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一章.雪豹の子

12.雪豹の子と探検

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 アークのおかげで心安らかに睡眠をとれるようになって、スノウは徐々に元の活発さを取り戻してきた。自分で部屋から出ることはないものの、ベッドからおりて探索に余念がない。

 スノウのために用意された部屋には、大きなベッドの他に、クローゼットやソファ、本棚、書き物机などがある。
 クローゼットにはいつ人型になっても大丈夫なようにと、各種サイズの服が掛けられていた。それでもあまりに空いたスペースが広い。

(クローゼット大きいけど、そんなに洋服がいるのかな? 季節ごとに三着あれば十分よって母様は言っていたけど)

 スノウにとっては、既に部屋のようなクローゼット。ここが洋服で埋まる日が来るのかと首を傾げてしまう。
 スノウは獣型になれば洋服はいらない。洗濯物が乾いてなくて着替えがなくてもさほど困らないのだ。

「早く人型になれるといいですねぇ。陛下は洋服をお贈りしたくて仕方ないらしいですよ」
(なんで? アークは洋服が好きなの?)

 最近は毎日スノウを抱き締めて寝てくれるアーク。スノウもアークもその時間を楽しんでいた。
 今朝もご機嫌なアークを見送ったばかりだけど、アークが洋服好きだとは知らなかった。むしろ毎日同じような黒い服ばかり着ていて、洋服に関心がないのだと思っていた。

「動き回ってお疲れではないですか? ソファでお休みします?」
(僕、赤ちゃんじゃないよ。もっと歩けるよ)

 思っているだけでは伝わらず、スノウはルイスに抱かれて大きなソファにのせられる。アークなら寛ぎやすそうな大きなソファは、スノウにとってはベッドのようだ。
 ふわふわした白いクッションが置かれていて、思わず足で踏んで感触を確かめる。包み込むように沈む感触がくせになった。

(気持ちいい……)

 クッションに座り込んで思わずペタリと伏せる。身体に触れる感触が優しくて、気に入った。
 たくさん寝たから眠くなることはなかったので、ぐるりと部屋を見渡してみる。廊下に通じる扉ではなく、もうひとつある扉が気になった。

「……あの扉の先は陛下の部屋ですよ」

 スノウの目線に気づいたルイスが答えてくれた。そう言われてみると、アークは夜あの扉から現れることがある気がする。

(お隣さんなんだ。アークの部屋にも行ってみたいな)

 思い立ったが吉日。ソファからおりて、ちょこちょこと扉に向かう。後ろでルイスが慌てる気配がした。

「え? 陛下の部屋には入れませんよ!」
(どうして?)

 振り返って首を傾げると、ルイスが「ぐぅ……」と呻いて床に膝をつく。体調が悪くなったのかと心配になって、慌てて駆け寄った。

「見返り美人とはこのことか……! 愛らしさが限界突破!」
(なに言ってるの……?)

 最近、ルイスの言葉の意味が分からなくなることが多い。「萌えを学びました」と言われた時が一番分からなかったけど。萌えってなに。里の外にはたくさんの言葉があるものだ。
 とりあえずルイスの体調は悪くなさそうなので、足元に座って宥めるように脚を叩いてあげた。

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