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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~

10.痛み(sideテオドール)

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翌日、レリアが礼を告げに僕の元を訪れた時、僕はうっかりレリアを害してしまう前にこの街を出立する準備を整えているところだった。


そもそも僕がこの街に立ち寄ったのはたまたまで、ここに落ち着く様子も無い事は彼女も分かっていただろうに。
彼女はそんな僕を見て、この世の終わりのような顔をした。


「また会える?」

その言葉に、それは無理だろうと返す。

例え僕がレリアを害す恐れがなくとも、僕はまた迷宮に潜るから、この先はまたレリアと生きる時間が異なってしまう。
だから、いつかまたこの街に戻って来る事はあったとて、今離れてしまえば、もう二度と会える事は無い。


「……嫌、行かないで」

突然泣き出したレリアの言葉に

「じゃあ、二度と戻れないのを承知で僕と一緒にくる?」

そう、何の覚悟も無いまま思わず手を伸べれば。

彼女はその綺麗な目を見開いたまま、固まって……。
結局、僕の手を取ってくれることは無いまま僕に背を向けると、レリアは何も言わぬまま部屋を去って行った。


当然の反応だと、頭では分かっているのに。
これでさよならかと思えば、彼女に不意に触れてしまった時に感じる痛みの方が何百倍もマシに思える程、胸が痛んで痛んで仕方なかった。

無理やりに連れて行こうと思えば、レリアは非力故、それはあまりに簡単に出来るように思われた。
しかし番に狂い、誰よりも大切にしなければならないはずの番を苦しめたかつての主君の様に、無理やりレリアを攫って行くのは嫌だった。
僕は、出来損ないの僕にも優しくしてくれるような心優しき少女を死の間際まで追い詰め苦しめたかつての主君であり親友の事を、未だ許せてはいない。

じゃあ僕は……。
僕は、番かどうかも分からないレリアへのこの痛みを、いったいどう葬ればよいのだろう。


「…………」

例えば、この街を魔獣の仕業に見せかけ滅ぼして、レリア以外の人間を皆殺せば。
寄る辺を無くしたレリアはまた僕に縋ってこの手を自らとってくれるだろうか。
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