上 下
153 / 251
続々.雪豹くんと新しい家族

3-13.求め合う(★)

しおりを挟む
 溢れる香りが混じり合う。
 でも、もっとアークを感じたくて、大きな背中に縋りついた。

「ん、んぅ……っ」

 重なる口の端から唾液がこぼれる。それを拭い取る余裕なんてない。
 くちゅくちゅ、と淫らな音が耳まで犯すようだった。
 服を剥ぎ取る手の動きに合わせて身じろぎする。

「ふっ……どうした?」
「あーく……もっと、ちょうだい……」

 アークとスノウを遮るものは何もいらない。
 震える手でアークのシャツのボタンを探る。どうしてこんなに脱がせにくい服を着ているんだろう。

 むぅ、と尖らせた唇に、アークが噛みついてきた。なんだか楽しそうな顔をしている。
 苛立っていた心が、それだけで平らにならされるようだった。
 アークが楽しいなら、スノウも楽しい。

「ふふ……アーク、自分で……脱いで、っ」

 キスの合間に囁くと、アークの眉がひょいと上がった。

「なんだ、脱がせてくれないのか」
「ん、……破いて、いいの?」
「いいぞ」

 パチリと瞬く。予想外の返事だった。
 アークが期待するように微笑んでいる。その目に淫蕩な色が滲んでいるから、スノウが服を破くという行為に、淫らな意味合いがあるみたいだ。
 あいにくと、経験不足でスノウは理解できないのだけれど、アークが望んでいるのなら否やはない。

「んん、……ね、こっち、寝て」
「それはいいが……」

 不思議そうな顔で隣に寝転んだアークの腰に乗りかかる。そして、パチリと瞬いた夕陽に微笑み掛けて、シャツに手を伸ばした。

「ふふ、僕、アークを見下ろしてるの」
「そうだな?」

 アークはよく分かっていない顔だ。でも、スノウは楽しくて仕方ない。
 ベッドに居るときはたいていアークがスノウを見下ろす。スノウが組み敷かれる体勢だ。
 そのことに不満はなかったけれど、こうしてアークの自由を拘束して見下ろすのは不思議と満足感がある。

「破けるかな~」
「楽しそうだな。可愛い」

 シャツの襟元に手を掛けると、アークに頬をくすぐられた。
 言葉通り愛おしそうな眼差しに、心がふわふわと温かくなる。

「ん、もっと言って」
「スノウは可愛い。俺の運命。愛しい番――」

 ねだればねだるだけ、たくさんの愛の言葉が紡がれる。
 キスも言葉もたくさんほしい。口が一つしかないのが残念だ。

 アークの口の端にちゅ、と口づけると、すかさず噛みつかれた。スノウの柔らかい唇を味わうようにもぐもぐと食べて、熱い舌が侵入してくる。

「んっ……だぁめ、脱がせ、られない、っ」
「スノウが早くしてくれないから」

 顔を背けても力強い手で引き戻されて、また食べられる。
 アークの口づけはスノウを蕩かせてしまうから厄介だ。頭がほわほわして何も考えられなくなってしまう。

「ん、ぁ……んぅ……っ」

 襟元に掛けた手に力を籠める。
 ぷつ、と音がしてボタンが転がっていった。思っていたより簡単にシャツって破けるみたい。

「ふ、さすが獣人。魔力を主に使う雪豹といえども、力は強いな」
「……ん、ぼく、つよい……?」

 ぼんやりとした頭でなんとかアークの言葉を咀嚼する。
 最後のボタンがどこかにいって、現れた逞しい身体にスノウはうっとりと抱きついた。

 肌同士が触れて境界線がなくなる。香りが混ざり合い一つになる感覚が好きだ。
 もっともっとたくさんほしい。

「あぁ、強くなった。……そろそろ、体力もついてきたんじゃないか」
「……ん、僕、つよい」

 褒められて口元が緩む。
 アークに認められるのが一番嬉しい。

 ちゅ、ちゅ、とアークの胸元に口づけて、時々甘噛みする。微かに残る痕に、心がぞわりと蠢いた。
 嬉しくて楽しくて、それだけじゃない感情が心に満ちてくる。

「おっと……マーキングか。……そうだな。俺はスノウのものだから、たくさん付けていいぞ」
「ぅん、たくさん、つける……」

 アークの白い肌に赤い痕が残る。
 それは新雪に足跡を残すような楽しさと同時に、アークへの愛しさを感じさせた。

「……スノウばかりではずるいから、俺もするけどな」
「んっ!? ぁ、やぁっ」

 ぎゅっとお尻が掴まれて、後孔を指でくすぐられる。中から溢れ出していたものがクチュクチュと湿った音を立てた。
 ビリビリと痺れるような甘やかで強い刺激が身体を走る。
 思わずアークの身体に縋りついて、くったりと身を預けた。せっかくアークの身体を楽しんでいたところだったのに、ひどい。

「み、ぁ……ぼく、っ……そんな、こと、してなぃっ」
「ん? スノウが俺に痕を残して独占欲や征服欲を満たすように、俺も、スノウのここを可愛がって楽しむんだよ」

 愉悦の滲む声で囁かれる。
 耳を食まれて、身体が震えた。あっさりとアークに主導権を奪われて、スノウは喘ぐしかない。
 身体を這う手の熱さに、耳に注ぎ込まれる声の色っぽさに、早々に白旗を上げた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい

白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。 村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。 攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

巻き込まれ異世界転移者(俺)は、村人Aなので探さないで下さい。

はちのす
BL
異世界転移に巻き込まれた憐れな俺。 騎士団や勇者に見つからないよう、村人Aとしてスローライフを謳歌してやるんだからな!! *********** 異世界からの転移者を血眼になって探す人達と、ヒラリヒラリと躱す村人A(俺)の日常。 イケメン(複数)×平凡? 全年齢対象、すごく健全

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

処理中です...