【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい

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第三章 魅了王子は嫌われたい イライアスとシュゼット

19.宇宙(の神髄を垣間見し)猫(side シュゼット)

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大輪の光の花が咲く夜空をぼんやり見上げます。
リュシアン様の国から輸入したという花火は、これまで見たことないほど色鮮やかで美しいものでした。

ふと隣を見れば。
それを酷く退屈そうに見ていらしたリュシアン様と目が合いました。


「私、夜って鮮やかな色も熱も無い、寂しい世界だって思い込んでいました。でも、そんなことなかったんですね。私、これからは一人暮らす夜がこれまでより好きになれそうです。本日はお誘い下さりありがとうございます、リュシアン様」

改めて、そうお礼を申し上げれば

「……いえ、寧ろイライアスとの仲を邪魔したのです。文句こそ言われ礼を言われる覚えはありませんよ」

リュシアン様が一見気難しそうに、しかしその実ひどくバツが悪そうにその筋の通った綺麗なお鼻に皺を寄せながら、そんなことをおっしゃいました。




「それで? イライアスを僕の前で跪かせる方法は分かりましたか」

リュシアン様の言葉に小さく頷けば

「そうですか。それは良かっ……。念のためどうするつもりか教えていただけますか?」

鷹揚に頷きかけられたリュシアン様が、ハッと疑わし気な表情をこちらに向けられました。

何故でしょう?
魔具で仮面を作って、雰囲気美人になる作戦もなかなかに良いアイディアだと思ったのですが、どうもリュシアン様は私の出すアイディアにあまり信用を置いて下さってはいらっしゃらないようです。

でも、まぁ今回私が考えた作戦は、今度こそリュシアン様の御心に添うもので間違い無いので問題ありません。


「はい。先ほどこの、花火の光を受け地上に落ちた流れ星のように美しく輝くダイアの首飾りを見ているうちに、私、遅ればせながらもようやく、リュシアン様の意図されていた事に気づく事が出来ました」

押抱くように、そっとリュシアン様より贈られた首飾りに触れつつそう言えば。
私の自信ありげな様子からして、今度こそ大丈夫そうだと思って下さったのでしょう。

リュシアン様はベンチのひじ掛けにどこか妖艶かつ気だるげに頬杖を付かれると、その先も言葉にするよう、その大人の落ち着きと余裕を存分に含んだ眼差しでもって再度促されました。


「リュシアン様は私に『辺境伯領領騎士団の奥義、流星突きをもってイライアスを地面に沈め、僕の前で跪かせろ。そうすれば、内政問題として片が付くし、お前が隠したがっている思いがイライアスに伝わる事も無く一石二鳥だ』そうおっしゃりたかったのですよね!!」

「全然違いますよ?!!」

「え?! 違うんですか??」


驚きのあまり、また淑女らしからずポカンと口を開ければ。

「はい、全然違います。僕の周りの女性はユニークな方が多いので、突飛な発想には慣れていたつもりでしたが……。貴女の発想はそんな僕でもビックリし過ぎた余り心臓が止まるかと思ったくらい違います。一体、何をどうやって育ったら、そんな容姿をしているにも関わらずそんな答え脳筋な回答に行きつくんです???」

リュシアン様もまた酷く驚かれたようで。
まるで宇宙の神髄を目の当たりにしてしまった猫のように、二人で目を丸くし思わず見つめ合ってしまった時でした。


「殿下」

脇に控えていたリュシアン様の護衛騎士が何かを警戒するように、低く短い声を発しました。

何事だろうと思い、騎士の目線の先を追えば。

その視線の先にいらしたのは、さっきまでのピリリとした雰囲気から一変、妙に楽し気に、しかしどこか暗く微笑むイライアス様でした。
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