67 / 71
想いの文と共に10
しおりを挟む
「苑は何を考えているんだ」
朔は、苑からの文を見つめたまま、怪訝そうな表情をして、近くに立っている桃に言う。
桃は、朔のその言葉を聞き、手紙を覗き見る。
「苑様らしいといえば、らしいです。私だって父親に頬を打たれれば、家を出たくなりますもの」
「桃は出たりしないだろ」
朔は、横目で桃を見る。
「それは……」
桃は、言葉が詰まる。苑を擁護するための言葉が上手く選びきれない。けれども、その様子を察したように朔は続ける。
「でも、まぁ、苑、だからだよな。……どうするかなぁ」
朔は、腕を組み、頭を傾げる。両親へ説明するにしても、父親に関しては何を言っても怒らせてしまうのが目に見えている。これ以上、苑が父親に責められるのは、見たくはなかったし、桃にも見せたくなかった。はぁ、そうため息が溢れたとき、桃が口を開く。
「紅千華先生のところへ行っていると言うことにしておきましょう。また苑様の顔に痣ができるのは見たくありませんわ」
桃は伏せ目がちになり、朔の着物の袖を引く。朔は、それに応えるように桃の肩をそっと抱いた。
朔は、苑からの文を見つめたまま、怪訝そうな表情をして、近くに立っている桃に言う。
桃は、朔のその言葉を聞き、手紙を覗き見る。
「苑様らしいといえば、らしいです。私だって父親に頬を打たれれば、家を出たくなりますもの」
「桃は出たりしないだろ」
朔は、横目で桃を見る。
「それは……」
桃は、言葉が詰まる。苑を擁護するための言葉が上手く選びきれない。けれども、その様子を察したように朔は続ける。
「でも、まぁ、苑、だからだよな。……どうするかなぁ」
朔は、腕を組み、頭を傾げる。両親へ説明するにしても、父親に関しては何を言っても怒らせてしまうのが目に見えている。これ以上、苑が父親に責められるのは、見たくはなかったし、桃にも見せたくなかった。はぁ、そうため息が溢れたとき、桃が口を開く。
「紅千華先生のところへ行っていると言うことにしておきましょう。また苑様の顔に痣ができるのは見たくありませんわ」
桃は伏せ目がちになり、朔の着物の袖を引く。朔は、それに応えるように桃の肩をそっと抱いた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる