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運命の悪戯12

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 天音は、凛太朗と公園に行った翌日、授業と授業の合間の休み時間に職員室へと足を運んだ。担任教師は、自身の机でパソコンを操作しており、天音が来たことには気付いてはいなかった。
 職員室に入室する際は、必ずクラスと名前を名乗らなければならないというルールがあった。それは、職員室は個人情報やテストなどの情報に溢れているためでもあるからだ。天音は、扉を開け、担任教師に向かって、クラスと名前を名乗った。すると、担任教師は顔を上げ、天音の存在に気付くと、慌てて駆け寄ってくる。

 「水瀬さん、いつかいつかと待っていたよ。ここで立ち話も何だから、進路指導室へ行きましょう。」

 そう言い、職員室の隣にある進路指導室へと移動することとなった。

 「どうですか。水瀬さん。」

 担任は、天音の答えを知っているかの声色で聞く。

 「行きます。スイス。両親も賛成でした。……ただ、不安なことがあって、庵原君のことなんですけど。」

 「庵原君ですか。あなたととても仲の良い。」

 「はい。私、中学生の頃、彼に志望校を聞かれて、ここにすると言ったら、彼もそうやって決めちゃったんです。なのに、私が、スイスに留学しちゃったら、すごく嫌な思いをするんじゃないのかって。」

 「嫌な思い、ですか。どうでしょうか。ここに入学したきっかけがあなたであったとしても、入学はもちろん、その後の勉強もついていくのは、軽い気持ちでは到底できないでしょう。それなりの覚悟や目標も必要なはずです。庵原君は、それができている。水瀬さんのそういった心配は杞憂だと、僕自身は思います。」

 「そうですよね。庵原君は、頭がいい。私がいなくても、大丈夫ですよね。出過ぎた真似、しちゃったかもしれません。」

 「そんなことないですよ。人を想う気持ちは、すごく大切なことです。世の中には、そんな当たり前のことができずに、人を傷つけてしまう人もいるのですから。もうすぐ次の授業が始まってしまいますね。手続きは、しておきます。詳細が決まれば、また連絡します。留学時期は、夏休みが明けてすぐだと思っておいてください。夏休みは、日本での思い出を作っておいてくださいね。」

 「ありがとうございます。」

 そう言い、天音は、職員室を後にする。人生に影響をするような、大きな“決断”をしたことで、心が浮くような感覚に陥る。もし、断っていれば、こんな気持ちにならなかったのではないか、しかし、周りが行くことを薦める中で反発などできなかった。天音に残された問題は、凛太朗だ。彼には、はっきりと伝えられてはいない。誰よりも留学について伝えるのが難しい人物だった。天音のことを1番に想い、行動をしてくれる彼が、どう感じるのか。もしかすれば、1番に考えているならば、行くことを喜んでくれるのではないか、もしくは、裏切ったと非難されることとなるのか、どうなるのか今の天音には想像ができない、未知のことだった。
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