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第三章 魅了王子は嫌われたい イライアスとシュゼット

16.雰囲気美人(side シュゼット)

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『やらせていただきます!!』

食い気味にそう答えはしたものの……。

私がイライアス様を魅力し、リュシアン様の前で跪かせるなんて。
果たして、そんな事本当に可能でしょうか???

いっそ、真夜中に太陽を上らせてみろと言われた方が、何とかなった様な気さえします。


どうすればいいか分からず、困り果て頭を抱えれば。

「しっかりしてください。僕と貴女は良く似ているのです、この美貌を持ってすればいくらでもやりようはあるでしょう??」

リュシアン様が実に呆れたと、深い深いため息をつかれました。


そういえば、リュシアン様はその美貌を女王陛下に見初められ、強国の隣国にぜひともと乞われ婿入りされたんでしたっけ?

面立ちがどことなく似通っているとは言え、私がリュシアン様と同じような美貌の持ち主かと言われれば残念ながら違うと言わざるを得ません。
それでも何か現状を打開するヒントを少しでも得られないかと思い、改めて不敬を承知でリュシアン様を正面からまじまじと観察してみる事にします。

「…………」


改めて見てみれば。
リュシアン様は、私がなんとなく似ているというのも憚られるくらい、整ったお顔立をされている事に気づきました。

「そうです!!! 魔具職人に顔がハッキリ認知出来なくなる魔術を込めた仮面を作らせれば、私もリュシアン様風の雰囲気美女に……」

「却下です!」


深い深いため息をつかれた後リュシアン様が次に私をエスコート強制連行して下さったのは、我が国で一番人気故、なかなか予約が取れないと評判の美容サロンでした。






******


「いかがでしょう?」

髪をハーフアップに結い上げられ、一見薄化粧ナチュラルメイク風に。
でもその実時間をかけてバッチバチにメイクを施され、キラキラ輝く宝石を可憐に纏った自分を鏡越しに見た瞬間、

「す、すごいです!!」

プロの技に驚愕したせいで、思わず淑女にあるまじき大きな声を出してしまいました。

これは嫌味なジェレミーでさえも、文句のつけようがないのでは?!
そう思った瞬間です。

「却下です」

そう仰って。
リュシアン様が実に嫌そうに、私が身に着けていたイライアス様の瞳と同じロイヤルブルーの色をしたサファイアのイヤリングを外すよう、侍女に指示を出されました。


「では、こちらのもの等いかがでしょうか」

そう言ってサロンのマダムが侍女に持って来させたのは、細やかな細工が実に美しい金細工のアクセサリーでした。

真昼に太陽に向かって真っすぐ咲き誇る向日葵のような色合いのそれを美しいと思うと同時に。
かつてお茶会で独りぼっちだった私に声をかけてくれた年上の女の子を思い出し、

『彼女のような人こそがやはりイライアス様には相応しいのでしょう』

と、勝手に劣等感を募らせ俯きかけた時でした。

「気に入りませんか?」

リュシアン様はそう言って首を傾げると、私の答えを聞くよりも前に、またサッとそれらを下げさせられました。


次に私の前に差し出されたのは、ダイアをふんだんにちりばめた夜空に輝く星のようにきらめく首飾りと揃いのイヤリング、そして流れ星を思わせる美しい髪飾りでした。

そうして

「では、これにしましょう」

またしても私の表情をさらっと読まれたリュシアン様は、今度も私の言葉を待つ事なく、実にスマートにそう断言されました。
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