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想いの文と共に10

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「苑は何を考えているんだ」
 朔は、苑からの文を見つめたまま、怪訝そうな表情をして、近くに立っている桃に言う。
 桃は、朔のその言葉を聞き、手紙を覗き見る。
「苑様らしいといえば、らしいです。私だって父親に頬を打たれれば、家を出たくなりますもの」
「桃は出たりしないだろ」
 朔は、横目で桃を見る。
「それは……」
 桃は、言葉が詰まる。苑を擁護するための言葉が上手く選びきれない。けれども、その様子を察したように朔は続ける。
「でも、まぁ、苑、だからだよな。……どうするかなぁ」
 朔は、腕を組み、頭を傾げる。両親へ説明するにしても、父親に関しては何を言っても怒らせてしまうのが目に見えている。これ以上、苑が父親に責められるのは、見たくはなかったし、桃にも見せたくなかった。はぁ、そうため息が溢れたとき、桃が口を開く。
「紅千華先生のところへ行っていると言うことにしておきましょう。また苑様の顔に痣ができるのは見たくありませんわ」
 桃は伏せ目がちになり、朔の着物の袖を引く。朔は、それに応えるように桃の肩をそっと抱いた。
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