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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族

4-32.竜族たち

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 アークと合流して会場に向かうと、驚くほど強い気配を持った者たちが静かに待ち受けていた。
 少ないながらもこれまでに参加してきたパーティーとは、だいぶ違った雰囲気である。

 これだけの人数が集まっていながら、歓談することさえないとはどういうことなのだろう。
 スノウは無意識の内に顔を引きつらせてしまった。

 竜族たちは、放つ気配の強さもさることながら、容貌の美しさを際立たせるような無表情さと優れた体格が、なんともいえず威圧的だ。魔族一の強さを誇ると言われる理由が実感できた。

(これは、にこやかに挨拶するのも、無理……?)

 普段のパーティーと違って、スノウは積極的に挨拶する必要はないと言われている。そもそも、魔王であるアークの番という立場上、普段でもスノウが客と話し込むことはないのだけれど。
 わざわざされた注意は、ただ黙って立っているだけでいいという意味だったのかもしれない。

 音楽の音色さえなく、シンと静まった広間に、スノウたちの足音が大きく響く。
 広間の前方に設えられた壇上に向かう間、途切れることなく強い視線が追ってくるのを感じて、スノウは内心で悲鳴を上げた。

 蛇に見込まれた蛙、なんて慣用句があるらしいけれど、そんな蛙の気分が理解できた気がする。視線だけで怖いなんて、さすが竜族だ。

「陛下からのご挨拶です」

 スノウたち三人が壇上に立ったのを見届けたロウエンが宣言する。
 この広間に、竜族でないのはスノウとロウエンだけ。使用人たちは強すぎる竜族の気配による影響を考慮して、パーティーの間はこの広間に近づかないようにしている。それほど、竜族は他種族から恐れられているのだ。

「今日は俺の息子、ブレスラウの披露目によく集まってくれた。次期族長候補だ。そのつもりでいてくれ」

 短く無愛想なアークの挨拶。それに文句をつける者は一人もいなかった。竜族は他者への関心が薄いのと同時に、冗長な言葉を嫌う性質らしい。

 アークに教えられた竜族の性質を頭の中で反芻しながら、スノウは広間を見渡した。

 集まった竜族は四十人ほど。見た目で年齢は分からないけれど、雰囲気や服装から、ある程度それぞれの家柄は判断できる。
 一際きらびやかな服装をまとった者たちは、竜族の中でも高位——いわゆる良家に属しているのだろう。

「続きまして、陛下の御子息、ブレスラウ王子殿下からのご挨拶です」

 ロウエンの宣言と共に、竜族たちの視線が一層集まった気がした。スノウが注目されているわけではないのに緊張してしまう。

「ブレスラウだ。同種族としてよろしく頼む。いずれ族長になるかもしれないが、まだ先だろう。里には大人になってからおとなうつもりだ」

 スノウとは違い一切構えた素振りなく、自然体のままブレスラウが挨拶する。アークと同じく愛想は欠片もないけれど、スノウやルミシャンス以外には普段からこんな感じだ。

「竜族の里を代表し、パールセン様からのご挨拶です」

 ロウエンの言葉を受けて、最前列でスノウたちを見つめていた男が一歩進み出る。

「ブレスラウ様の誕生をお祝いいたしますと共に、竜族の新たな強き象徴になられんことを、竜族一同お祈りいたします」

 パールセンが頭を下げると同時に、竜族たちが揃って礼をとったので、スノウは圧倒されてた。

(なんというか……強い……)

 適当な表現すら思い浮かばず、竜族たちを眺める。
 雪豹族とはまるで違うことをまざまざと感じるような気分だった。

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