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第一章 悪役令嬢は『壁』になりたい
5.離れる覚悟は出来ていたはずだったんですけどね
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覚悟は……、出来ていた筈だったんですけどね。
妹のローザが同じ学園に通うようになった、私とウィルが十四歳のとある冬の日。
突然、ついにウィルとリリーメイ私が決別するイベントが、シナリオ通り始まってしまいました。
「リリーはローザの事を誤解している。君にいったい僕たちの何が分かる!? 知ったような口を利かないでくれ!!」
売り言葉に買い言葉だって事くらい、私が一番よく分かっていますし、ウィルが幸せになる為には必要な言葉だったと頭では痛い程に理解しています。
でも……。
ウィルが小説と全く同じように、ヒロインである妹のローザを庇い、私を突き放す言葉を言うのを聞いた時は、やはりどうしようもなく胸が痛んで仕方ありませんでした。
******
人目を避ける為学園の温室の中、一人泣いていた時でした。
「誰だ?」
不意にかけられた声に驚いて振り向けば、なんと温室の入り口にゼイムスが立っていました。
婚約者に対して『誰だ?』とはお言葉ですが。
あの喧嘩以降お互いに徹底して嫌い合って顔を合わせないようにしていたので、まぁ仕方ありません。
私も前世の知識が無ければ、彼が誰か分からなかったでしょう。
慌てて彼の横をすり抜け逃げようとすれば、ゼイムスにいきなり手を取られました。
そしてそのまま、私の顎に手をかけたゼイムスに、強引に泣き顔を上げさせられます。
「この燃える様な赤毛にエメラルドの瞳……リリーメイか?」
名乗らずその場を離れたかったのですけどね、そこは腐っても元婚約者。
特徴的な容姿故、すぐに正体に気づかれてしまいました。
不敬にならない程度に、返事をしないと。
そう思い口を開いた瞬間、また涙がポロッと溢れてしまいました。
「何を泣いている?」
ゼイムスがぎょっとした声を出したので、慌てて何でも無いのだと首を横に振りました。
本当に、面倒なタイミングで嫌な相手に会ってしまった。
そう思ったときです。
突然ゼイムスが私の前に立ちはだかると、私の頭をその胸の中に抱きました。
「なっ?!……殿下?! 何をされているのですか?!!!」
驚きのあまりゼイムスの胸を強く押し離れようとしましたが、大人になったゼイムスはビクともしません。
あの時は男女で成長のスピードが違う為そう大差なかった身長差も、今となってはその差は歴然で。
ヒールを履いてなお、抱き寄せられた私の頬は彼の胸までしか届いていませんでした。
前世で習った護身術で、拘束された際に役立つ物が無かったか必死に思い出そうとした時です。
「あの時は、君に手をあげようとして本当にすまなかった。ずっと謝りたいと思っていたが、キミが徹底してオレを避けるからそれが出来なかった。……子供の時の詫びだ。投げ飛ばしたかったら投げ飛ばしても今回は不敬罪には問わないぞ?」
低くなったゼイムスの無駄にいい声が鼓膜に響きます。
突然何の嫌がらせかとビビりましたが……。
どうやらゼイムス、私が泣いている姿を自分が壁になる事で周囲から隠してくれているつもりの様子。
お気持ちはありがたいですが、心臓に悪いですし、壁になるのは私の専売特許なので、以降は断固として遠慮させていただきたいと思います。
「……私の方こそ、あの時は大変失礼しました」
本当は是非あの時、ウィルを殴ったお返しに投げ飛ばさせていただきたい気持ちでいっぱいなのですが。
いろいろ忖度した結果、それをグッと抑え一応大人としてこちらからもしぶしぶ謝罪すれば。
ゼイムスはホッとしたように肩の力を抜き、ようやく私の事を腕の中から解放してくれたのでした。
妹のローザが同じ学園に通うようになった、私とウィルが十四歳のとある冬の日。
突然、ついにウィルとリリーメイ私が決別するイベントが、シナリオ通り始まってしまいました。
「リリーはローザの事を誤解している。君にいったい僕たちの何が分かる!? 知ったような口を利かないでくれ!!」
売り言葉に買い言葉だって事くらい、私が一番よく分かっていますし、ウィルが幸せになる為には必要な言葉だったと頭では痛い程に理解しています。
でも……。
ウィルが小説と全く同じように、ヒロインである妹のローザを庇い、私を突き放す言葉を言うのを聞いた時は、やはりどうしようもなく胸が痛んで仕方ありませんでした。
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人目を避ける為学園の温室の中、一人泣いていた時でした。
「誰だ?」
不意にかけられた声に驚いて振り向けば、なんと温室の入り口にゼイムスが立っていました。
婚約者に対して『誰だ?』とはお言葉ですが。
あの喧嘩以降お互いに徹底して嫌い合って顔を合わせないようにしていたので、まぁ仕方ありません。
私も前世の知識が無ければ、彼が誰か分からなかったでしょう。
慌てて彼の横をすり抜け逃げようとすれば、ゼイムスにいきなり手を取られました。
そしてそのまま、私の顎に手をかけたゼイムスに、強引に泣き顔を上げさせられます。
「この燃える様な赤毛にエメラルドの瞳……リリーメイか?」
名乗らずその場を離れたかったのですけどね、そこは腐っても元婚約者。
特徴的な容姿故、すぐに正体に気づかれてしまいました。
不敬にならない程度に、返事をしないと。
そう思い口を開いた瞬間、また涙がポロッと溢れてしまいました。
「何を泣いている?」
ゼイムスがぎょっとした声を出したので、慌てて何でも無いのだと首を横に振りました。
本当に、面倒なタイミングで嫌な相手に会ってしまった。
そう思ったときです。
突然ゼイムスが私の前に立ちはだかると、私の頭をその胸の中に抱きました。
「なっ?!……殿下?! 何をされているのですか?!!!」
驚きのあまりゼイムスの胸を強く押し離れようとしましたが、大人になったゼイムスはビクともしません。
あの時は男女で成長のスピードが違う為そう大差なかった身長差も、今となってはその差は歴然で。
ヒールを履いてなお、抱き寄せられた私の頬は彼の胸までしか届いていませんでした。
前世で習った護身術で、拘束された際に役立つ物が無かったか必死に思い出そうとした時です。
「あの時は、君に手をあげようとして本当にすまなかった。ずっと謝りたいと思っていたが、キミが徹底してオレを避けるからそれが出来なかった。……子供の時の詫びだ。投げ飛ばしたかったら投げ飛ばしても今回は不敬罪には問わないぞ?」
低くなったゼイムスの無駄にいい声が鼓膜に響きます。
突然何の嫌がらせかとビビりましたが……。
どうやらゼイムス、私が泣いている姿を自分が壁になる事で周囲から隠してくれているつもりの様子。
お気持ちはありがたいですが、心臓に悪いですし、壁になるのは私の専売特許なので、以降は断固として遠慮させていただきたいと思います。
「……私の方こそ、あの時は大変失礼しました」
本当は是非あの時、ウィルを殴ったお返しに投げ飛ばさせていただきたい気持ちでいっぱいなのですが。
いろいろ忖度した結果、それをグッと抑え一応大人としてこちらからもしぶしぶ謝罪すれば。
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