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第三章 刺激的なスローライフ

28.イケメンは遠くから観賞するに限る

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「ローザ! 久しぶり!! 元気だった?!」

そう言って子犬のようにじゃれつくアリアを、まるで実の娘のように目を細めて実に優しく愛おし気に見た後で、

「ハクタカ、アリアも元気だったか? ハクタカが来てくれて本当に助かったよ。私はどうも家の事は苦手で……」

ローザがそんな事言いながら面目無いとばかりに頬を掻いた。

「なぁ、そんな事よりすっげー今更なんだがローザって何者なんだ?」

そんな俺の言葉に

「何者って??」

ローザが実に不思議そうに首をかしげる。

「家名を聞いてもいいか?」

「家名?? コーリッジだが? ……言ってなかったか?」

うん、全く聞いてない!
いいとこのお嬢様だったんだろうとは思っていたが……。

まさかの由緒正しき伯爵家のご令嬢かよ!!

実家が城なのにも納得だ。


「別に俺は暇だから構わないが……でもコーリッジ家は王都でも有数の資産家だろう? 俺なんかに頼まずちゃんとした職人や使用人を雇った方が良かったんじゃないのか?」

そんな俺の質問に、

「ハクタカに迷惑かけない為に、そうしたいのは山々だったんだが……ちょっと訳ありでね」

そう言ってローザが言葉を濁した。

「訳アリって?」

「実は……今、家出中なんだ」






◇◆◇◆◇

とりあえず立ち話もなんだからと、俺の鞄の中で丸くなって眠っていたシューを起こして調理場に火を入れて。
迷子にならないようオーちゃんを俺の胸ポケットにしまい、温かいお茶を入れて客間のソファーに腰掛けローザの話をゆっくりと聞いた。

話を要約すると、なんとローザは彼女の意に添わぬ結婚相手を宛がわれそうになり、それが嫌でコッソリ家を抜け出してきたのだという。

「ちなみにその相手って?」

アリアの質問に、

「……トレーユだ」

ローザが苦虫をかみつぶしたような顔でボソッと答えた。

「トレーユ??!」

第四王子と伯爵令嬢なら身分的にも釣り合いが取れるだろうし、トレーユは物凄いイケメンでありながら責任感も強く真面目ないいヤツだ。
俺のようなただの庶民にも対等に接してくれ、決して驕ったりもしない。

意に添わぬ結婚を強いられてるのかと同情しかけたが

「いい話じゃないか??」

まるで女の子達が夢見るハッピーエンドのおとぎ話のようじゃないかと首を傾げた俺に、

「仲間としては心から信頼しているし、王族としても素晴らしいと思う。だが……、だが結婚相手としては絶対に絶対にあり得ない!!」

思わず絶叫するように、本気で嫌でしょうがないとばかりにそう言い切ったローザに、アリアが分かる分かると首を縦に振った。

「トレーユいい人だけど、色々細かいトレーユルールがあるから一緒にいてイマイチ気が休まらないんだよね。話も絶望的に詰まんないし。レイラも『イケメンは遠くから観賞するに限るわね』って言ってた」

思わぬ女子の本音トークを聞いて。
何故か物凄いショックを俺が感じてしまい、固まった時だった。

外から、誰かが城の戸を叩く音が聞こえた。
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