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第一章 愛が重め故、断罪されました

悪い癖ってなかなか治せないですよね?

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私が修道院に来てあっという間に一月が経ちました。

こちらの生活にはすっかり慣れましたが、それでもジャン様は私の様子を気にして頻繁に孤児院を訪れて下さいます。
(もしかしたら私が来る前から度々、孤児院の慰問にいらしていただけかもしれませんが☆)

そして、その温かい心配りに応えるように、当然ならがら私のジャン様への愛は日々募って行きます。

嗚呼それなのに……。

こんなにも互いに想い合っているのに、どうしてジャン様は私のプロポーズを受けて下さらないのでしょう?

やっぱりあれですよね??
持参金がないのが痛いのですよね?!

よし!
こうなったら前世での記憶プラスお妃教育で得た知識をフルに活かして、遠くない将来ガッツリ稼いで見せたいと思います!!


それと合わせて。

ジャン様と結婚する為、重い女を卒業しようと日々気を付けて生活しているつもりの私ですが……。
悪い癖はどうにもなかなか改まらないようで。

常にジャン様がどうすれば喜んでくれるか、どうすればジャン様の領地の為になるか。
ついついそんな事ばかりを考えてしまいます。

私ってばホント、ダメですね。
せっかくリュシアン様が改めるべきポイントを教えて下さったというのに。

このままだとジャン様にも重い女って思われ嫌われてしまいます。

「…………ジャン様のお役に立ちたい」

ダメです。
ジャン様の事を考えないようにしようと意識すればするほど、ジャン様の事ばかり考えてしまいます。

まぁ、こういう時は何か手を動かし忙しくして、気持ちを紛らわすのがいいでしょう。


そう思っての行動の筈だったのですが……。

気が付けば孤児院の子ども達と、今から来るであろうジャン様の為にと余った食材でクッキーなんかを焼いてしまっていました。

あ、お砂糖の代わりに甘いお芋を混ぜ込んでますのでお安く仕上がっていますのでその辺ご心配なく。
おやつも子ども達には栄養補給に欠かせませんし、無駄遣いはしていませんよ☆

……って、そうじゃなくて!!
こういうのがダメなん重いんだって!!

あぁ、どうしましょう?!
ジャン様に見つかる前に早くコレを隠してしまわないと!

しかし焼きたてのクッキーが乗った、まだ熱いオーブンの天板を隠す場所が咄嗟に思いつかず、クッキーを持っている姿を、子ども達と一緒に帰って来たジャン様にバッチリ見られてしまいました。


終わりました……。
また、重い女だって嫌われたに違いありません。
そして、きっとリュシアン様にされたように、私はきっとまたこの地を追われるのです。

そう思い、天板を持ったままガクッと項垂れた時でした。

「なんかいい匂いがするな」

ジャン様はそう言ってクッキーを一つ取って齧ると

「うん、美味いな。いつも、子ども達の為にありがとうな」

と子ども達にするように、その大きく暖かな手で私の髪を優しく撫でてくださったのでした。

褒められて困惑する私に向かい、年かさのシスター達が優しくニコニコと頷いてくださいます。

「美味しい!! こんな美味しいクッキー食べたの初めて。ねぇ、絶対また作ってね?!」

ジャン様を真似してクッキーを頬張る子ども達までもが、そんな事まで言ってくれます。


リュシアン様は鬱陶しそうにされるばかりだったのに。
それなのに……。

私、こんなに優しい態度や言葉を、こんなにも沢山貰ってしまっていいのでしょうか?


余りに温かで幸せな空間に、私が思わずフリーズしてしまったそんな時でした。

「エリーズのお料理もすっごく美味しいのよ」

子ども達の言葉に

「へぇ、オレも食ってみたいな」

ジャン様が優しく眦を下げられました。


「はっ!! 私の作った料理が食べたい=毎日オレに味噌汁を作ってくれ=結婚ですね?! 一緒に温かい家庭を築いて行きましょう! 私と結婚してください!! あと、子ども達が食べ盛りなので孤児院の食費をもっと下さい!」

正気に戻った(?)私が間髪入れずそう言えば、

「味噌汁が何かはしらねーけど……。結婚? あー、それは無理だな」

と、ジャン様はまた優し気な笑顔のまま、そのプロポーズをバッサリ断られてしまいました。

その代わり。

ジャン様は近隣の農家から売り物にならない野菜などを孤児院に分けてもらえるよう、上手い事取り計らってくださったのでした。
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