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続×3.雪豹くんとにぎやかな家族
4-13.可愛い怪獣
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今日はブレスラウとルミシャンスを連れて執務室へ行く。
魔王城敷地内を散歩することはこれまでにもよくあったとはいえ、執務室に行くのは今日が初めてだ。
それは、子どもたちが執務の邪魔をしてはいけない、というスノウの配慮によるもの。
なんといっても、ルミシャンスが寝ている時以外はおとなしくしていないから。
一日の半分以上を寝て過ごしているとはいえ、執務中のアークやロウエンの足元をバタバタと走り回られては、二人は執務に集中できないだろう。
一方で、ブレスラウにはまったく不安がない。
子どもらしさがないと思ってしまうほど、ブレスラウは状況を読んで判断することが得意だ。それはアーク曰く「周囲に馬鹿にされないための処世術」らしい。
ブレスラウの気位の高さは折り紙付きだ。時に、ルミシャンスを前にすると、そんな態度も弱まってしまうことがあるけれど。
スノウは子どもたちの普段を思い出して微笑みながら、カゴの中でうごうごと動き回っているルミシャンスを宥めるため声をかける。 ブレスラウはスノウに負担をかけないためか、じっと固まってくれていた。
どちらもスノウにとっては愛しい行動である。
「今日はパパのお仕事姿、見てみようね」
スノウが二人をつれて執務室に行こうと思ったのはそのためだった。
普段、一日の大半を執務室で過ごすアークと、子どもたちはあまり触れ合う時間がとれない。だから、たまにはアークと一緒に時間を過ごしてほしいし、魔王の仕事というものを感じさせてあげたかった。
なんといっても、ブレスラウは次期魔王になることが、アークとロウエンに確実視されているのだから。早い内から教育を施す必要性を、スノウは二人から告げられていた。
そうした事情とは別に、スノウに傍にいてもらいたいという願いをアークが口にしたことも、今日の執務室訪問の理由であることを、スノウは子どもたちに伝えるつもりはない。なんだか父親の威厳が薄れてしまいそうなので。
「ルミシャンスはおとなしくできるかなぁ?」
「にぃ!」
ルミシャンスが元気に『もちろんよ!』と鳴いてくるから、余計に信用できない。これは絶対、執務室の床を駆け回るだろう。
ルミシャンスは、初めての場所に行くと好奇心が刺激されるのか、大興奮状態になってしまうのだ。
「……ぐるる」
「ふふ、ブレスラウは頼りがいがあるお兄ちゃんだね。ほんとありがたいよ」
ブレスラウの仕方なさそうな鳴き声に微笑み、カゴを抱え直した。
走り回るルミシャンスを捕まえて、寝かしつけようとするブレスラウの姿が容易に思い浮かべられる。
それはスノウたちの日常だから。
「ルミシャンスがもっと落ち着けるようになれば、僕も秘書仕事を再開できるんだけど……」
アークがそれを望んでいるのを知っている。
初めの内は自分の巣にスノウを囲い込もうとしていたアークだったけれど、スノウが常に傍にいることの方が幸せだと気づいてしまったのだ。
卵を抱えた後は、子どもたちの世話に集中しているスノウに、時々なんとも言えない目を向けてくるのは、独占欲を必死に抑えようとしているから。
そんな風にスノウの心に寄り添ってくれようとしている番の願いを無下にしたくない。
というわけで、今日はルミシャンスの訓練も兼ねているのだ。何度か執務室に通えば、ルイスと遊びながらもおとなしくなってくれると思う。
「お二人のお世話は私にお任せくださいね!」
「ふふ、ルイス、ありがとう。頼りにしてるよ」
すでにルミシャンスの遊び相手はお手の物になっているルイスの言葉に、スノウは微笑みながら頷く。
スノウ自身が二人にたくさんの愛を伝えるために触れ合う時間をとっているけれど、ルイスの助けがなければ今頃きっと疲れきっているだろう。
ルミシャンスの予想外な行動に振り回されて、体力を消耗してしまうのはいつものことだから。
(子育てって大変なんだなぁ)
そう改めて思ったスノウは、母も昔そんな風に思っていたのだろうかと首を傾げて、「いや、僕はルミシャンスほど予想外な行動なんてしていなかったはず……」と呟いた。
大量の雪うさぎが家を取り囲んでいる状況に母が仰天している様子が脳裏に浮かんで、その声は少し弱々しくなってしまったのは事実だ。
お寝坊さん気質はスノウ由来ではないと思うけれど、好奇心旺盛なところはもしかしたらスノウ譲りなのかもしれない。
そう考えると、ルイスの慣れた様子にも納得がいってしまった。
(……よし、たまにはルイスを労おう)
そう心に決めて、スノウは久しぶりに執務室の扉をくぐった。
魔王城敷地内を散歩することはこれまでにもよくあったとはいえ、執務室に行くのは今日が初めてだ。
それは、子どもたちが執務の邪魔をしてはいけない、というスノウの配慮によるもの。
なんといっても、ルミシャンスが寝ている時以外はおとなしくしていないから。
一日の半分以上を寝て過ごしているとはいえ、執務中のアークやロウエンの足元をバタバタと走り回られては、二人は執務に集中できないだろう。
一方で、ブレスラウにはまったく不安がない。
子どもらしさがないと思ってしまうほど、ブレスラウは状況を読んで判断することが得意だ。それはアーク曰く「周囲に馬鹿にされないための処世術」らしい。
ブレスラウの気位の高さは折り紙付きだ。時に、ルミシャンスを前にすると、そんな態度も弱まってしまうことがあるけれど。
スノウは子どもたちの普段を思い出して微笑みながら、カゴの中でうごうごと動き回っているルミシャンスを宥めるため声をかける。 ブレスラウはスノウに負担をかけないためか、じっと固まってくれていた。
どちらもスノウにとっては愛しい行動である。
「今日はパパのお仕事姿、見てみようね」
スノウが二人をつれて執務室に行こうと思ったのはそのためだった。
普段、一日の大半を執務室で過ごすアークと、子どもたちはあまり触れ合う時間がとれない。だから、たまにはアークと一緒に時間を過ごしてほしいし、魔王の仕事というものを感じさせてあげたかった。
なんといっても、ブレスラウは次期魔王になることが、アークとロウエンに確実視されているのだから。早い内から教育を施す必要性を、スノウは二人から告げられていた。
そうした事情とは別に、スノウに傍にいてもらいたいという願いをアークが口にしたことも、今日の執務室訪問の理由であることを、スノウは子どもたちに伝えるつもりはない。なんだか父親の威厳が薄れてしまいそうなので。
「ルミシャンスはおとなしくできるかなぁ?」
「にぃ!」
ルミシャンスが元気に『もちろんよ!』と鳴いてくるから、余計に信用できない。これは絶対、執務室の床を駆け回るだろう。
ルミシャンスは、初めての場所に行くと好奇心が刺激されるのか、大興奮状態になってしまうのだ。
「……ぐるる」
「ふふ、ブレスラウは頼りがいがあるお兄ちゃんだね。ほんとありがたいよ」
ブレスラウの仕方なさそうな鳴き声に微笑み、カゴを抱え直した。
走り回るルミシャンスを捕まえて、寝かしつけようとするブレスラウの姿が容易に思い浮かべられる。
それはスノウたちの日常だから。
「ルミシャンスがもっと落ち着けるようになれば、僕も秘書仕事を再開できるんだけど……」
アークがそれを望んでいるのを知っている。
初めの内は自分の巣にスノウを囲い込もうとしていたアークだったけれど、スノウが常に傍にいることの方が幸せだと気づいてしまったのだ。
卵を抱えた後は、子どもたちの世話に集中しているスノウに、時々なんとも言えない目を向けてくるのは、独占欲を必死に抑えようとしているから。
そんな風にスノウの心に寄り添ってくれようとしている番の願いを無下にしたくない。
というわけで、今日はルミシャンスの訓練も兼ねているのだ。何度か執務室に通えば、ルイスと遊びながらもおとなしくなってくれると思う。
「お二人のお世話は私にお任せくださいね!」
「ふふ、ルイス、ありがとう。頼りにしてるよ」
すでにルミシャンスの遊び相手はお手の物になっているルイスの言葉に、スノウは微笑みながら頷く。
スノウ自身が二人にたくさんの愛を伝えるために触れ合う時間をとっているけれど、ルイスの助けがなければ今頃きっと疲れきっているだろう。
ルミシャンスの予想外な行動に振り回されて、体力を消耗してしまうのはいつものことだから。
(子育てって大変なんだなぁ)
そう改めて思ったスノウは、母も昔そんな風に思っていたのだろうかと首を傾げて、「いや、僕はルミシャンスほど予想外な行動なんてしていなかったはず……」と呟いた。
大量の雪うさぎが家を取り囲んでいる状況に母が仰天している様子が脳裏に浮かんで、その声は少し弱々しくなってしまったのは事実だ。
お寝坊さん気質はスノウ由来ではないと思うけれど、好奇心旺盛なところはもしかしたらスノウ譲りなのかもしれない。
そう考えると、ルイスの慣れた様子にも納得がいってしまった。
(……よし、たまにはルイスを労おう)
そう心に決めて、スノウは久しぶりに執務室の扉をくぐった。
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