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第一章 愛が重め故、断罪されました
馬子にも衣装? とんでもない! 元の素材がいいのです
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修道院や孤児院での仕事にもすっかり慣れ、少し時間を持て余し始めた頃の事です。
ジャン様のお父様に見込まれて、ジャン様のお屋敷で領地経営のお仕事を手伝う事になりました。
「お父様のお許しも出てこれからお屋敷で共に過ごす=同棲=結婚ですよね? ジャン様、将来一緒のお墓に入りましょう! 私と結婚してください!! そして孤児院の子ども達に教育を受けさせたいので援助額の上限を取っぱらってください!」
お屋敷に上がるなり、息せき切らせジャン様に駆け寄りそう言えば、
「エリーズはここに住んではいないから同棲ではないし、もう死んだ後の話か?エリーズはまだ今年で十八だろう。随分気が早いなぁ。えっとなんだっけ?結婚? あー、それは無理だな」
そう、またサラッと躱されてしまいました。
しかしジャン様は領地経営が軌道に乗った後、
「これは全てエリーズの功績によるものだから、エリーズの望むようにしたらいい」
と、新たに生まれた収入の多くを孤児院にまわす事を気前良く許可して下さいました。
ジャン様は経済政策や福祉面等、統治に私が口を挟んでも、怒るどころか
「エリーズは凄いな」
と嬉しそうに褒めてくださいます。
私が思わず勝手に資料整理をしてしまい、
『どうしましょう?! またやってしまいました!!』
そう気づいて真っ青になった時にも、嬉し気に微笑んで
「分かりやすく整理してくれてありがとうな」
そう言って、お礼と言って庭に咲いた一輪のバラを自ら摘んできて贈ってくださいました。
「はっ! 一輪のバラ=愛の告白=結婚ですね! おじいちゃんになっても大好きです! 私と結婚してください!! そして子ども達にテーブルマナーを学ばせたいので、カトラリーや食器をそろえる予算を下さい!」
もちろんプロポーズではないとのことで、反省を軽く飛び越え脊髄反射的に申し込んだ逆プロポーズは、予算の件と共に華麗にスルーされました。
しかし、ジャン様は後日子ども達を数名ずつに分けてお屋敷に招いて一緒に食事を取りながらテーブルマナーを教えてくださったのでした。
◇◆◇◆◇
また別のある日の事です。
季節の変わり目を前に、仕立て屋さんを呼んで新しくジャン様の衣装を作ってもらう事になりました。
子爵家とお付き合いのある方に季節のお便りを送る際、高価な贈り物を添えられない代わりに領地で作っている四季折々の果実酒やジャムなどを添える様にしたところ、それを気に入って下さった方々から夜会等の招待状が頻繁に届くようになった為です。
高位貴族とのコネクションを欲しがっていらしたジャン様のお父様には喜んでいただけましたが……。
夜会=ジャン様のお見合いの様な物でもあるので、私としては少し複雑です。
ですが、夜会等に出る様になればこれまで無かった他の貴族や商人たちとの伝手が出来、それらは将来、孤児院の子ども達が就職するときの役にたつのは間違いないので、まぁ良しとしましょう。
ちなみにジャン様は
「オレが何を着たってそんなに変わらないんだから、新しい服なんて必要無いだろう」
と、あちらこちら採寸されながら酷くゲンナリした顔をされています。
家令の話によると、ジャン様は使用人や領民に対しては太っ腹な癖に自分の事には酷く無頓着なため、放っておくと永遠に古い一張羅を着続けかねないとのこと。
巷では現在、リュシアン様が好んでお召しになっている丈が短めで割とピタッとしたシルエットかつ首元が割合詰まったジャケットが流行っていますからね。
背が高く肩幅も広いジャン様はそれも窮屈に感じ、嫌がっていらっしゃるのでしょう。
そこで。
仕立て屋にはゆったりとした着丈と絞りの少ないボックスシルエット、そしてVゾーンが深いジャケットをオーダーしました。
ジャン様が短めの丈のジャケットを着ると、どうしても寸足らずな印象を受けるので、シルエットに関しては流行りは無視に限るのです。
「でも流行りを無視したら、『これだから田舎者は』とまた馬鹿にされるだけでは?」
オシャレが好きな侍女さんがそう心配そうに言いました。
侍女さん、良い所に気づきましたね☆
でも心配ご無用です。
シルエットの流行を無視した分、用いる生地や細部のデザインを最新の流行りに合わせます。
これで決して流行遅れの田舎者とは誰も思わないでしょう。
流行りの生地は大量に生産されていてお安く手に入れられるので、そこも素敵ポイントです。
生地の色は瞳よりも濃いネイビーブルー、そして飾りにはジャン様の髪の色に合わせた金糸を用いました。
これを纏ったジャン様は、その長身とその整った顔立ちがよく映えて、実に素敵に見える事でしょう……。
早くそれをお召しになったジャン様が見たいような、しかしそれが完成しジャン様が夜会に行けばあっという間にイケメンに飢えた貴族の令嬢に見初められてしまうでしょうから永久に完成して欲しくないような。
私は、そんな複雑な気分になるのでした。
ジャン様のお父様に見込まれて、ジャン様のお屋敷で領地経営のお仕事を手伝う事になりました。
「お父様のお許しも出てこれからお屋敷で共に過ごす=同棲=結婚ですよね? ジャン様、将来一緒のお墓に入りましょう! 私と結婚してください!! そして孤児院の子ども達に教育を受けさせたいので援助額の上限を取っぱらってください!」
お屋敷に上がるなり、息せき切らせジャン様に駆け寄りそう言えば、
「エリーズはここに住んではいないから同棲ではないし、もう死んだ後の話か?エリーズはまだ今年で十八だろう。随分気が早いなぁ。えっとなんだっけ?結婚? あー、それは無理だな」
そう、またサラッと躱されてしまいました。
しかしジャン様は領地経営が軌道に乗った後、
「これは全てエリーズの功績によるものだから、エリーズの望むようにしたらいい」
と、新たに生まれた収入の多くを孤児院にまわす事を気前良く許可して下さいました。
ジャン様は経済政策や福祉面等、統治に私が口を挟んでも、怒るどころか
「エリーズは凄いな」
と嬉しそうに褒めてくださいます。
私が思わず勝手に資料整理をしてしまい、
『どうしましょう?! またやってしまいました!!』
そう気づいて真っ青になった時にも、嬉し気に微笑んで
「分かりやすく整理してくれてありがとうな」
そう言って、お礼と言って庭に咲いた一輪のバラを自ら摘んできて贈ってくださいました。
「はっ! 一輪のバラ=愛の告白=結婚ですね! おじいちゃんになっても大好きです! 私と結婚してください!! そして子ども達にテーブルマナーを学ばせたいので、カトラリーや食器をそろえる予算を下さい!」
もちろんプロポーズではないとのことで、反省を軽く飛び越え脊髄反射的に申し込んだ逆プロポーズは、予算の件と共に華麗にスルーされました。
しかし、ジャン様は後日子ども達を数名ずつに分けてお屋敷に招いて一緒に食事を取りながらテーブルマナーを教えてくださったのでした。
◇◆◇◆◇
また別のある日の事です。
季節の変わり目を前に、仕立て屋さんを呼んで新しくジャン様の衣装を作ってもらう事になりました。
子爵家とお付き合いのある方に季節のお便りを送る際、高価な贈り物を添えられない代わりに領地で作っている四季折々の果実酒やジャムなどを添える様にしたところ、それを気に入って下さった方々から夜会等の招待状が頻繁に届くようになった為です。
高位貴族とのコネクションを欲しがっていらしたジャン様のお父様には喜んでいただけましたが……。
夜会=ジャン様のお見合いの様な物でもあるので、私としては少し複雑です。
ですが、夜会等に出る様になればこれまで無かった他の貴族や商人たちとの伝手が出来、それらは将来、孤児院の子ども達が就職するときの役にたつのは間違いないので、まぁ良しとしましょう。
ちなみにジャン様は
「オレが何を着たってそんなに変わらないんだから、新しい服なんて必要無いだろう」
と、あちらこちら採寸されながら酷くゲンナリした顔をされています。
家令の話によると、ジャン様は使用人や領民に対しては太っ腹な癖に自分の事には酷く無頓着なため、放っておくと永遠に古い一張羅を着続けかねないとのこと。
巷では現在、リュシアン様が好んでお召しになっている丈が短めで割とピタッとしたシルエットかつ首元が割合詰まったジャケットが流行っていますからね。
背が高く肩幅も広いジャン様はそれも窮屈に感じ、嫌がっていらっしゃるのでしょう。
そこで。
仕立て屋にはゆったりとした着丈と絞りの少ないボックスシルエット、そしてVゾーンが深いジャケットをオーダーしました。
ジャン様が短めの丈のジャケットを着ると、どうしても寸足らずな印象を受けるので、シルエットに関しては流行りは無視に限るのです。
「でも流行りを無視したら、『これだから田舎者は』とまた馬鹿にされるだけでは?」
オシャレが好きな侍女さんがそう心配そうに言いました。
侍女さん、良い所に気づきましたね☆
でも心配ご無用です。
シルエットの流行を無視した分、用いる生地や細部のデザインを最新の流行りに合わせます。
これで決して流行遅れの田舎者とは誰も思わないでしょう。
流行りの生地は大量に生産されていてお安く手に入れられるので、そこも素敵ポイントです。
生地の色は瞳よりも濃いネイビーブルー、そして飾りにはジャン様の髪の色に合わせた金糸を用いました。
これを纏ったジャン様は、その長身とその整った顔立ちがよく映えて、実に素敵に見える事でしょう……。
早くそれをお召しになったジャン様が見たいような、しかしそれが完成しジャン様が夜会に行けばあっという間にイケメンに飢えた貴族の令嬢に見初められてしまうでしょうから永久に完成して欲しくないような。
私は、そんな複雑な気分になるのでした。
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