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アナタの目的
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いったいあの男の目的は何だったのだろうか。ドアチェーンをかけた後、悶々と考える。
私を押し倒し、過激、否、性的なスキンシップをしたと思えば、料理を作り、胸に痣を散らす。
この一連の流れに“無理矢理”という言葉が付かなければ、きっと恋人という称号を与えていたところだろう。
あの男が作り、私が食した料理の後片付けを終えると、ポストに入っていた“小さい箱”にそっと触れる。
開けた瞬間爆発、なんてことはないだろうが、やはりあの男が送り付ける物だ、ろくなものではないだろう。控えめに貼られたテープを外し、かぶせ箱の蓋を引き上げる。すると、緩衝材に包まれたさらに小さな箱が入っていた。マトリョーシカか、と思ったがその箱のロゴマークには、見覚えがあり、嫌な予感しかしなかった。その箱を開けると、中からは傷一つないスマートフォンが納められていた。
あの男の言った「持ち運べ」という意味がよくわかった。私のことをもっと手っ取り早くストーカーするつもりなのだろう。しかし、あの男の失敗は、私にこのスマホを渡したことだ。さっそくスマホを起動させる。スマホを購入するには身分証が必要なのは、もはや常識と言って良い。その契約されたスマホを私に渡せば、彼の素性は、すぐに知れる。スマホは、起動するとパスワードを要求された。私は、疑問符を浮かべ、画面を覗き込むと、その要求は消え、メッセージアプリのみがホーム画面に置かれていた。そして、メッセージの受信を知らせるアイコンマーが表示されていた。
おそるおそるそのメッセージを開くと“U”という相手からのメッセージだった。
『これから何かあればここに連絡しろ。余計なことは考えるな。お前は俺以外にも命を狙われる可能性がある。』
この高圧的な文章は、紛れもなくあの男の仕業だ。この場にいれば無理矢理力でねじ伏せられる可能性はあるが、今はその心配はない。この傲慢な男に聞きたいことは山ほどある。でも、今はシンプルに「あなたの目的は?」とその言葉だけを送る。わたしに干渉する理由など、思い浮かばないのだ。
もっと長文のメッセージを送りつけたいところだが、そんなものは無視されるだろう。私は、ぎゅっとスマホの握りしめ、相手からの返事を待つ。ピロン、そう音が鳴り、メッセージが受信したことを知らせる。
『そのうちわかる』
男からのメッセージは、これだけだった。
意味深な言葉に、眉をひそめる。
私はどんなことに巻き込まれるのか、不安の二文字がじんわりと広がっていく。これまでもよくわからない男の存在に不信感があったが、彼の目的が別にあるとするのならば、やはり、この先は、闇だった。それに、命を狙われるなど、そんな言葉を聞いてしまえば、私は平穏な日常を送ることができることさえも怪しい。けれども、このスマホさえ持っていれば、私は、命は助かるのだろうか。男は、私に乱暴をしたことは、紛れもない事実だ。にわかに信じ難いが救世主にもなりうるのか。
悶々と考えながら、与えられたスマホを仕事用のバッグに乱暴に放り込んだ。
私を押し倒し、過激、否、性的なスキンシップをしたと思えば、料理を作り、胸に痣を散らす。
この一連の流れに“無理矢理”という言葉が付かなければ、きっと恋人という称号を与えていたところだろう。
あの男が作り、私が食した料理の後片付けを終えると、ポストに入っていた“小さい箱”にそっと触れる。
開けた瞬間爆発、なんてことはないだろうが、やはりあの男が送り付ける物だ、ろくなものではないだろう。控えめに貼られたテープを外し、かぶせ箱の蓋を引き上げる。すると、緩衝材に包まれたさらに小さな箱が入っていた。マトリョーシカか、と思ったがその箱のロゴマークには、見覚えがあり、嫌な予感しかしなかった。その箱を開けると、中からは傷一つないスマートフォンが納められていた。
あの男の言った「持ち運べ」という意味がよくわかった。私のことをもっと手っ取り早くストーカーするつもりなのだろう。しかし、あの男の失敗は、私にこのスマホを渡したことだ。さっそくスマホを起動させる。スマホを購入するには身分証が必要なのは、もはや常識と言って良い。その契約されたスマホを私に渡せば、彼の素性は、すぐに知れる。スマホは、起動するとパスワードを要求された。私は、疑問符を浮かべ、画面を覗き込むと、その要求は消え、メッセージアプリのみがホーム画面に置かれていた。そして、メッセージの受信を知らせるアイコンマーが表示されていた。
おそるおそるそのメッセージを開くと“U”という相手からのメッセージだった。
『これから何かあればここに連絡しろ。余計なことは考えるな。お前は俺以外にも命を狙われる可能性がある。』
この高圧的な文章は、紛れもなくあの男の仕業だ。この場にいれば無理矢理力でねじ伏せられる可能性はあるが、今はその心配はない。この傲慢な男に聞きたいことは山ほどある。でも、今はシンプルに「あなたの目的は?」とその言葉だけを送る。わたしに干渉する理由など、思い浮かばないのだ。
もっと長文のメッセージを送りつけたいところだが、そんなものは無視されるだろう。私は、ぎゅっとスマホの握りしめ、相手からの返事を待つ。ピロン、そう音が鳴り、メッセージが受信したことを知らせる。
『そのうちわかる』
男からのメッセージは、これだけだった。
意味深な言葉に、眉をひそめる。
私はどんなことに巻き込まれるのか、不安の二文字がじんわりと広がっていく。これまでもよくわからない男の存在に不信感があったが、彼の目的が別にあるとするのならば、やはり、この先は、闇だった。それに、命を狙われるなど、そんな言葉を聞いてしまえば、私は平穏な日常を送ることができることさえも怪しい。けれども、このスマホさえ持っていれば、私は、命は助かるのだろうか。男は、私に乱暴をしたことは、紛れもない事実だ。にわかに信じ難いが救世主にもなりうるのか。
悶々と考えながら、与えられたスマホを仕事用のバッグに乱暴に放り込んだ。
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