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続々.雪豹くんと新しい家族
3-51.夜明けを待つ
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夜更け。
スノウは胸に渦巻く思いを抱えて、窓際のソファに座り、星空を眺めていた。
ロウエンとマルモが話す場に立ち会い、様々な感情が揺さぶられた。そして、スノウとアークの関係にも、思考が繋がっていく。
「スノウ様、お身体冷えていませんか?」
ルイスがせっせと膝掛けやハーブティーを持ってくる。この部屋は適温に保たれているのだから、そう気遣う必要はないのに。
でも、それはルイスなりにスノウの心を思いやってくれた結果だ。そう分かるから心が温かくなる。
「——私に何かお話になりたいことがありますか?」
話の水を向けてくれたルイスに、スノウは静かに首を横に振る。
まだ言語化できる程、スノウの感情は明確な形をとっていなかった。
「アークは……いつ帰ってくるかなぁ」
「今日はロウエン様が長く席を外すことになりましたからね。長引くかもしれません。聞いてまいりましょうか?」
「ううん。……でも、帰ってくるまで、待ってる」
空で星が瞬く。それを見ていると、少し心が安らぐ気がした。星の一つ一つに、誰かの魂が宿っている気がする。
もしかしたら、ロウエンのかつての番も。今夜はロウエンを見守って微笑んでいるかもしれない。
スノウはその女性に会ったことはないけれど、素敵な人なのだと思う。ロウエンがあれだけ思い続けているのだから。
そんな女性なら、きっとロウエンの新たな歩みを祝福してくれるだろう。
勝手な幻想だと分かっている。でも、そうあってほしいと、願ってやまない。
どれほどの時間が過ぎただろうか。
静かに付き合うルイスの気配さえ忘れた頃に、愛しさがつのる香りが漂った。
「アーク……」
「ただいま。まだ寝ていなかったのか」
後ろから抱きしめられて、スノウはたくましい腕に頬ずりした。
この腕に包み込まれると、何も苦しまず悲しむことなくいられると、無垢に信じられる。
「おかえりなさい。今夜は、アークの顔を見てから眠りたかったの」
「そうか、待たせてしまって悪かった。早く寝ようか」
こめかみにキスを落とされて、目を伏せる。ちゅ、と微かな音を立てて離れる温もりが、恋しくてたまらなかった。
「……運命って、なんなんだろう」
アークに横抱きにされて、首元に腕を回しながらぽつりと呟く。
運命の番。
それはスノウにとってよく知るものであるはずなのに、何も分かっていなかったのだと、マルモの言葉を聞いて気づいた。
運命とはただの本能だと、言ってしまえばそれまでだ。
意志とは何も関係せず、生まれたときから誰かによって決められているだけのもの。そのことに特別性を見出せるのは、運命の番との関係が幸せで溢れているからだ。
「——マルモやロウエンさんにとっても、運命が特別になるのかなぁ」
「なるだろう」
あまりにもあっさりと肯定の言葉が返ってきて、スノウはぱちりと目を瞬かせた。
思考の中を彷徨っていたのが、一気に現実に引き戻された気分になる。
「……なるの?」
「ああ。なる。……運命がただの本能にすぎなくても。出会い、生まれた感情は、いつかは愛へと至る。すでに、マルモがそうであるように。ロウエンだって、そうだ」
アークはロウエンたちのことについて、全て報告を受けているようだ。
力強い笑みを浮かべて断言し、スノウの頬に口づけを落とす。ついで、鼻に噛むように触れると、唇が塞がれた。
「んっ……どうして、分かるの?」
ベッドに優しくおろされて、スノウは横に寝そべるアークを見上げた。
優しい仕草で背を撫でられて、とろとろと眠気が襲ってくる。アークがいれば、スノウはどこでだって眠れそうだ。
「分かるさ。……俺は、ロウエンのことをよく知っている」
ぱちりと瞬いた視界に、アークの悪戯っ子のような笑みが映る。
スノウは思わずふふっと笑った。
「仲がいいの、否定するのに?」
「仲がいいわけじゃないからな。腐れ縁というものだ。あいつは今までも、これからも、俺を支えてくれる」
「……うん、そうだね。これからも、ずっと」
きっと、スノウたちと同じくらい長く、傍にいてくれるはずだ。マルモと一緒に。
「既に片鱗は見えている」
「あ、やっぱり、そう?」
アークと間近で見つめ合い、鼻をすり合わせてクスクスと笑う。
脳裏に、マルモを見つめるロウエンの瞳が思い浮かんだ。遠くない未来で、そこに溢れんばかりの愛が満ちる。それが容易に想像できる。
「——幸せいっぱいになってほしいなぁ」
「俺の番が望むなら、力の限りそうなるよう努めよう。さしあたっては、あいつの仕事を軽くしてやるか」
しかたなさそうに息を吐くアークの頬を撫で、スノウはいたわりの思いを込めたキスを贈った。
「僕も、手伝う」
「スノウは、ここを守るのに努めてくれ」
優しくお腹を撫でられて、きょとんとした後に、自然と微笑みが浮かんだ。
ふっくらとしたそこには、スノウとアークの愛の証が詰まってる。
「……うん。早く、会いたいなぁ」
どこかで子が鳴く声がした気がする。
その甘えた響きに幸福感がつのって、スノウは微笑みながら目を閉じた。
——卵に出会えるのは、もうすぐだ。
スノウは胸に渦巻く思いを抱えて、窓際のソファに座り、星空を眺めていた。
ロウエンとマルモが話す場に立ち会い、様々な感情が揺さぶられた。そして、スノウとアークの関係にも、思考が繋がっていく。
「スノウ様、お身体冷えていませんか?」
ルイスがせっせと膝掛けやハーブティーを持ってくる。この部屋は適温に保たれているのだから、そう気遣う必要はないのに。
でも、それはルイスなりにスノウの心を思いやってくれた結果だ。そう分かるから心が温かくなる。
「——私に何かお話になりたいことがありますか?」
話の水を向けてくれたルイスに、スノウは静かに首を横に振る。
まだ言語化できる程、スノウの感情は明確な形をとっていなかった。
「アークは……いつ帰ってくるかなぁ」
「今日はロウエン様が長く席を外すことになりましたからね。長引くかもしれません。聞いてまいりましょうか?」
「ううん。……でも、帰ってくるまで、待ってる」
空で星が瞬く。それを見ていると、少し心が安らぐ気がした。星の一つ一つに、誰かの魂が宿っている気がする。
もしかしたら、ロウエンのかつての番も。今夜はロウエンを見守って微笑んでいるかもしれない。
スノウはその女性に会ったことはないけれど、素敵な人なのだと思う。ロウエンがあれだけ思い続けているのだから。
そんな女性なら、きっとロウエンの新たな歩みを祝福してくれるだろう。
勝手な幻想だと分かっている。でも、そうあってほしいと、願ってやまない。
どれほどの時間が過ぎただろうか。
静かに付き合うルイスの気配さえ忘れた頃に、愛しさがつのる香りが漂った。
「アーク……」
「ただいま。まだ寝ていなかったのか」
後ろから抱きしめられて、スノウはたくましい腕に頬ずりした。
この腕に包み込まれると、何も苦しまず悲しむことなくいられると、無垢に信じられる。
「おかえりなさい。今夜は、アークの顔を見てから眠りたかったの」
「そうか、待たせてしまって悪かった。早く寝ようか」
こめかみにキスを落とされて、目を伏せる。ちゅ、と微かな音を立てて離れる温もりが、恋しくてたまらなかった。
「……運命って、なんなんだろう」
アークに横抱きにされて、首元に腕を回しながらぽつりと呟く。
運命の番。
それはスノウにとってよく知るものであるはずなのに、何も分かっていなかったのだと、マルモの言葉を聞いて気づいた。
運命とはただの本能だと、言ってしまえばそれまでだ。
意志とは何も関係せず、生まれたときから誰かによって決められているだけのもの。そのことに特別性を見出せるのは、運命の番との関係が幸せで溢れているからだ。
「——マルモやロウエンさんにとっても、運命が特別になるのかなぁ」
「なるだろう」
あまりにもあっさりと肯定の言葉が返ってきて、スノウはぱちりと目を瞬かせた。
思考の中を彷徨っていたのが、一気に現実に引き戻された気分になる。
「……なるの?」
「ああ。なる。……運命がただの本能にすぎなくても。出会い、生まれた感情は、いつかは愛へと至る。すでに、マルモがそうであるように。ロウエンだって、そうだ」
アークはロウエンたちのことについて、全て報告を受けているようだ。
力強い笑みを浮かべて断言し、スノウの頬に口づけを落とす。ついで、鼻に噛むように触れると、唇が塞がれた。
「んっ……どうして、分かるの?」
ベッドに優しくおろされて、スノウは横に寝そべるアークを見上げた。
優しい仕草で背を撫でられて、とろとろと眠気が襲ってくる。アークがいれば、スノウはどこでだって眠れそうだ。
「分かるさ。……俺は、ロウエンのことをよく知っている」
ぱちりと瞬いた視界に、アークの悪戯っ子のような笑みが映る。
スノウは思わずふふっと笑った。
「仲がいいの、否定するのに?」
「仲がいいわけじゃないからな。腐れ縁というものだ。あいつは今までも、これからも、俺を支えてくれる」
「……うん、そうだね。これからも、ずっと」
きっと、スノウたちと同じくらい長く、傍にいてくれるはずだ。マルモと一緒に。
「既に片鱗は見えている」
「あ、やっぱり、そう?」
アークと間近で見つめ合い、鼻をすり合わせてクスクスと笑う。
脳裏に、マルモを見つめるロウエンの瞳が思い浮かんだ。遠くない未来で、そこに溢れんばかりの愛が満ちる。それが容易に想像できる。
「——幸せいっぱいになってほしいなぁ」
「俺の番が望むなら、力の限りそうなるよう努めよう。さしあたっては、あいつの仕事を軽くしてやるか」
しかたなさそうに息を吐くアークの頬を撫で、スノウはいたわりの思いを込めたキスを贈った。
「僕も、手伝う」
「スノウは、ここを守るのに努めてくれ」
優しくお腹を撫でられて、きょとんとした後に、自然と微笑みが浮かんだ。
ふっくらとしたそこには、スノウとアークの愛の証が詰まってる。
「……うん。早く、会いたいなぁ」
どこかで子が鳴く声がした気がする。
その甘えた響きに幸福感がつのって、スノウは微笑みながら目を閉じた。
——卵に出会えるのは、もうすぐだ。
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