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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-30.可愛いわがまま
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ブレスラウの人型への変化をきっかけに、お披露目への準備が急ピッチで進められた。そうなるほどに、竜族からの要求が強かったらしい。
そして、お茶会から一ヶ月も経たない内に開かれることになったお披露目当日の朝。
スノウは愛娘ルミシャンスとじっと視線を合わせていた。
まだ幼いブレスラウに合わせ、午後からお披露目会があることを考えると、スノウも色々と支度しなければならない。でも、今は駄々をこねるルミシャンスを宥めるのが優先だった。
「ルミシャンスはお留守番だよ」
「にー……ルミもラウといく……」
つぶらな夕陽色の瞳が潤いを湛えてスノウを見上げる。
今すぐ抱きしめて、どんなわがままだって聞いてあげたくなってしまうくらい、可愛い悲哀に満ちた眼差しだ。愛する番と同じ瞳の色というのが、なおさらスノウの心をきゅっと締め付ける。
けれど、今日はそんな風に甘やかすわけにはいかなかった。なぜなら、お披露目会に集まるのは竜族ばかりだからだ。
竜族といえば、魔族一の強い種族で、自尊心が高く、それが故に他種族を蔑むことさえある者たち。
そうでなくても、他者への関心が薄い彼らが、雪豹族の子に甘い対応をしてくれるなんて期待は、するだけ無駄である。
竜族であるアークがそう言ったのだから、疑う余地はない。
もし、ルミシャンスを彼らの前に出したら、アークの子であるという手前、暴力をふるわれるようなことはなくとも、何かしら嫌な思いをさせられてしまう可能性がある。
スノウは、ルミシャンスを竜族たちの目にさらしたくなかった。愛娘を守りたいと思うのは、親として当然のことだ。
そして、その思いはアークやロウエンからも認められていたし、二人の方こそ「最初からそのつもりだった」と言っていた。
「竜族の皆さんはね。同種族以外はあんまり好きじゃないんだよ」
同種族であってもあまり好意は持っていない、ということは今説明する必要はないだろう。
竜族は他者に関心を持たないなんて、妹大好きっぷりを隠さないブレスラウを兄に持つルミシャンスは理解しにくいだろうし。
「ルミ、きらわれるの……?」
ぱちりと瞬いた瞳が、途端に潤いを増したのを見て、スノウは内心で大いに慌てた。
起きているときはいつだって元気いっぱいのルミシャンスは、泣く時さえ盛大なのだ。身も世もなく、と表現したくなるくらい力いっぱいに泣く。
それを宥めることになるスノウも、世話役のルイスも、大変疲労困憊してしまうから、なるべく泣かせたくない。それでなくとも、可愛い子が泣いている姿は心が痛むのだから。
「ど、どうかなぁ? ただ、小さい子に対応するのは慣れてない人たちばかりだから、ルミシャンスが参加しても、退屈だと思うよ。お留守番してたら、ルイスがたくさん遊んでくれるし!」
ルイスに視線で助けを求めたら、力強く頷いてくれた。
「そうですよ! スノウ様やブレスラウ様はお忙しいので、私とたくさん遊んでください。私、一人にされたら寂しいです……」
しょんぼりと肩を落として嘆くルイスを、ルミシャンスが丸くなった瞳で見つめた。垂れ下がっていた耳と尻尾がピンと立ち上がっている。
「にぃに、さびしいの?」
「はい。ルミシャンス様、お相手してくださいますか?」
「……にー、しかたないんだから。にぃにはあまえんぼうね」
尻尾が揺れる。むふ、と胸を張ったルミシャンスは、ルイスに頼られて嬉しそうだ。ルイスの狙い通りである。
スノウは『我が子ながら、単純だなぁ』と笑ってしまいながらも、ホッと胸を撫で下ろした。
それにしても、ルミシャンスも随分と口が達者になってきた。ませてきた、というべきかもしれない。
自分が普段言われている言葉を真似て、ルイスに『甘えん坊ね』なんて言い、甘やかしてあげようとするルミシャンスの姿の、なんと可愛らしいことか。
しなければならないことは山積みで、時間の余裕はないのに、スノウは緩む頬を隠せず、ルミシャンスの成長を眺めて微笑ましい気持ちになった。
そして、お茶会から一ヶ月も経たない内に開かれることになったお披露目当日の朝。
スノウは愛娘ルミシャンスとじっと視線を合わせていた。
まだ幼いブレスラウに合わせ、午後からお披露目会があることを考えると、スノウも色々と支度しなければならない。でも、今は駄々をこねるルミシャンスを宥めるのが優先だった。
「ルミシャンスはお留守番だよ」
「にー……ルミもラウといく……」
つぶらな夕陽色の瞳が潤いを湛えてスノウを見上げる。
今すぐ抱きしめて、どんなわがままだって聞いてあげたくなってしまうくらい、可愛い悲哀に満ちた眼差しだ。愛する番と同じ瞳の色というのが、なおさらスノウの心をきゅっと締め付ける。
けれど、今日はそんな風に甘やかすわけにはいかなかった。なぜなら、お披露目会に集まるのは竜族ばかりだからだ。
竜族といえば、魔族一の強い種族で、自尊心が高く、それが故に他種族を蔑むことさえある者たち。
そうでなくても、他者への関心が薄い彼らが、雪豹族の子に甘い対応をしてくれるなんて期待は、するだけ無駄である。
竜族であるアークがそう言ったのだから、疑う余地はない。
もし、ルミシャンスを彼らの前に出したら、アークの子であるという手前、暴力をふるわれるようなことはなくとも、何かしら嫌な思いをさせられてしまう可能性がある。
スノウは、ルミシャンスを竜族たちの目にさらしたくなかった。愛娘を守りたいと思うのは、親として当然のことだ。
そして、その思いはアークやロウエンからも認められていたし、二人の方こそ「最初からそのつもりだった」と言っていた。
「竜族の皆さんはね。同種族以外はあんまり好きじゃないんだよ」
同種族であってもあまり好意は持っていない、ということは今説明する必要はないだろう。
竜族は他者に関心を持たないなんて、妹大好きっぷりを隠さないブレスラウを兄に持つルミシャンスは理解しにくいだろうし。
「ルミ、きらわれるの……?」
ぱちりと瞬いた瞳が、途端に潤いを増したのを見て、スノウは内心で大いに慌てた。
起きているときはいつだって元気いっぱいのルミシャンスは、泣く時さえ盛大なのだ。身も世もなく、と表現したくなるくらい力いっぱいに泣く。
それを宥めることになるスノウも、世話役のルイスも、大変疲労困憊してしまうから、なるべく泣かせたくない。それでなくとも、可愛い子が泣いている姿は心が痛むのだから。
「ど、どうかなぁ? ただ、小さい子に対応するのは慣れてない人たちばかりだから、ルミシャンスが参加しても、退屈だと思うよ。お留守番してたら、ルイスがたくさん遊んでくれるし!」
ルイスに視線で助けを求めたら、力強く頷いてくれた。
「そうですよ! スノウ様やブレスラウ様はお忙しいので、私とたくさん遊んでください。私、一人にされたら寂しいです……」
しょんぼりと肩を落として嘆くルイスを、ルミシャンスが丸くなった瞳で見つめた。垂れ下がっていた耳と尻尾がピンと立ち上がっている。
「にぃに、さびしいの?」
「はい。ルミシャンス様、お相手してくださいますか?」
「……にー、しかたないんだから。にぃにはあまえんぼうね」
尻尾が揺れる。むふ、と胸を張ったルミシャンスは、ルイスに頼られて嬉しそうだ。ルイスの狙い通りである。
スノウは『我が子ながら、単純だなぁ』と笑ってしまいながらも、ホッと胸を撫で下ろした。
それにしても、ルミシャンスも随分と口が達者になってきた。ませてきた、というべきかもしれない。
自分が普段言われている言葉を真似て、ルイスに『甘えん坊ね』なんて言い、甘やかしてあげようとするルミシャンスの姿の、なんと可愛らしいことか。
しなければならないことは山積みで、時間の余裕はないのに、スノウは緩む頬を隠せず、ルミシャンスの成長を眺めて微笑ましい気持ちになった。
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