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第二章 生き急ぐように去って行く美少年の背中を切なく見送りたい

リュシアンとチョコレート③(side アーデ)

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「僕に婚姻破棄を言い渡されるおつもりですか? ……はっ! もしかして僕がアイツを虐めているとでも言われましたか?! 僕は無実です!! それらは全てイライアスの自作自演です! 信じてくださいますよね?!!!」

パーティーが終わり二人になったタイミングで、リュシアンがどこぞの悪役令嬢みたいな事を言い出しました。


婚姻破棄?

そんな言葉初めて聞きましたが……。

それはともかく

「イライアス様のペースに飲まれてしまって本当にごめんなさい! でも、リュシアンしか勝たんから!! リュシアンが優勝だから!!!」

素直に自分の失態を申し訳なく思い、五体投地の勢いで必死になって謝りました。
すると私の圧に気圧されたのか

「……準優勝者は無しですからね」

間一髪私の投地を体を使って慌てて阻止したリュシアンに、なんとかかんとか許してもらう事が出来ました。




ちなみに。

リュシアンがイライアス様を虐めてるとのタレコミはどこからも入っていません。

……リュシアン、恐らく何かやりましたね。

その辺、今後厳しく目を光らせておきたいと思います。
無邪気過ぎるイライアス様の扱いも気を付けなければ。


そう、分かっていた筈だったのですが……。






◇◆◇◆◇

「うーん、どうしよう」

夜空に上がった美しい花火を見上げながら、私は頭を抱え呻きました。

「アーデルリーザ様? ……花火はお嫌いでしたか?」

声がする方を力なく見やれば、イライアス様がそのロイヤルブルーの瞳を不安げに細められています。

「いえ、花火は大好きですよ」

以前は、この国で見られる花火と言えば単色の物が多かったのですが、前世の記憶を頼りに色々な種類の金属を混ぜると色が変わる旨を伝えたところ、ここでも色とりどりのものが楽しめるようになりましたし。

そう言って曖昧に微笑み首を横に振れば、イライアス様がホッとしたようにその表情を愛らしくほころばせられました。

「よかった! 最近お忙しそうだったので、気晴らしにぜひこちらにお連れしたいと思っていたのです!!」


そうなんです。

イライアス様がおっしゃるように、最近はリュシアンとゆっくりお茶をする暇もないくらい忙しかったのです。

何故ならリュシアンと一緒にこの花火を観に行こうと約束していたから。


なのに、夕方にイライアス様に

『大事なお話があります』

とどこか切羽詰まったような表情で言われ、慌てて駆け付けた結果がコレ……。


イライアス様は単純に私を喜ばせようとサプライズをして下さっただけで、悪気はないのでしょうが……。

リュシアン、怒ってるだろうなぁ。






◇◆◇◆◇

花火が終わり―
修羅場を覚悟して城に戻れば、意外にもリュシアンは出迎えに姿を見せませんでした。

私室に居るのかと思いましたがそこにも、夫婦の寝室にもいません。

あちこち探し回った末、執務室のソファーでふて寝するリュシアンをようやく見つけました。


「……リュシアン、本当にごめんなさい。約束を破る気はなかったの……」

何と声を掛けるべきか散々迷った挙句そう言ってそのサラサラの前髪を撫でれば、リュシアンは寝返りを打つふりをして。
しかし寝たふりを続けたまま、その綺麗な顔を伏せてしまいました。
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