【完結】 悪役令嬢は『壁』になりたい

tea

文字の大きさ
上 下
32 / 57
第三章 魅了王子は嫌われたい イライアスとシュゼット

7.ただの嫌がらせ?!(side シュゼット)

しおりを挟む
「……でもよろしかったのですか?  他の方へのプレゼントだったのでしょう?」

イライアス様のような綺麗な男性に、こんな素敵なドレスを贈られるのは一体どんな人なのでしょう?

確かお相手のお名前はリュシアン様と仰っていましたっけ?
きっとイライアス様に負けず劣らず美しい方なのでしょう。

嬉し気に微笑むリュシアン様の姿と、恋に浮かれた従兄の姿が不意に重り、何故かまた胸が鈍く痛んで。
鏡越しでも何故だか急にイライアス様のお顔を直視出来なくなり、足元の方に向けてそっと目線を伏せた時でした。

「あぁ、いいんだ。ただの嫌がらせで準備したものだから。そのドレスだって君に来てもらった方が幸せだろう」

イライアス様がサラリと恐ろしい事を仰いました。


「……えっと……」

そう言えば……
『リュシアン』というのは、我が国より巨大な国土と軍事力を誇る隣国の、若き王配殿下のお名前ではなかったでしょうか??!

そんな方に、『嫌がらせ』でドレスを贈る?!
さっと顔色を青くした私の心を知ってか知らずか、イライアス様が楽しそうに笑いながら更にトンデモない事を仰いました。

「そうだ! 悪いと思うならがシュゼットがそのドレスを着て、明日のリュシアンの歓迎パーティーに出席してよ!!」

「絶対にお断りします!!」

とんでもない悪ふざけに巻き込まれる前に、一刻も早くこの場を逃げ出そう!

そう思い、走り去る為ドレスの裾をガッ! と掴んだ瞬間でした。
逃げ出そうとした私の手首と肩をガシッ!! と掴んで、イライアス様が悪魔も真っ青なイイ笑顔を浮かべて私に囁きました。

「もしリュシアンへの歓迎会嫌がらせに協力してくれたら、母の花壇を荒らしたのはボクだって事にしてあげる」






******


翌日開催されたリュシアン様の歓迎パーティーで

「なっ?!!」

リュシアン様が私を見るなり、その綺麗なかんばせを盛大に引き攣らせられました。

それもその筈。

私はリュシアン様と同じ髪色でアイスブルーの瞳。
そして高い高いヒールを履いた今、背丈も彼とそれほど変わりません。
なんならこうしてお会いしてみると、初対面の時にイライアス様が見間違えられた事から察せられる通り、面立ちもどことなく似ている気がします。

そんな自分とそっくりな人物が、まるで婚約者か何かのようにイライアス様の瞳と同じ色のドレスを着させられ、死んだ目をしながらイライアス様に腰を抱かれ目の前に立っているのです。

リュシアン様とイライアス様、お二人の関係性はよく知りませんが……。

想像するにきっと一方的にイライアス様に執着されていらっしゃるのであろうリュシアン様からすれば、この目の前の光景はホラー以外の何物でもないでしょう。


「イライアス、お前……いくら僕に恨みがあるからって、ここまでやるか?!」

リュシアン様が実に忌々し気に半眼になってそう言えば、イライアス様はそんなリュシアン様を見て、一人だけまた実に嬉しそうに笑われました。

イライアス様の隣で真っ青になっていた時でした。

「……気が済んだなら、いい加減その哀れなお嬢さんを離してやれ」

そんな私の様子に気づいたリュシアン様が、私に向かいそんな助け船を出して下さいました。

リュシアン様の慈悲深いのお言葉に甘えて、脱兎のごとくその場を去ろうとしたその時です。
イライアス様は逃げ出そうとした私の手をまたガシッ!!! と掴み、

「えー!!! 嫌ですよ。ダンスもまだ終わっていないのに。ねぇ? シュゼットもボクと踊りたいよね??」

私が反論出来ないのをいい事に、そんな実に勝手な事を仰ったその時でした。


「いい加減にしろ」

何故かリュシアン様がイライアス様に向かい小さく弓を引くようなジェスチャーをして見せられました。

そして。
私が何だろうと思うよりも早く、ソレをご覧になったイライアス様は、どこか怯えたようにバッ! と勢いよく私から手を離されたのでした。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

処理中です...