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第三章 刺激的なスローライフ
39.後悔の先
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俺のスキルに一体全体何をしたんだとカルルを見れば
「言っただろう、私はキミのスキルには何も手は加えていないよ。変えたのはキミの認識だ」
「俺の認識???」
「そうさ。キミは自分のスキルを、無知故にユニークスキルだと思いこんでいたようだけれど、それは違う。キミのスキルの本来の名は『継承』 キミの親に当たる者のスキルを、キミのスキルの基礎とするものだ」
「ユニークじゃなくて『継承』……。それは……それはトレーユの『矛盾』より強いスキルなのか?!!」
思わず期待に声を上ずらせた俺に
「いいや」
「違うな」
「そんなわけねーだろう」
ニコラ、カルル、トレーユの三人が声を合わせて言いきった。
なんだよ!!
期待させておいて!!!
「スキルの出現頻度は五十年に一人程度。下町の鑑定士が知らなった程度に珍しいものではあるが、いない訳ではないし、それ自体が強力なスキルという訳ではない」
トレーユが冷たい声で淡々と、強さにずっと焦がれてきた俺に向かい、そんな残酷な事実を述べる。
その言葉に、俺が大きく落胆しかけたその時だった。
「大事なのは、他の誰でもない、キミがそれを持っているという事だよ」
カルルがまた謎かけのようなことを言った。
「キミの親は誰だ?」
俺の親……。
「父は聖騎士のマクシム、母は僧侶のコレットだが?」
声に出し、改めてだから何だというのだと首を捻った時だった。
「何そこで終わろうとしてんだ、この薄情者! 二人亡きあと、お前を息子だと思って世話焼いてくれた奴らはもっといるだろう!!」
そう言ったニコラにまた背を蹴られた瞬間、その衝撃で俺が育った下町で暮らす色んな人の顔がパッと思い浮かんだ。
ギルマスで『連撃』のスキルを持つ剣士のエンゾに、『氷結』と『劫火』のスキルを持つ双子の魔導士のフェールとジュアン、そしてニコラ。
父さんと母さんのパーティーメンバーだった彼らは……、まぁ言いたいことは山ほどあるが彼らなりに精一杯、父さんや母さんに代わり何くれと親代わりとなり俺の面倒を見てくれた。
ただ、魔物の脅威に世界が脅かされていた時分故、彼らは多忙で街を不在にすることも多く。
そんな時は、気のいい近所の大人達が何くれと俺の世話を焼いてくれた。
そんな大人の中には建築家のパトリス、家具職人のレミ、庭師のシメオンなんかもいた。
スキルによって、素人のはずの俺がプロ顔負けの仕事が出来るから不思議に思っていたが……。
なんだ、まぎれもないプロの力を拝借していたという訳だったか。
「『継承』自体は強力なスキルという訳ではないのだけれど……。私の馬鹿な行いのせいで実の両親を失い、最後の要とも言うべきあの街の、多くの人を育ての親としたキミだからこそ、このスキルは脅威となりうるんだよ」
カルルが、まるで沙汰を待つ罪人の様な、そして同時に救いを待つ殉教者のような目をしながら、またふにゃっと困ったように眉尻を下げ俺を見た。
カルルの、そしてニコラの後悔の上で、俺は長い間随分のうのうと暮らしていたらしい。
『二人を、その後悔からいい加減解き放つ為にも負けられないなぁ』
そんな事を思えばいつになく好戦的な気分になって、しかしそれらを全て冗談めかして、恰好つけた風な流し目をトレーユに向ければ
「僕が勝ったら、ハクタカにはニコラの『催眠』を重ね掛けして王都の皆に向けてかけてもらう。そうすれば誰もが姉上の帰還を祝福してくれるだろう」
そう言って、トレーユが思いつめた様な目で俺を見返してきた。
うん、だから怖いって。
「言っただろう、私はキミのスキルには何も手は加えていないよ。変えたのはキミの認識だ」
「俺の認識???」
「そうさ。キミは自分のスキルを、無知故にユニークスキルだと思いこんでいたようだけれど、それは違う。キミのスキルの本来の名は『継承』 キミの親に当たる者のスキルを、キミのスキルの基礎とするものだ」
「ユニークじゃなくて『継承』……。それは……それはトレーユの『矛盾』より強いスキルなのか?!!」
思わず期待に声を上ずらせた俺に
「いいや」
「違うな」
「そんなわけねーだろう」
ニコラ、カルル、トレーユの三人が声を合わせて言いきった。
なんだよ!!
期待させておいて!!!
「スキルの出現頻度は五十年に一人程度。下町の鑑定士が知らなった程度に珍しいものではあるが、いない訳ではないし、それ自体が強力なスキルという訳ではない」
トレーユが冷たい声で淡々と、強さにずっと焦がれてきた俺に向かい、そんな残酷な事実を述べる。
その言葉に、俺が大きく落胆しかけたその時だった。
「大事なのは、他の誰でもない、キミがそれを持っているという事だよ」
カルルがまた謎かけのようなことを言った。
「キミの親は誰だ?」
俺の親……。
「父は聖騎士のマクシム、母は僧侶のコレットだが?」
声に出し、改めてだから何だというのだと首を捻った時だった。
「何そこで終わろうとしてんだ、この薄情者! 二人亡きあと、お前を息子だと思って世話焼いてくれた奴らはもっといるだろう!!」
そう言ったニコラにまた背を蹴られた瞬間、その衝撃で俺が育った下町で暮らす色んな人の顔がパッと思い浮かんだ。
ギルマスで『連撃』のスキルを持つ剣士のエンゾに、『氷結』と『劫火』のスキルを持つ双子の魔導士のフェールとジュアン、そしてニコラ。
父さんと母さんのパーティーメンバーだった彼らは……、まぁ言いたいことは山ほどあるが彼らなりに精一杯、父さんや母さんに代わり何くれと親代わりとなり俺の面倒を見てくれた。
ただ、魔物の脅威に世界が脅かされていた時分故、彼らは多忙で街を不在にすることも多く。
そんな時は、気のいい近所の大人達が何くれと俺の世話を焼いてくれた。
そんな大人の中には建築家のパトリス、家具職人のレミ、庭師のシメオンなんかもいた。
スキルによって、素人のはずの俺がプロ顔負けの仕事が出来るから不思議に思っていたが……。
なんだ、まぎれもないプロの力を拝借していたという訳だったか。
「『継承』自体は強力なスキルという訳ではないのだけれど……。私の馬鹿な行いのせいで実の両親を失い、最後の要とも言うべきあの街の、多くの人を育ての親としたキミだからこそ、このスキルは脅威となりうるんだよ」
カルルが、まるで沙汰を待つ罪人の様な、そして同時に救いを待つ殉教者のような目をしながら、またふにゃっと困ったように眉尻を下げ俺を見た。
カルルの、そしてニコラの後悔の上で、俺は長い間随分のうのうと暮らしていたらしい。
『二人を、その後悔からいい加減解き放つ為にも負けられないなぁ』
そんな事を思えばいつになく好戦的な気分になって、しかしそれらを全て冗談めかして、恰好つけた風な流し目をトレーユに向ければ
「僕が勝ったら、ハクタカにはニコラの『催眠』を重ね掛けして王都の皆に向けてかけてもらう。そうすれば誰もが姉上の帰還を祝福してくれるだろう」
そう言って、トレーユが思いつめた様な目で俺を見返してきた。
うん、だから怖いって。
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