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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-42.うまうま
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他のお客さんの邪魔にならないように、近くの空いたスペースまで移動してから、いざ実食。
串焼きを凝視して動かないルミシャンスを眺めながら、スノウはぱくりと噛みついた。
「うん、タレが甘じょっぱくて美味しい。クラーケンも旨味が凝縮されてる感じだよ」
「……肉の方が好き」
ブレスラウも躊躇いなく食べていたけれど、好みと言えるものではなかったらしい。でも、嫌だとも言っていないので、普通に食べられるのだろう。
「ママもラウもたべてる……」
ルミシャンスの顔に『絶望』と書いてあるように見えて、スノウは吹き出すように笑ってしまった。
そんなに魔物クラーケンの姿が衝撃的だったのか。幼心には化物のように見えても不思議ではないけれど、反応が可愛すぎる。
「美味しいよー。ルミシャンスは食べない? 僕が食べる?」
残った一本をルミシャンスの前で揺らすと、それにつられて夕陽色の瞳が動いた。
怯えているけれど、興味は消えていないようだ。
これはすぐに食いつくだろうな、というスノウの予想に違わず、ルミシャンスが小さく口を開ける。
「あー」
「はい、どうぞ」
クラーケン焼きの端っこが小さく噛み千切られる。
ルミシャンスはなかなかの弾力に目を白黒させながらも、懸命に口を動かしていた。口元が茶色く汚れている。
「美味しい?」
「……ん! うまいまい!」
「『まい』が一個多かったね」
スノウは思わず笑ってしまった。
美味しさへの衝撃からか、舌が上手く回っていない様子のルミシャンスが面白くて可愛い。
ブレスラウも僅かに目を細めて、微笑ましそうにルミシャンスを見守っている。
「もうちょっと!」
「食べ過ぎたらダメだよー。他のもの食べられなくなっちゃうからね」
きっと甘いものも食べたがるだろうと予測して、制限をつけながら食べさせてあげる。パクパクとご機嫌そうに食べる姿には、先程までの躊躇した様子は微塵も残っていなかった。
「何か買ってくる?」
「飲み物があればいいけど……」
「では私が」
ブレスラウに答えた途端、ルイスが手を挙げる。さすがにブレスラウに買い出しをさせるつもりはなかったので、遠慮なく頼んだ。
甘じょっぱいものを食べると喉が渇く。ルミシャンスは「ミルク!」と元気に頼んでいたけれど、果たして屋台でそんなものが売っているのだろうか。
「ルミ、たべた!」
「美味しかったね」
結局ルミシャンス用の串焼きの大部分をスノウとブレスラウが食べたけれど、ご満悦そうなので良かった。
運良く見つかった、バナナミルクを飲んでいるルミシャンスは、すでに関心が別のところに移っているようだ。
「ママ、あれはなーに?」
「どれ?」
ルミシャンスが指差したのは、食べ物の屋台ではなかった。装飾品を売っているらしく、店主が品物を並べながら周囲の人々に声をかけている。
「キラキラしてるのが売ってる」
「アクセサリーだね」
ブレスラウが興味なさそうに答えながらも近づいていくので、ルミシャンスを抱き上げたスノウもついていった。
「きらきら!」
「うーん、綺麗だけど、これはガラス……?」
アクセサリーには煌めく石が嵌め込まれていた。耳環やネックレス、腕輪など多種多様だけれど、スノウがいまいち心惹かれないのは、石が人工物のせいだろう。
そうした違いの分からないルミシャンスは楽しそうなので、眺める分には構わない。でも、これを城内でつけるとなると、アークたちが少し顔を顰めそうだ。
魔王の家族という立場上、身につけるものは良いものであるべき、という認識をスノウもきちんと持ちつつある。
ここに並んでいるのは、相応しくないんだろうな、と心の中で呟いた。
「ガラスですが、特殊な製法なので、とても綺麗でしょう? 宝石がついているものよりお買い得ですし」
スノウが乗り気ではない様子なのを見て取ったのか、店主が必死にアピールしてくる。あまり売れ行きが良くないのだろう。店主の様子には焦りさえ窺えた。
「特殊な製法……どこのもの?」
そんな報告があったかな、と記憶を探りながら尋ねる。
魔族世界の産業というものは、地域ごとに特色がある。多くが、各種族ごとに独占的に技術を開発し使っているからだ。
鉱石だとモグラ族が有名で、その加工は近類種が担っている。
ガラスは火を使って作るので、そうした能力持ちの種族がいる地域が有名だ。
そのような種族が特殊なガラス加工技術を開発したとは聞いた覚えがない。魔王であるアークの元に報告が届いていないというのは不思議だ。
スノウの胸をざわりと嫌な感じのものが撫でた気がした。
串焼きを凝視して動かないルミシャンスを眺めながら、スノウはぱくりと噛みついた。
「うん、タレが甘じょっぱくて美味しい。クラーケンも旨味が凝縮されてる感じだよ」
「……肉の方が好き」
ブレスラウも躊躇いなく食べていたけれど、好みと言えるものではなかったらしい。でも、嫌だとも言っていないので、普通に食べられるのだろう。
「ママもラウもたべてる……」
ルミシャンスの顔に『絶望』と書いてあるように見えて、スノウは吹き出すように笑ってしまった。
そんなに魔物クラーケンの姿が衝撃的だったのか。幼心には化物のように見えても不思議ではないけれど、反応が可愛すぎる。
「美味しいよー。ルミシャンスは食べない? 僕が食べる?」
残った一本をルミシャンスの前で揺らすと、それにつられて夕陽色の瞳が動いた。
怯えているけれど、興味は消えていないようだ。
これはすぐに食いつくだろうな、というスノウの予想に違わず、ルミシャンスが小さく口を開ける。
「あー」
「はい、どうぞ」
クラーケン焼きの端っこが小さく噛み千切られる。
ルミシャンスはなかなかの弾力に目を白黒させながらも、懸命に口を動かしていた。口元が茶色く汚れている。
「美味しい?」
「……ん! うまいまい!」
「『まい』が一個多かったね」
スノウは思わず笑ってしまった。
美味しさへの衝撃からか、舌が上手く回っていない様子のルミシャンスが面白くて可愛い。
ブレスラウも僅かに目を細めて、微笑ましそうにルミシャンスを見守っている。
「もうちょっと!」
「食べ過ぎたらダメだよー。他のもの食べられなくなっちゃうからね」
きっと甘いものも食べたがるだろうと予測して、制限をつけながら食べさせてあげる。パクパクとご機嫌そうに食べる姿には、先程までの躊躇した様子は微塵も残っていなかった。
「何か買ってくる?」
「飲み物があればいいけど……」
「では私が」
ブレスラウに答えた途端、ルイスが手を挙げる。さすがにブレスラウに買い出しをさせるつもりはなかったので、遠慮なく頼んだ。
甘じょっぱいものを食べると喉が渇く。ルミシャンスは「ミルク!」と元気に頼んでいたけれど、果たして屋台でそんなものが売っているのだろうか。
「ルミ、たべた!」
「美味しかったね」
結局ルミシャンス用の串焼きの大部分をスノウとブレスラウが食べたけれど、ご満悦そうなので良かった。
運良く見つかった、バナナミルクを飲んでいるルミシャンスは、すでに関心が別のところに移っているようだ。
「ママ、あれはなーに?」
「どれ?」
ルミシャンスが指差したのは、食べ物の屋台ではなかった。装飾品を売っているらしく、店主が品物を並べながら周囲の人々に声をかけている。
「キラキラしてるのが売ってる」
「アクセサリーだね」
ブレスラウが興味なさそうに答えながらも近づいていくので、ルミシャンスを抱き上げたスノウもついていった。
「きらきら!」
「うーん、綺麗だけど、これはガラス……?」
アクセサリーには煌めく石が嵌め込まれていた。耳環やネックレス、腕輪など多種多様だけれど、スノウがいまいち心惹かれないのは、石が人工物のせいだろう。
そうした違いの分からないルミシャンスは楽しそうなので、眺める分には構わない。でも、これを城内でつけるとなると、アークたちが少し顔を顰めそうだ。
魔王の家族という立場上、身につけるものは良いものであるべき、という認識をスノウもきちんと持ちつつある。
ここに並んでいるのは、相応しくないんだろうな、と心の中で呟いた。
「ガラスですが、特殊な製法なので、とても綺麗でしょう? 宝石がついているものよりお買い得ですし」
スノウが乗り気ではない様子なのを見て取ったのか、店主が必死にアピールしてくる。あまり売れ行きが良くないのだろう。店主の様子には焦りさえ窺えた。
「特殊な製法……どこのもの?」
そんな報告があったかな、と記憶を探りながら尋ねる。
魔族世界の産業というものは、地域ごとに特色がある。多くが、各種族ごとに独占的に技術を開発し使っているからだ。
鉱石だとモグラ族が有名で、その加工は近類種が担っている。
ガラスは火を使って作るので、そうした能力持ちの種族がいる地域が有名だ。
そのような種族が特殊なガラス加工技術を開発したとは聞いた覚えがない。魔王であるアークの元に報告が届いていないというのは不思議だ。
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