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第三章 魅了王子は嫌われたい イライアスとシュゼット
21.一触即発、何故煽ったし?(side シュゼット)
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「叔父上?!」
イライアス様の言葉に驚いて、その方の顔をまじまじ見れば。
その方は、国王陛下やイライアス様と、どことなくお顔立ちが似ていらっしゃる印象を受けました。
という事は、この方はもしかして……。
ずっと昔に事故で亡くなった事にされている、王弟殿下ウィリアム様、その方なのでしょうか???
「どうして叔父上が??」
「どうしてって、リュシアン殿下に雇われたんだよ。殿下個人の元に付けば、ネザリア国王の暮らしに負けない裕福な暮らしを約束してくださると同時に、この国から逃げ出してきた害虫が目障りでうっかり駆除した際にも咎めず匿ってくださるなんて、面白い事をおっしゃるからさ」
そんな事をおっしゃって。
ウィリアム様(仮)が一見人が良さげに、しかしその実どこか酷薄そうに、その黒曜石の瞳をスッと笑みの形に細めてみせられた、その次の瞬間です。
突然、イライアス様の何もなかったはずの足元の地面から、彼を吹き飛ばさんばかりの突風が吹き荒れました。
まるで何か強い力で押さえつけようとされているかのように。
咄嗟に地面に向けて突き出されたイライアス様の手の先から、その突風がうねり、徐々に形を変えている事から、ウィリアム様(仮)の魔術に対抗する為にイライアス様が渾身の魔力をその瞳に込められたのが分かります。
しかし、イライアス様が渾身の力を込めても風は収まるどころか、どんどんとその量を増していくようで……。
「…………」
イライアス様は、ウィリアム様(仮)には敵わないと、そう悟られたのでしょう。
しばし睨み合った後小さく溜息をつくと、またいつもの様な飄々とした様子でヤレヤレと肩を竦めてみせられた後、
どこかホッとしたように、しかしこちらの胸が痛むくらいどこか酷く寂しそうな顔をされて。
その場に膝を折ろうとされた、まさにその時でした。
「おや、誰かと思えばそこにいるのは泣き虫ミーナじゃないか」
「何しに戻った。まさか、わざわざオレ達に泣かされに来たわけじゃないよな?」
これまで国民の前では見せられた事の無いような酷く悪い顔をして。
イライアス様の腕を掴むなりその長身をあっさり引き上げてみせられたのは、何と宰相のクリストファー様と騎士団長のブライアン様でした。
突然のお二人の登場に
「おや? 害虫駆除は粗方済んだように聞いていたが。何だ、こんなところにでっかい害獣がまだ二匹も残っているじゃないか」
これまでは鷹揚に嗤っていらしたウィリアム様(仮)が、その表情を瞬時に呪い殺さんばかりの酷く険しいものに変えられました。
またそれと同時に、ブライアン様が腰に下げた剣の柄に手をかけられたのが、見たくもないのに見えました。
うっかり再び訪れた一触即発のこの事態を、名宰相と名高いその手腕で上手い事収拾していただきたく、クリストファー様に目で縋れば
「御心配には及びません。国土の広さは違えど、隣国に舐められて属国になり下がる程、ネザリアは落ちぶれてはいませんから。私達の目の黒いうちはいかに、隣国の王配殿下の前であろうと自国の王太子に私達がそう易々と膝を着かせたりはしませんよ」
私の期待を斜め上後方に裏切って。
クリストファー様は文官にあるまじく酷く好戦的に嗤って見せられました。
イライアス様は私と同じように、しばし酷く驚いた顔をされた後、ご自身の二の腕を掴むブライアン様とクリストファー様のお顔を交互にどこか呆然とご覧になっていらっしゃいましたが……。
何か吹っ切れるものがあったのでしょう。
「……っふ。ははは」
イライアス様は思わずと言った様子で噴き出した後。
どこか寂しげだった優しい王子様のお顔から一変、王者の風格を漂わせ、この場にいる誰よりも酷く鷹揚に、しかし強い威圧感を持って、ウィリアム様(仮)の後ろにいらっしゃるリュシアン様を真っすぐご覧になりました。
イライアス様はいつも優し気に微笑んでいらっしゃる事が多かったので、お母様で在らせられる王妃様によく似ていらっしゃるのだとばかり思っていましたが……。
なるほど、今のイライアス様は、お父様で在らせれる国王陛下によく似ていらっしゃる事が良く分かりました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
更新の度、読んで下さり本当にありがとうございます。
『しおり』が追いかけて下さるのを励みに更新がんばれました。
お気に入り登録や、エールも本当にありがとうございます。
そして、日曜までに終わると最初に行っておきながら、書き溜めがあるにも関わらず、言い回しなどを直しているうちに思った以上に時間がかかってしまい……
今日中に完結させることが!!
出来ませんでした!! (TДT)
わざとではなかったのですが、今日中に終わる詐欺になってしまい本当に申し訳ありません。
明日は、仕事の為、夜まで更新が出来ないかもですが、イライアス視点まで書き溜めありますので、もう少々!
もう少々お付き合いただければ幸いです。
イライアス様の言葉に驚いて、その方の顔をまじまじ見れば。
その方は、国王陛下やイライアス様と、どことなくお顔立ちが似ていらっしゃる印象を受けました。
という事は、この方はもしかして……。
ずっと昔に事故で亡くなった事にされている、王弟殿下ウィリアム様、その方なのでしょうか???
「どうして叔父上が??」
「どうしてって、リュシアン殿下に雇われたんだよ。殿下個人の元に付けば、ネザリア国王の暮らしに負けない裕福な暮らしを約束してくださると同時に、この国から逃げ出してきた害虫が目障りでうっかり駆除した際にも咎めず匿ってくださるなんて、面白い事をおっしゃるからさ」
そんな事をおっしゃって。
ウィリアム様(仮)が一見人が良さげに、しかしその実どこか酷薄そうに、その黒曜石の瞳をスッと笑みの形に細めてみせられた、その次の瞬間です。
突然、イライアス様の何もなかったはずの足元の地面から、彼を吹き飛ばさんばかりの突風が吹き荒れました。
まるで何か強い力で押さえつけようとされているかのように。
咄嗟に地面に向けて突き出されたイライアス様の手の先から、その突風がうねり、徐々に形を変えている事から、ウィリアム様(仮)の魔術に対抗する為にイライアス様が渾身の魔力をその瞳に込められたのが分かります。
しかし、イライアス様が渾身の力を込めても風は収まるどころか、どんどんとその量を増していくようで……。
「…………」
イライアス様は、ウィリアム様(仮)には敵わないと、そう悟られたのでしょう。
しばし睨み合った後小さく溜息をつくと、またいつもの様な飄々とした様子でヤレヤレと肩を竦めてみせられた後、
どこかホッとしたように、しかしこちらの胸が痛むくらいどこか酷く寂しそうな顔をされて。
その場に膝を折ろうとされた、まさにその時でした。
「おや、誰かと思えばそこにいるのは泣き虫ミーナじゃないか」
「何しに戻った。まさか、わざわざオレ達に泣かされに来たわけじゃないよな?」
これまで国民の前では見せられた事の無いような酷く悪い顔をして。
イライアス様の腕を掴むなりその長身をあっさり引き上げてみせられたのは、何と宰相のクリストファー様と騎士団長のブライアン様でした。
突然のお二人の登場に
「おや? 害虫駆除は粗方済んだように聞いていたが。何だ、こんなところにでっかい害獣がまだ二匹も残っているじゃないか」
これまでは鷹揚に嗤っていらしたウィリアム様(仮)が、その表情を瞬時に呪い殺さんばかりの酷く険しいものに変えられました。
またそれと同時に、ブライアン様が腰に下げた剣の柄に手をかけられたのが、見たくもないのに見えました。
うっかり再び訪れた一触即発のこの事態を、名宰相と名高いその手腕で上手い事収拾していただきたく、クリストファー様に目で縋れば
「御心配には及びません。国土の広さは違えど、隣国に舐められて属国になり下がる程、ネザリアは落ちぶれてはいませんから。私達の目の黒いうちはいかに、隣国の王配殿下の前であろうと自国の王太子に私達がそう易々と膝を着かせたりはしませんよ」
私の期待を斜め上後方に裏切って。
クリストファー様は文官にあるまじく酷く好戦的に嗤って見せられました。
イライアス様は私と同じように、しばし酷く驚いた顔をされた後、ご自身の二の腕を掴むブライアン様とクリストファー様のお顔を交互にどこか呆然とご覧になっていらっしゃいましたが……。
何か吹っ切れるものがあったのでしょう。
「……っふ。ははは」
イライアス様は思わずと言った様子で噴き出した後。
どこか寂しげだった優しい王子様のお顔から一変、王者の風格を漂わせ、この場にいる誰よりも酷く鷹揚に、しかし強い威圧感を持って、ウィリアム様(仮)の後ろにいらっしゃるリュシアン様を真っすぐご覧になりました。
イライアス様はいつも優し気に微笑んでいらっしゃる事が多かったので、お母様で在らせられる王妃様によく似ていらっしゃるのだとばかり思っていましたが……。
なるほど、今のイライアス様は、お父様で在らせれる国王陛下によく似ていらっしゃる事が良く分かりました。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
更新の度、読んで下さり本当にありがとうございます。
『しおり』が追いかけて下さるのを励みに更新がんばれました。
お気に入り登録や、エールも本当にありがとうございます。
そして、日曜までに終わると最初に行っておきながら、書き溜めがあるにも関わらず、言い回しなどを直しているうちに思った以上に時間がかかってしまい……
今日中に完結させることが!!
出来ませんでした!! (TДT)
わざとではなかったのですが、今日中に終わる詐欺になってしまい本当に申し訳ありません。
明日は、仕事の為、夜まで更新が出来ないかもですが、イライアス視点まで書き溜めありますので、もう少々!
もう少々お付き合いただければ幸いです。
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