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続.雪豹くんと魔王さま
2-1.新たな始まり①
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スノウの一日は、アークを起こすことから始まる。
「アーク~、起きようよぉ」
「んー……」
ペシペシ。
身体に絡みついている腕を叩いたり揺さぶったり。それでダメなら、身を捩って腕の中から抜け出そうと頑張ってみる。
これまで何度試しても成功したことはないけれど、挑戦あるのみ! いつかきっとできるはず。
「むぅ……」
でも、今日も敗北感を味わうことになった。拗ねていると、喉の奥で笑うようなクツクツという音が聞こえるのと同時に、微かに身体が揺れる。
「あっ、起きてるでしょ。笑ってるもんね?」
「いや、寝てる」
「応えちゃってるよ」
目を瞑ったまま雑な寝たふりを見せるアークに呆れる。
アークは別に朝が苦手というわけではない。ただ、目覚めのキスを欲しがっているだけなのだ。つまり、これはアークなりの甘え。
「――まったく、もう……」
カッコいいだけではなくて、可愛くもあるなんて、反則じゃないかな。こんな番の姿を見て、甘やかさないでいられるわけがないんだから。
思わず口元を綻ばせてアークを見つめる。
すると、スノウの気持ちを察したのか、アークが僅かに顔を寄せてきた。それに合わせて首を伸ばし、ちょん、と唇を触れ合わせる。
「ん……おはよう、アーク。もう朝だよ」
「おはよう。スノウが起こしてくれたおかげで、朝から幸せな気分だ」
瞼が開かれ、夕陽色の瞳が覗く。
スノウはこの瞬間が大好きだ。温かみのある優しい目に自分が映っているのを見ると、心がぽかぽかしてくる。
「うん、僕も幸せ」
スノウがくふくふと笑うと、アークの顔も綻ぶ。
毛布に包まって、足を絡めたり軽くキスを交わしたり。戯れのような触れ合いが心地よい。
「――でも、だーめ」
服の下に忍び込んできた手を捕まえる。アークの唇に噛みつくようにキスをしたら、遊びはおしまいだ。
止めるタイミングを間違ったら、朝から危ない雰囲気になってしまう。そうすると、ロウエンが怖い顔で寝室に乗り込んでくるのだ。「執務の時間ですよ」って。
ロウエンがスノウに怒ることはないから、それを恐れているわけではない。アークに抱かれているところを見られるのが恥ずかしいのだ。
「スノウ……少しくらい、いいんじゃないか?」
「少しで終わらないもん。それに今日はお仕事いっぱいあるんだよ。昨日、僕が書類の仕分けをしたんだから、ちゃんと確認して」
身体を起こして、拗ねた表情のアークの腕を引っ張る。
大人しく起き上がるアークに、スノウはにこりと微笑みかけて朝の支度を始めた。
「アークの今日の服はこれだよ」
服を手渡し、自分も着替える。このとき要注意なのはアークの悪戯だ。アークは着替えを邪魔するように手を出してくるから、頑張って逃げないといけない。
逃げられなかったら、ベッドに引きずり込まれて、これまたロウエンに怒られることになってしまう。
「午前中に、精霊族の長さんが謁見に来るんだって」
「……ほー」
諦めずに虎視眈々と隙を窺うアークの意識を逸らすため、今日の仕事のスケジュールを話す。スノウは魔王であるアークの秘書なので、こうしたスケジュール管理もしているのだ。
ちゃんと聞いているのか、時々疑問に思ってしまうけれど、ロウエンが言うにはこれで十分らしい。スノウが言うことなら、アークが聞き逃すことはないそうだ。
「ほらほら、早く着替えて、朝ご飯食べるよー」
「はぁ……二人きりの時間はもう終わりか……」
自分の着替えが終わったら、アークの支度を手伝って、隣の部屋で朝ご飯の準備を整えているだろうルイスのもとへ行く。
しょんぼりとしているアークは可哀想だけれど、仕方ないのだ。予定が詰まっているのだから、のんびりしている暇はない。
「――おはようございます、陛下、スノウ様」
にこりと笑うルイスに挨拶を返し、テーブルにつく。美味しそうな匂いに、お腹がクゥと鳴った。
スノウがさすさすとお腹を撫でていると、アークが蕩けるような笑みを浮かべて、ハムを差し出してくる。
こうやってご飯を番に食べさせるのは、愛情表現なんだって。嬉しくて、スノウもしてあげたくなる。
「朝から甘々イチャイチャですね……」
スノウたちを眺めるルイスは、朝からお疲れな様子だ。
「うん、だって、番だもの」
「そうだな。番だから、当然だ」
ご満悦な笑みを浮かべてアークがスノウを抱きしめる。
この状態だとご飯が食べられないからちょっと嫌。でも、温もりから離れがたくて、悩ましい。
スノウは毎朝、そんな葛藤と戦ってから、なんとかアークを執務室に連れて行くのだ。
「アーク~、起きようよぉ」
「んー……」
ペシペシ。
身体に絡みついている腕を叩いたり揺さぶったり。それでダメなら、身を捩って腕の中から抜け出そうと頑張ってみる。
これまで何度試しても成功したことはないけれど、挑戦あるのみ! いつかきっとできるはず。
「むぅ……」
でも、今日も敗北感を味わうことになった。拗ねていると、喉の奥で笑うようなクツクツという音が聞こえるのと同時に、微かに身体が揺れる。
「あっ、起きてるでしょ。笑ってるもんね?」
「いや、寝てる」
「応えちゃってるよ」
目を瞑ったまま雑な寝たふりを見せるアークに呆れる。
アークは別に朝が苦手というわけではない。ただ、目覚めのキスを欲しがっているだけなのだ。つまり、これはアークなりの甘え。
「――まったく、もう……」
カッコいいだけではなくて、可愛くもあるなんて、反則じゃないかな。こんな番の姿を見て、甘やかさないでいられるわけがないんだから。
思わず口元を綻ばせてアークを見つめる。
すると、スノウの気持ちを察したのか、アークが僅かに顔を寄せてきた。それに合わせて首を伸ばし、ちょん、と唇を触れ合わせる。
「ん……おはよう、アーク。もう朝だよ」
「おはよう。スノウが起こしてくれたおかげで、朝から幸せな気分だ」
瞼が開かれ、夕陽色の瞳が覗く。
スノウはこの瞬間が大好きだ。温かみのある優しい目に自分が映っているのを見ると、心がぽかぽかしてくる。
「うん、僕も幸せ」
スノウがくふくふと笑うと、アークの顔も綻ぶ。
毛布に包まって、足を絡めたり軽くキスを交わしたり。戯れのような触れ合いが心地よい。
「――でも、だーめ」
服の下に忍び込んできた手を捕まえる。アークの唇に噛みつくようにキスをしたら、遊びはおしまいだ。
止めるタイミングを間違ったら、朝から危ない雰囲気になってしまう。そうすると、ロウエンが怖い顔で寝室に乗り込んでくるのだ。「執務の時間ですよ」って。
ロウエンがスノウに怒ることはないから、それを恐れているわけではない。アークに抱かれているところを見られるのが恥ずかしいのだ。
「スノウ……少しくらい、いいんじゃないか?」
「少しで終わらないもん。それに今日はお仕事いっぱいあるんだよ。昨日、僕が書類の仕分けをしたんだから、ちゃんと確認して」
身体を起こして、拗ねた表情のアークの腕を引っ張る。
大人しく起き上がるアークに、スノウはにこりと微笑みかけて朝の支度を始めた。
「アークの今日の服はこれだよ」
服を手渡し、自分も着替える。このとき要注意なのはアークの悪戯だ。アークは着替えを邪魔するように手を出してくるから、頑張って逃げないといけない。
逃げられなかったら、ベッドに引きずり込まれて、これまたロウエンに怒られることになってしまう。
「午前中に、精霊族の長さんが謁見に来るんだって」
「……ほー」
諦めずに虎視眈々と隙を窺うアークの意識を逸らすため、今日の仕事のスケジュールを話す。スノウは魔王であるアークの秘書なので、こうしたスケジュール管理もしているのだ。
ちゃんと聞いているのか、時々疑問に思ってしまうけれど、ロウエンが言うにはこれで十分らしい。スノウが言うことなら、アークが聞き逃すことはないそうだ。
「ほらほら、早く着替えて、朝ご飯食べるよー」
「はぁ……二人きりの時間はもう終わりか……」
自分の着替えが終わったら、アークの支度を手伝って、隣の部屋で朝ご飯の準備を整えているだろうルイスのもとへ行く。
しょんぼりとしているアークは可哀想だけれど、仕方ないのだ。予定が詰まっているのだから、のんびりしている暇はない。
「――おはようございます、陛下、スノウ様」
にこりと笑うルイスに挨拶を返し、テーブルにつく。美味しそうな匂いに、お腹がクゥと鳴った。
スノウがさすさすとお腹を撫でていると、アークが蕩けるような笑みを浮かべて、ハムを差し出してくる。
こうやってご飯を番に食べさせるのは、愛情表現なんだって。嬉しくて、スノウもしてあげたくなる。
「朝から甘々イチャイチャですね……」
スノウたちを眺めるルイスは、朝からお疲れな様子だ。
「うん、だって、番だもの」
「そうだな。番だから、当然だ」
ご満悦な笑みを浮かべてアークがスノウを抱きしめる。
この状態だとご飯が食べられないからちょっと嫌。でも、温もりから離れがたくて、悩ましい。
スノウは毎朝、そんな葛藤と戦ってから、なんとかアークを執務室に連れて行くのだ。
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