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番外編 永遠の迷宮探索者 ~新月の伝承と竜のつがい~
5.一緒(side レリア)
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翌日、礼を言うためテオの部屋を訪れれば。
帰ったばかりだと言うのに、彼はまたどこかに出かける準備を整えているところだった。
東の迷宮の主が変わった調査にでも出るのかと思い尋ねれば、そうではなく、彼はこの街を発つところなのだという。
「また会える?」
バクバクと嫌な音を立てて跳ねる心臓を押さえ、真っ青な顔をし焦って何とかそれだけ尋ねれば。
それは無理だろうとテオは私とは対照的に酷く落ち着いた様子で首を横に振った。
テオはまたダンジョンに潜るから、この先は生きる時間が異なってしまう。
だから、また彼がこの街に戻って来る事はあっても、もうその時私はこの世界にいないだろうと、テオは静かな声でそんな事を言った。
「そんな……」
苦しくて苦しくて。
その先の言葉を続けられなくなってしまったその時だった。
「じゃあ、二度とここに戻れないのを承知で僕と一緒にくる?」
テオがそう言って、また私に向かいその手を伸べてくれた。
******
最後に家族に私なりにお別れを伝えたくて、駆けて家に戻った。
きっとどれだけ時間をかけて説得しても、父も母も私を深く愛してくれているが故、分かってもらえることはないと分かっていたから。
どうして私が急に改まって変な事を言い出したのか分からないという顔をする家族に、感謝の気持ちと愛してるの言葉だけを伝えて、何の事情も離さぬまますぐさま家を出た。
テオの気が変わって、置いて行かれたらどうしようと焦ったあまり、置手紙一つ残せなかった。
だからもし、私の知り合いが全て亡くなった後の時間にこの街を訪れたその時には、この街には新月の夜に竜に食べられてしまった女の子の話がまことしやかに残っているかもしれない。
そんな事を思って笑いながら、寂しい気持ちや迷いは一人で胸の奥に全て飲み込んだ。
******
焦った余りノックも無しに再びテオの部屋のドアを開ければ、一緒に来るかと聞いたのはテオ自身の癖に……。
私にそんな覚悟はないと彼は高を括っていたから、簡単にあのように言う事が出来たのだろう。
彼は現れた私を見て、酷く驚いた顔をしていた。
『一緒にくる?』
私にとって、どんな宝石よりも素晴らしい贈り物のように思われたあの言葉も、彼にとってはただの戯言。
これからも一緒に旅がしたいと、そして何よりテオと離れがたいと思っているのは私だけで、きっと彼は
『冗談だよ』
そう言って笑って、私を置いて行ってしまうのだろう。
そう思えば、どうしようもなく悲しくなって。
「テオとずっと一緒にいたい」
思わずボロボロと涙を零しながら自らテオの頬に触れれば、テオはまた一瞬ピクリとその目元を強張らせた。
それが、優しい彼の精一杯の明確な拒絶に見えて。
悲しみから目の前が真っ暗になって、もうそれ以上力の入らなくなってしまった手を下ろそうとした時だった。
テオが痛いくらいに強く私の手を強く掴んだかと思うと、私をその腕の中に閉じ込めた。
帰ったばかりだと言うのに、彼はまたどこかに出かける準備を整えているところだった。
東の迷宮の主が変わった調査にでも出るのかと思い尋ねれば、そうではなく、彼はこの街を発つところなのだという。
「また会える?」
バクバクと嫌な音を立てて跳ねる心臓を押さえ、真っ青な顔をし焦って何とかそれだけ尋ねれば。
それは無理だろうとテオは私とは対照的に酷く落ち着いた様子で首を横に振った。
テオはまたダンジョンに潜るから、この先は生きる時間が異なってしまう。
だから、また彼がこの街に戻って来る事はあっても、もうその時私はこの世界にいないだろうと、テオは静かな声でそんな事を言った。
「そんな……」
苦しくて苦しくて。
その先の言葉を続けられなくなってしまったその時だった。
「じゃあ、二度とここに戻れないのを承知で僕と一緒にくる?」
テオがそう言って、また私に向かいその手を伸べてくれた。
******
最後に家族に私なりにお別れを伝えたくて、駆けて家に戻った。
きっとどれだけ時間をかけて説得しても、父も母も私を深く愛してくれているが故、分かってもらえることはないと分かっていたから。
どうして私が急に改まって変な事を言い出したのか分からないという顔をする家族に、感謝の気持ちと愛してるの言葉だけを伝えて、何の事情も離さぬまますぐさま家を出た。
テオの気が変わって、置いて行かれたらどうしようと焦ったあまり、置手紙一つ残せなかった。
だからもし、私の知り合いが全て亡くなった後の時間にこの街を訪れたその時には、この街には新月の夜に竜に食べられてしまった女の子の話がまことしやかに残っているかもしれない。
そんな事を思って笑いながら、寂しい気持ちや迷いは一人で胸の奥に全て飲み込んだ。
******
焦った余りノックも無しに再びテオの部屋のドアを開ければ、一緒に来るかと聞いたのはテオ自身の癖に……。
私にそんな覚悟はないと彼は高を括っていたから、簡単にあのように言う事が出来たのだろう。
彼は現れた私を見て、酷く驚いた顔をしていた。
『一緒にくる?』
私にとって、どんな宝石よりも素晴らしい贈り物のように思われたあの言葉も、彼にとってはただの戯言。
これからも一緒に旅がしたいと、そして何よりテオと離れがたいと思っているのは私だけで、きっと彼は
『冗談だよ』
そう言って笑って、私を置いて行ってしまうのだろう。
そう思えば、どうしようもなく悲しくなって。
「テオとずっと一緒にいたい」
思わずボロボロと涙を零しながら自らテオの頬に触れれば、テオはまた一瞬ピクリとその目元を強張らせた。
それが、優しい彼の精一杯の明確な拒絶に見えて。
悲しみから目の前が真っ暗になって、もうそれ以上力の入らなくなってしまった手を下ろそうとした時だった。
テオが痛いくらいに強く私の手を強く掴んだかと思うと、私をその腕の中に閉じ込めた。
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