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三章.雪豹の青年
52.雪豹の青年と魔物肉
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「美味しー!」
焼き立ての肉の串焼き。ピジョーという鳥の肉らしい。庶民でも手軽に狩れる鳥らしいが、肉々しい旨味がある。普段アークが狩ってきてくれる肉よりも、噛み応えがあった。
アークも一緒に食べながら、真剣な表情で何事か考えているようだった。
「この鳥なら、スノウの狩りの練習にもいいかもな」
「ほんと!? 僕、がんばるね!」
思わず期待で目が煌めいた。アークがスノウの狩りを前向きに考えていてくれて嬉しい。それに、執務室で話題に出たウサギ狩りよりも、スノウの心情的には鳥を狩る方がいい気がした。
「陛下、番様! 串焼きの後はホットティーはいかがですか? ホットワインもありますよ」
「ああ……ホットティーを二つ」
「ありがとうございます!」
串焼きの店の隣から売り込みがあって、温かいお茶をもらう。
ホットワインというのも気になったけれど、アークはアルコールがあるものをスノウにくれない。成人してから、ということらしい。ホットワインにはほとんどアルコールが残ってないらしいのに。
「温かいねぇ」
「ああ、口直しにもちょうどいいな」
お茶を飲みながら周囲を見渡す。
まだお腹には余裕がある。次は何を食べようか。
考えていたスノウの鼻先を、不思議な匂いがくすぐった。出所を探って匂いを辿る。
「……あっち、いい匂いがするよ!」
「ん、なんだ? スノウが好みそうなものか」
首を傾げているアークの腕を引いて、人混みを掻き分けて進んだ。匂いはどんどん強くなる。
「これ、食べる!」
「……クラーケン焼きか。また、特殊なものを選んだな。意外と海鮮系も好きなのか」
白いプリプリとした身が、串に刺されて炭焼きされている。上から茶色のタレを塗られて再び焼かれ、香ばしい匂いが辺りに漂っていた。
思わず凝視してしまう。口内に唾液が溢れた。
スノウの食欲はアークにも伝わったのか、笑み混じりの声でクラーケン焼きを買ってくれる。
「毎度あり!」
「ここは海から遠いが、もしかしてお前は鳥の獣人か?」
「そうですよ! 私の翼があれば、海まで一飛び!」
クラーケン焼きを渡してくれた店主が、仕舞っていた翼を示した。
「クラーケンは海のものなの?」
「そうだ。海は歩くとここから一週間はかかるか?」
「それくらいでしょうね。クラーケンはこんな魔物ですよ」
店主が絵を取り出した。それを見た瞬間、スノウの身体が固まる。
三角の頭か胴体の下に、腕か足か分からないものが八本くらいある。あまり見目がいいものではない。
思わず、焼かれた切り身をまじまじと見下ろした。この切り身はどの部分なのだろう。
「スノウ? 冷えてしまうぞ」
「……うん」
勇気を奮い立たせて、端に噛みつく。弾力のある身だった。タレの甘じょっぱい味の後に、不思議な旨味が口内に広がる。
元々の見た目はともかく、味はスノウの好みだ。
「――美味しい。けど、僕はこれを狩りに行かなくてもいいかな!」
「ははっ、そうか。クラーケンは見た目が苦手な者も多いし、それなりに強い魔物だからな。元々スノウを連れて狩りに行くつもりはなかったぞ」
「それならいいんだけど」
スノウは密かにホッと息をついて、心置きなくクラーケン焼きを味わった。
焼き立ての肉の串焼き。ピジョーという鳥の肉らしい。庶民でも手軽に狩れる鳥らしいが、肉々しい旨味がある。普段アークが狩ってきてくれる肉よりも、噛み応えがあった。
アークも一緒に食べながら、真剣な表情で何事か考えているようだった。
「この鳥なら、スノウの狩りの練習にもいいかもな」
「ほんと!? 僕、がんばるね!」
思わず期待で目が煌めいた。アークがスノウの狩りを前向きに考えていてくれて嬉しい。それに、執務室で話題に出たウサギ狩りよりも、スノウの心情的には鳥を狩る方がいい気がした。
「陛下、番様! 串焼きの後はホットティーはいかがですか? ホットワインもありますよ」
「ああ……ホットティーを二つ」
「ありがとうございます!」
串焼きの店の隣から売り込みがあって、温かいお茶をもらう。
ホットワインというのも気になったけれど、アークはアルコールがあるものをスノウにくれない。成人してから、ということらしい。ホットワインにはほとんどアルコールが残ってないらしいのに。
「温かいねぇ」
「ああ、口直しにもちょうどいいな」
お茶を飲みながら周囲を見渡す。
まだお腹には余裕がある。次は何を食べようか。
考えていたスノウの鼻先を、不思議な匂いがくすぐった。出所を探って匂いを辿る。
「……あっち、いい匂いがするよ!」
「ん、なんだ? スノウが好みそうなものか」
首を傾げているアークの腕を引いて、人混みを掻き分けて進んだ。匂いはどんどん強くなる。
「これ、食べる!」
「……クラーケン焼きか。また、特殊なものを選んだな。意外と海鮮系も好きなのか」
白いプリプリとした身が、串に刺されて炭焼きされている。上から茶色のタレを塗られて再び焼かれ、香ばしい匂いが辺りに漂っていた。
思わず凝視してしまう。口内に唾液が溢れた。
スノウの食欲はアークにも伝わったのか、笑み混じりの声でクラーケン焼きを買ってくれる。
「毎度あり!」
「ここは海から遠いが、もしかしてお前は鳥の獣人か?」
「そうですよ! 私の翼があれば、海まで一飛び!」
クラーケン焼きを渡してくれた店主が、仕舞っていた翼を示した。
「クラーケンは海のものなの?」
「そうだ。海は歩くとここから一週間はかかるか?」
「それくらいでしょうね。クラーケンはこんな魔物ですよ」
店主が絵を取り出した。それを見た瞬間、スノウの身体が固まる。
三角の頭か胴体の下に、腕か足か分からないものが八本くらいある。あまり見目がいいものではない。
思わず、焼かれた切り身をまじまじと見下ろした。この切り身はどの部分なのだろう。
「スノウ? 冷えてしまうぞ」
「……うん」
勇気を奮い立たせて、端に噛みつく。弾力のある身だった。タレの甘じょっぱい味の後に、不思議な旨味が口内に広がる。
元々の見た目はともかく、味はスノウの好みだ。
「――美味しい。けど、僕はこれを狩りに行かなくてもいいかな!」
「ははっ、そうか。クラーケンは見た目が苦手な者も多いし、それなりに強い魔物だからな。元々スノウを連れて狩りに行くつもりはなかったぞ」
「それならいいんだけど」
スノウは密かにホッと息をついて、心置きなくクラーケン焼きを味わった。
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