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続.雪豹くんと魔王さま

2-29.白狼の里の光⑥(☆)

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 触れ合う唇から熱いものが伝わってくる。身体の中心から温めるような、不思議な感覚が押し寄せてきた。

「ん……?」

 スノウが小さく首を傾げると、アークが唇を合わせたまま僅かに微笑んだ。

 唇を食まれて、甘く痺れるような感覚にスノウの思考が鈍る。
 ただでさえ、疲労困憊のような状態だったのだ。スノウの感じるところを知り尽くしたアークに勝てるわけがない。

「んん……ぁ……」

 今いる場所がどこだとか。状況がどうだとか。
 気にするべきことはたくさんあるはずなのに、スノウは思考を放棄していた。アークが与えてくれるものを余さず受け取り、味わい尽くしたい。

「思い出したんだが」
「……なぁに……?」

 ワンテンポ遅れて返事をする。でも、何を言われているかあまり理解していなかった。
 ただ、アークの低く甘い声音の心地よさに、うっとりと聞き惚れる。

「魔力譲渡は、体液が一番効率が良くて、お互いの身体に負担が少ないんだ」
「……そうなんだ……?」
「だから、もっとたくさん触れ合おう」
「うん……?」

 ぼんやりする思考の中で、スノウは無意識で頷いた。アークがそれを望んでいる気がしたからかもしれない。

「……いい子だ」

 頬にキスされる。軽く啄まれる感触がくすぐったくて、スノウはふふっと小さく微笑んだ。
 重い手を伸ばしてアークに縋りつく。

「もっと、いっぱいして……」
「っ……ああ、もちろん」

 そう言われた途端、唇に噛みつかれた。
 戯れ合うような仕草から急激に変わり、スノウは少し驚いてしまう。それによって、ようやく少し思考力が戻ってきたけれど、時はもう遅し。
 許可を得たアークは嬉々と攻め立ててきて、スノウには抵抗するすべはなかった。

「んっ!? ぁ……ふ、……ゃ」

 合わさったところからクチュクチュと音がするのがひどく淫らだ。
 何度繰り返しても、恥ずかしさが消えることはない。でも、アークの愛情をたくさん感じるから、嬉しくてたまらないのも事実。

 今日はいつもと違う感覚も混ざっていた。
 アークから溢れてくる唾液を飲み込む度に、ドクリと身体の芯が拍動するような心地がする。それは全身に温もりを届け、心地よさと同時に耐え難いほどの快感をもたらした。

「あ、ぁ……!」

 唇をふりほどき、スノウは大きく喘いだ。
 身体が熱い。自分からふわりと香りが漂い出ていくのを感じる。その香りはアークが放つ香りと混じり合い、さらにスノウの快感を煽るような淫猥な香りへと変化する。

「……凄いな。発情期みたいだ」
「ん、ん……身体、熱い、よぉ……」

 熱に浮かされて、スノウは必死にアークに縋りついた。
 今スノウを助けてられるのはアークだけだ。たとえその熱を煽っているのがアークだとしても、番だけがおさめることができる。

「スノウの身体がまだまだたくさんの魔力を求めてるんだ。十分回復できるまで、熱はおさまらない」
「じゃあ……もっと、魔力、ちょうだい……」

 潤む視界でアークを見つめる。
 すでに身体の重さすら忘れ去っていた。今はただ、アークがほしくてたまらない。

「……ああ、たくさんあげよう」

 男らしい魅力にあふれる笑みを浮かべたアークが、ペロリと唇を舐めた。赤い唇が色っぽい。
 そこに目が惹きつけられたスノウは、首元に回した腕に力を籠めて、アークを引き寄せた。

「ん……ふ……」

 舌でアークの口の中を探る。見つけ出した舌を絡め取るけれど、アークのように上手くできない。
 アークはそんな拙いスノウの仕草を暫く楽しんでいるようだった。

「ぁっ……んん!」

 不意にアークの舌が蠢く。あっさりとスノウの舌が絡め取られて、吸い付いてきた。
 じわじわと押し寄せるように快感が溢れる。

 唇を合わせ、舌を絡め合わせるだけで、愛情で満たされるような心地だ。その幸福感に、スノウはうっとりと目を伏せた。

「……キスだけでは、おさまりそうにないな」

 暫くして僅かに唇を離したアークが、目を細め呟く。
 スノウはぼんやりとその顔を見上げた。

 何を言われているかあまり理解できないけれど、身を任せることに躊躇いはない。だって、アークがスノウの意に反するようなことをするわけがないのだから。

「……んん……アーク、だいすき……」

 スノウが溢れ出す感情のままに呟くと、アークの顔が喜びで輝く。
 そんな表情を見れば、スノウの方こそ嬉しくてたまらない。番であるアークの喜びは、スノウの喜びでもあるのだ。

「俺も、愛してる……」
「ん……ぁ、あん……」

 再び合わさる唇。
 服の裾から這い入ってくる指先に快感が煽られて、スノウは甘く喘いだ。

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