足そうな表情だ。大人っぽい顔立ちに、子どものような無邪気な笑みが浮かんでいるのが、ギャップがあって魅力的に見える。
「ルミ、きれい?」
「そろそろ自分のことを私って言おうね」
「……私、きれい?」
素直に言い直してから、ルミシャンスが全身を見せるように、まとったワンピースの裾を翻してくるりと回る。
長い髪も一緒に揺れて、十人中十人が綺麗と言うのが間違いない姿だ。ルミシャンスも自信に溢れた表情をしている。
「綺麗」
「とても素敵な女性だな」
端的な言葉で真面目に答えるブレスラウと、微笑みながら褒めるアークに、ルミシャンスは花が綻ぶような笑みを見せた。
スノウは内心で『おぉ……』とこぼす。
女の子って華やかだ。そこにいるだけで場が明るく輝く気がする。
「……なんというか……すぐに番に立候補する人が現れそう」
思わずそう呟いたスノウに対して、竜族二人が即座に「許さない」「流石にまだ早い」と答えた。
竜族二人に認められる相手が現れるのか、スノウはちょっと心配になってしまうほどの勢いだ。
そんなスノウの思いをよそに、ルミシャンスは「まだまだママとラウとパパといたいから、番はいらないのよー」とにこにこと笑った。
こちらもこちらで、家族愛が強すぎて心配になってしまうけれど——雪豹族がほとんどいないことを考えたら、これくらいの方がいいのかもしれない。
種族の違いを乗り越えて、ルミシャンスが想い合える人に出会えたらいいなと願う。そうならなくても、スノウたちが一生愛し続けるのだから、絶対に不幸せにはしない。
改めてそう心に誓って、スノウはルミシャンスに微笑みかけた。
「もちろんです!」
ワンピースやカーディガン、靴などを抱えてルミシャンスを追うルイスを眺めてから、スノウは振り返る。
アークはなぜだか少し肩を落としていて、ブレスラウはじっとルミシャンスが消えた方を凝視していた。
「二人ともどうしたの?」
「……ルミシャンスが人型に変化した喜びを、もっと堪能させてくれても良かったんじゃないか」
「あぁ……でも、ルミシャンス、落ち着いてるの苦手だから」
ちょっと恨めしそうな目でアークに見つめられて、スノウは苦笑する。
落ち着いていたように見えていたけれど、アークはルミシャンスの人型を随分と楽しみにしていたらしい。
ブレスラウに対してそんなことは言ってなかったはずだけれど。この違いは、種族差か、それとも女の子だからか。
どちらにせよ、ルミシャンスが愛されているからこそだから、「後でゆっくり見て褒めてあげてよ」と告げるだけにする。
「——ブレスラウはどうしてそんなに固まってるの?」
もう一人の常とは違う様子を指摘すると、視線がようやくスノウに向いた。
「ルミが大きい……」
「そうだね? 身長はそこまで変わってないと思うけど……人型って大きく感じるよね」
ブレスラウが何を言いたいのかよく分からない。でも、とりあえずスノウの感想もまぜて返事をしてみた。あまり同意は得られていないようだけれど。
「……もっと可愛らしい感じかと思っていた」
「ああ、結構大人っぽかったね」
今度は素直に納得した。
日頃の活発でマイペースな気分屋、お寝坊さんなところを見ていたら、もっと幼い印象をスノウも予想していた。
実際のルミシャンスは、スノウとアークの良いところを組み合わせ、見た目だけなら深窓のお姫様のようにお淑やかな感じだったのだ。振る舞いがその印象を裏切っているけれど、それも可愛くていいと思う。
「綺麗系ですよねぇ」
部屋に戻ってきたルイスが、にこにこと笑いながら口を挟む。
確かに可愛いか綺麗かのどちらかでルミシャンスを表現するなら、誰もが『綺麗』と言うだろう。
ルイスの後ろから、ルミシャンスも戻ってきた。
じっくり人型の姿を確かめられたのか、満足そうな表情だ。大人っぽい顔立ちに、子どものような無邪気な笑みが浮かんでいるのが、ギャップがあって魅力的に見える。
「ルミ、きれい?」
「そろそろ自分のことを私って言おうね」
「……私、きれい?」
素直に言い直してから、ルミシャンスが全身を見せるように、まとったワンピースの裾を翻してくるりと回る。
長い髪も一緒に揺れて、十人中十人が綺麗と言うのが間違いない姿だ。ルミシャンスも自信に溢れた表情をしている。
「綺麗」
「とても素敵な女性だな」
端的な言葉で真面目に答えるブレスラウと、微笑みながら褒めるアークに、ルミシャンスは花が綻ぶような笑みを見せた。
スノウは内心で『おぉ……』とこぼす。
女の子って華やかだ。そこにいるだけで場が明るく輝く気がする。
「……なんというか……すぐに番に立候補する人が現れそう」
思わずそう呟いたスノウに対して、竜族二人が即座に「許さない」「流石にまだ早い」と答えた。
竜族二人に認められる相手が現れるのか、スノウはちょっと心配になってしまうほどの勢いだ。
そんなスノウの思いをよそに、ルミシャンスは「まだまだママとラウとパパといたいから、番はいらないのよー」とにこにこと笑った。
こちらもこちらで、家族愛が強すぎて心配になってしまうけれど——雪豹族がほとんどいないことを考えたら、これくらいの方がいいのかもしれない。
種族の違いを乗り越えて、ルミシャンスが想い合える人に出会えたらいいなと願う。そうならなくても、スノウたちが一生愛し続けるのだから、絶対に不幸せにはしない。
改めてそう心に誓って、スノウはルミシャンスに微笑みかけた。
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